[ONE169]注目試合の振り返りと感想。
メインイベント:ヘビー級タイトルマッチ
●(C)アナトリー・マリキンVS.○オマール・ケイン
※ケインの5Rスプリット判定勝ち。新王者誕生。
ONE169のメインイベントに据えられたヘビー級のタイトルマッチ。
結果はオマール・ケインのスプリット判定勝利で新チャンピオンが誕生ことになった。
これでキャリア初黒星となったアナトリー・マリキンは3階級の内の一つを落とすことに。
スプリットの判定なのでもちろん惨敗というわけではなかったが、ディフェンシブなケインのスタイルを崩すことが出来ず、打撃を合わせられるシーンが目立っていた。
1Rの組みの攻防でも遅れを取り、ロープを利用したことでイエローをもらったのも痛かった。
積極性と手数といった部分ではマリキンが上回っていたと思うが、ダメージの部分でもケインにややリードされていた印象。
ケインは確実に勝つために手堅い戦法を用いていたが、果敢に前に出続けたマリキンの攻撃に晒されながらも上手く躱し、崩されることなく有効打を重ねたのは大きかった。
ただその結果ヘビー級にしては豪快さに欠けるかなり静かで動きの少ないタイトルマッチとなってしまったのも事実である。
けれどケインはそのやり方で王座を手にしているので、そういう意味ではケインの作戦勝ちであったと言えるだろう。
ヘビー級のタイトルマッチをリングで行うのは適正か?
試合自体はその結果でおかしくはなかったと思うけれど、ヘビー級という最重量級のしかもタイトルの掛かった一戦をリングで行うのはどうなのだろうという思いがある。
ONEやRIZINのように立ち技の試合がMMAと合わせて組まれる団体では、MMAがリングで行われることもあるが、壁を使った展開も含めて考えられるMMAという競技で、隙間のできるロープで囲われたリングを使用するのはやはり不適当な気がする。
ましてやヘビー級となると尚更だ。
リングから飛び出して展開が中断されることで勝負の流れが変わってしまうなんて興醒めな状況が生まれやすい上に、咄嗟に手を伸ばして掴みやすい形状になっているので競技性が損なわれる場面が生まれやすい。
なので重要なMMAの試合を控えるイベントではケージで統一してしまっていいのではないかと思う。
MMAはケージでないと困る部分があるが、立ち技はリングでなくても問題なく競技を行うことができるので、見え方や動き方といった部分に多少の違いはあるとは思うが、ケージで試合を行う方が安定した競技性を確保できるのではないかと感じる。
スパーリングのように相手を軽くあしらうロッタン
○(1)ロッタン・ジットムアンノンVS.●(4)ジェイコブ・スミス
※ロッタンの5Rユナニマス判定勝利。
この一戦はまるで先生が生徒を指導するかのような戦いで、歴然とした差を感じる内容になっていた。
だからこそロッタンの体重超過が悔やまれる。
あの試合の後でベルトを掲げることが出来るのと出来ないのとでは意味合いが大きく異なってくる。
そしてスミスはもっとがむしゃらにアグレッシブに攻めるべきだった。
元々挑戦者という立場であり、リベンジ戦にもなるスミスの方が果敢に攻めて試合を作っていかなければならないはずが、ロッタンのスタンスに飲まれてしまい、終始彼のペースに付き合って主導権を譲り続けてしまった。
格の違いを見せつけながら余裕でスミスを下したロッタンは、これで武尊との戦いに向かっていくことになる。
ただ果たしてロッタンはフライ級の体重に合わせることが出来るのかという拭えない懸念がある。
フライに収まることが出来なくなっていたとしたら、僅かであってもまた体重がオーバーを犯してしまうかもしれない。
ロッタンVS.武尊はかなりの注目が向けられると思うので、お互いに怪我なく計量をパスし、万全かつクリーンな形で試合が行われることを期待したい。
柔術界の天才がオーバーハンドでダウンを奪う!
○ケイド・ルオトロVS.●アフメド・ムジタバ
※ルオトロの1R一本勝利。(ダースチョーク)
MMA2戦目のケイド・ルオトロはONEライト級のサブミッション・グラップリング世界王者で世界トップクラスの柔術スキルを持ったファイターである。
ただ、MMAは2戦目。
小さい頃からムエタイを習っていたとは言え、MMAの実戦経験はほとんどないと言ってもいい。
しかし、一つの競技で突出した才能を見せる選手はやはり「持っている」ものがある。
ケイドはMMA2戦目にしてグラップリングではなく打撃で展開を作り、ムジダバからダウンを奪う衝撃的な活躍を見せた。
そしてしっかりと追撃を加えた後にダースチョークをセットしタップを奪った。
これでケイド・ルオトロはMMA2連勝・連続フィニッシュとなる。
彼は今後もMMAとグラップリングの両方で華やかな活躍を見せていくことになるだろう。