勝者を脅かした敗者
プレリムカードの個人的ベストバウトであるマテウシュ・レベツキVS.ムフトベク・オロルバイの一戦。
19-2のレベツキと13-1のオロルバイはお互いに経験値が豊富で、とても勝率が高い力強さを持ったファイターだ。
前戦を落としたレベツキは今回の復帰戦で前回の厳しい敗戦を払拭し、再び勢いに乗っていきたいところだが、そこで当てられたのが若きキルギスのファイターであるムフベクト・オロルバイ。
スタミナ・タフネス・パワー・フィジカルと広い範囲で非常に優れているオロルバイは、総合力で対戦相手を押し切り勝ちをもぎ取る力強さを持っている。
対するマテウシュ・レベツキは強力な打撃とグラウンド技術で勝ちを量産し、前戦に敗れるまではUFC3連勝を記録していた。
リーチの長さとスタミナ面にやや不安があるものの、頑丈さとパワーで対戦相手を圧倒する脅威的なオフェンス力という優れた武器を持っている。
レベツキの一発、オロルバイのタフネス
二人の勝負は1R目から激しいぶつかり合いを見せたが、離れ際に強力な打撃をヒットさせたのはレベツキ。
これでオロルバイの右目が大きく腫れることになり、視野がかなり狭まることになってしまう。
お互いに強打を出し合うスタンド勝負を展開していた為、この負傷はオロルバイにとって非常にまずいダメージとなる。
続行不可能かと思われるぐらいに腫れ上がった右目だったが、ドクターチェックをパスして試合は続行。
2Rに入りレベツキはチャンスを逃すまいと苛烈な攻めに出ていくが、オロルバイは非常に冷静に対応し、1Rと同じ強度のスタンド攻防を展開する。
どう見てもダメージはオロルバイの方が深刻そうに見えたが、レベツキを攻め込ませず、要所で気の抜けない攻撃を挟んでいったオロルバイは攻撃をもらいながらもレベツキを休ませることなくプレッシャーを掛け続けていった。
その結果、レベツキのスタミナが大きく削られることになり、2R終盤にはテイクダウンを奪われるほどに攻め込まれる展開となってしまう。
レベツキが最終ラウンドでダウンを奪うが…..
オロルバイはダメージ、レベツキはスタミナと偶然のバッティングによるカットでお互いに満身創痍といった状態。
しかしお互い勝つためには引けない最終ラウンドとなるので、スタミナが切れ掛かっているレベツキも前に出てパンチを振るっていくが、疲労で狙いが定まらなくなってしまい攻撃がヒットしなくなってしまう。
加えて比較的スタミナに余裕があるオロルバイの右ストレートに反応することも出来なくなってしまったことでレベツキは被弾も増えてしまうことになる。
それでもレベツキはパンチを振っていった。
そしてその攻撃は見事にオロルバイの顎を捉えてダウンを奪うことに成功する。
レベツキはフィニッシュするための追撃を仕掛けていくが、スタミナがなくなっているため十分な攻撃を行なうことが出来ず、オロルバイに生き残ることを許してしまう。
なんとか踏み止まったオロルバイはそこからトップポジションを奪い合う展開を見せ、血塗れになりながらもレベツキを追い立て続けていく。
トップの奪い合いは最終的にダウンを喫したオロルバイが制することになり、上から攻撃をいくつか仕掛けていったが、レベツキはそこから立ち上がってスタンドに戻した。
残り数秒の状態でもオロルバイはレベツキをケージ際に追い込んで攻撃を仕掛けようと狙いを定めていったが、ダウンのイメージを取り返せるほどの攻撃をヒットさせることは出来なかった。
そして結果は判定に。
オロルバイはケージに登って勝ったという自信を覗かせるような仕草を見せた。
一方のレベツキは体力が底をつき、疲弊し切っている様子だった。
レフェリー両者の腕を掴み、判定結果が読み上げられる。
判定はユナニマスではなくスプリット。
最初に名前をコールされたのはオロルバイ。
その次にレベツキの名前がコールされた。
そしてこの厳しい戦いを制した者として最後に読み上げられたのは、
「マテウシュ・レベツキ」の方だった。
結果、マテウシュ・レベツキが2-1の判定でムフトベク・オロルバイを下して復帰戦を勝利で飾ることに成功した。
試合に勝利したのはレベツキだったが、場合によってはKO/TKO負け、もしくは3-0の大差で判定負けとなっておかしくなかった戦いをオロルバイはギリギリのスプリットに持ち込んでいる。
それにもう少し時間が残っていたら結果が変わっていた可能性もある。
それを考えると敗者となったオロルバイの方が危険性を感じさせる内容を見せていたと言えるのではないだろうか。
限界を迎えても互いに一歩も引かなかったこの二人の激闘はUFC308の中でも一番と言えるタフファイトだったのではないかと思う。
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