コロッケそば
14時過ぎ
髪を切りに行った帰り道
遅めの昼ご飯を食べようと駅前をうろついた
そばかラーメンにしようと思って、事前にざっくりと調べておいたが、何しろ時間が悪かった
目をつけていたお店は全て昼営業が終わる時間
昼休憩がない店も、店休日でどこも全滅
残る選択肢はマクドナルド、日高屋、サイゼリヤ、そして駅前の立ち食いそば屋
どれも久しく食べていないので悩んだが、立ち食いそば屋にすることにした
麺類全般は好きだが、そばが一番好きだなと思う
別に詳しいわけではない
二八そばと十割そばの区別は食べ比べれば分かるかも?と言うレベルであるし、気にしたこともない
蕎麦という漢字は読めるが書けはしない
そんなところである
私はたぶんそばと言う食べ物が醸し出す雰囲気だったり、そば屋の雰囲気が好きなのだと思う
これと言って何か思い出があるわけでもないけれど、なぜか幼少期からそばに対しては、かなり良いイメージを持っている
落語を聴くようになって、それはさらに加速する
時そば、そば清、、、江戸時代を舞台にした噺が多い落語にあって、そばの出番は少なくない
噺の中での、そばを啜る音は、話し手にもよるけれど、悪魔的と言って良いほどの甘美な響きがある
立ち食いそば屋の最大の弱点は、腹がそこまで満たされないことだが、今回はそこまで腹も減っていなかったので、ちょうど良いと言えばちょうど良かった
そば屋の前に立つ
ここで食べるのは何年ぶり、いや十数数年ぶりだろうか
今でこそキレイな店構えだが、知る限りでは30年前からこの店はある
学校帰りに立ち寄ったことを思い出した
当時、一緒に行った同級生はコロッケそばを注文していた
当時の私には、そばにコロッケを入れることが理解できなかった
「コロッケそば最高〜!」
とか言いながら嬉々として食べる同級生を冷ややかな思いで見るともなしに見た記憶がある
しかし、立ち食いそば上級者はコロッケそばを注文するらしいことを最近知った
それを知った時は驚いたが、そうと知ったら食べないわけには行かないとも思った
券売機でコロッケそばのボタンを押し、Suicaを当てる
便利ではあるがいささか不粋だと思いながら食券を置く
置いて、4歩程度歩いたところで、声がかかった
慌てて4歩戻り、立ち食いそば屋なのにカウンターに座って食べた
立ち食いそば屋なのに座って食うのも不粋だと思ったが、今はホントに立ち食えるそば屋も減っている気がする
刻んだ葱とコロッケだけが乗ったそば
食べた
美味かった
実際はそこまで美味くはなかった
けれど不味くもなかった
普通である
でも美味かった
立ち食いそば屋の独特の味
屋台の焼きそばやたこ焼きが美味く感じるのと同じ原理なんだろうなと思った
色々な思いと想いが、頭を巡ってゆく
もう少し涼しくなったら、本場、大江戸のそばを食いまくりに行こう
神田や秋葉原の辺りには名店がたくさんあったはずだ
何だかやけに嬉しくなった
普通のそば屋だったら、この感覚はなかったかもしれない
あの時、一緒に食った同級生は
確かに上級者だったんだ
汁を一滴残らず飲み干して、店を後にした
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