#小説読みます その4
こんにちは。架空書店「鹿書房」店主・伍月鹿です。
先日久しぶりにお出かけに行ったら、鞄の中からすっかり忘れていた飴が出てきました。ちょっと得した気分です。
ツイッターハッシュタグ「#小説読みます」にて募集したインターネット上で読める創作作品の感想を書かせていただきます。
(順不同、短編~中編で募集したため、長編は途中までの感想となります。募集は現在締め切らせていただいております)
蒼瀬矢森様「びんぼー神にゃもったいない!」
「カクヨム」にて公開されているラブコメ作品です。
以下、作者の蒼瀬様によるあらすじを引用。
わたしはあらすじを書くのが苦手なので、まとまっていてわかりやすいあらすじに感動しました。勉強になります。
押しかけ巫女に無邪気な幼馴染、口喧嘩の相手の委員長……とリズミカルに登場するヒロインたちに加えて、主人公はシスコン属性。
ここまで判明したあたりでこの話、完璧だな、と思わず拳を握りました。
王道の良さを踏襲しつつ、主人公が「貧乏神」という珍しい設定でオリジナリティを出しているところが素直に感心できるストーリーです。
個人的には電波を通す結界がツボ。
日本の八百万の神は自在に時代に合わせられるのがいいですね。
無自覚モテモテ主人公に彼女候補が次々と現れるハーレムものですが、苦労人主人公も貧乏神なのだと思うと説得力があります。
キャラクターの呼び名も可愛らしく、ぽんぽんと読めてしまう軽快さが楽しかったです。
作品は完結済みで、各キャラクターとのデート編なるものが存在するようなので、是非続きも楽しませていただきます。
蒼瀬様、リプライとフォローありがとうございます。
ハッピー様「異世界転生したら道でした。『道』は道テイムでシルクロードを目指して無双する」
https://ncode.syosetu.com/n1804hw/
「小説家になろう」にて公開されている異世界転生ものです。
正直なところ募集の際にも書きましたが、わたしは異世界転生ものへの理解が皆無に等しいのです……。
ライトノベルから離れている間にいつの間にか出来ていた文化で、おそらくこのジャンルを王道にしたのであろう「転スラ」すらミリしら。
しかし「レイアース」や「不思議の国のアリス」などが愛読書のわたしにとっては「異世界に転生する」こと自体はあまり抵抗はないので、今回は挑戦の気持ちで一章を読ませていただきました。
主人公は「キョロ充になろうとしているアッパー系コミュ症な大学生」
(意味は調べながら読みました)
(調べてもわからなかったんですが、キョロ充ってなろうとしてなるものなんでしょうか)
新歓飲み会にて先輩に一気飲みをせがまれ(犯罪ですね)、なんとか逃げ出したもののトラックに跳ねられてしまいます。
目が覚めるとタイトル通り「道」になっていた主人公は様々な人に踏まれることでレベルアップを重ねていきます。
異世界のために奮闘する主人公の姿を見ていると「道って大変なんだなあ」とわけのわからない感情になりました。
ストーリーは会話や口語体の文章でサクサクと進んでいくので、RPGを読み進めている気分で読んでいけます。
「道」がエネルギーを蓄える方法が「道」である理由とマッチしていますが、何故「それ」なのかについては、わかるだろ? と言わんばかりにほとんど詳しくは書かれていないので、それぞれで妄想するしかないのが多少の物足りなさもあります。
そこは作者様の変態性というか、フェチを詰め込めるポイントなのでは……と真剣に考えている店主は変態です。
ハッピー様、タグへの反応とリプライありがとうございました!
村本凪様「人魔大戦 近所の悪魔殺し」
https://ncode.syosetu.com/n9528gu/
こちらも「小説家になろう」にて連載中の作品「人魔大戦 近所の悪魔殺し(デビルスレイヤー)」の一章を読ませていただきました。
ひょんなことから「日魔連」の活動をする同級生を目撃し、自身も彼女を守る為に無我夢中で力を得る契約を結んだ主人公。
ソロモン神話を元にした人対悪魔の抗争である「人魔大戦」巻き込まれ、悪魔討伐を任された彼は、魔法の力を駆使してピンチを乗り越えていきます。
王道学生ファンタジーもの、といった印象ですが、ベースになっているモチーフが古事記や神話、落語などとしっかりとあるので、世界観は違和感なく楽しむことができます。
しかし、和洋折衷、様々な要素が混沌としている自由さが新鮮です。悪魔の解釈など、モチーフに囚われすぎていない発想もすてきです。
戦闘の舞台が近所の商店街や公演ホールなどの身近なものなのもいいですね。
仲間と共に成長をしていく主人公は、ジャンプ漫画のようなひたむきさもあって自然と応援したくなる魅力がありました。
優秀なわけありヒロインと、あとから力を得た一生懸命さが取り柄の主人公、という組み合わせには天野明先生の「エルドライブ」を連想してしまいますね。
天野先生と言えば現在連載中の「鴨乃橋ロンの禁断推理」がアニメ化決定とのことで、「家庭教師ヒットマンREBORN」から応援している身としてはわくわくが止まりません。
モチーフの豊富さにわたしが感じたなつかしさはこの辺りから来ているのかもしれません。
自分のことより他人の心配ばかりしている主人公とヒロインのコンビは可愛いですね。
お互いに不器用で言葉少なですが、きっと修羅場を潜り抜ける度に絆を深めていくのだろうなあと思います。
村本凪様、タグへの反応とリプライ、ありがとうございました!
蒼依月様「私の朝はあの子から。」
こちらはpixivにて公開中の短編です。
「pixivノベル大賞 2022Autumn」に参加されている作品とのことで、ローダンセマムをモチーフにしたイラストから派生した物語のようです。
花屋の窓際に飾られたローゼンセマムに住む妖精。
彼女は、毎日花屋の前を通る女性を見送るのが習慣になっています。
花をカメラに収めほほ笑む女性のために自分の力を使う妖精のひたむきさが余韻のある文章で綴られています。
作中では女性の詳しい状況などは語られず、妖精と女性を見守るミツバチの視点で物語が終わるため、物語の軸のようなものは見えない部分も多くあります。
妖精がなぜ女性に気にかけていたのか、女性は何故……などと疑問も残ります。一貫して優しい雰囲気の物語と元になったイラストがマッチしているため、あれこれ妄想するのも楽しいのかなと思いました。
ところで、現在は様々な小説投稿サイトがありますが、結局のところどこがいいのか問題がありますね。
わたしは二次創作も投稿するためずっとpixivを使用しています。
pixivのいいところはノベル大賞などの様々なコンテストが開催されており、ハッシュタグ一つで簡単に参加できることです。
最近はシリーズものをまとめるのも便利になりましたので、pixivでも創作小説がもっと盛り上がればいいのになあと密かに思っています。
蒼依月様はこちらの作品が唯一の投稿作のようですので、今後の投稿も楽しみにさせていただきたいと思いました。
RTとリプライ、ありがとうございました!
D.G.SKY様「眠る君は龍の花」
「カクヨム」にて投稿されている短編です。
作者様ツイッター曰く初めて書かれた小説とのことですが、カクヨム上のレビューや応援も多い注目作品のようです。
数十年をかけて咲く花をモチーフにしたという短編は、女性の一生を美しく静かな文章で綴ったものとなっていました。
5年ぶりに目を覚ました彼女は、混濁する記憶の中が少しずつ覚醒し、傍にいるぬくもりを思い出します。
道端に咲く花がきっかけで出会う男女のストーリーが甘酸っぱくて可愛らしいと感じました。
道端の花に気がつく自分というものは、誰もが心に浮かぶロマンなのかもしれません。ただ一人でやっていても寂しいので、そんな気持ちを寄り添ってくれる架空の存在を作り上げることが物語作りの始まりだったとわたしも感じるので、初心を思い出すような気持ちで読みました。
「鯨のような深い夢を見た。」
「悠久の龍となって遂にその瞳を閉じた。」
などの表情が素敵。
女性の短い終焉の物語と見ることも出来ますが、モチーフの通り花の話だったと思うとまた違った印象を抱けるようにも感じます。
散りざまが印象的な花はその姿を「儚さ」に例えられることもありますが、わたしは「強さ」の印象を持つことがあります。
職場の近くに咲くラナンキュラスは一年のほとんどを姿を見せない緑の状態で過ごしていますが、暑くなった時期にぱっと開き、散る間際に強い香りを放ちます。桜も毎年花を開き、次の年も同じように美しい風景を見せてくれます。
そういう意味で途絶えることなく続く命や若い「何者かになりたい」思いも、儚くもあり絶えることのないものであり、それだけ強いものであるのだなあ……とあれこれ考えてしまいました。
D.G.SKY様、ハッシュタグへの反応ありがとうございました。