「角の街」お酒カタログ
こんにちは。架空書店「鹿書房」店主・伍月鹿です。
前記事で紹介した「鹿の街」シリーズにて登場するお酒をまとめました。
https://note.com/gentle_shika11/n/n4d3bbae84bc3
皆さまは、お酒お好きでしょうか。お強いでしょうか。
私はおそらく酒に強いゆえに、自分の限界がよくわかりません。
世間一般的にいう「二日酔い」の経験もほとんどなく、過去に二度ほど馬鹿のようなちゃんぽんをしてぐらぐらに酔っぱらった以外に、これといった酒の失敗もありません。オレンジが飲めないのにミックスフルーツサワーを頼んだ失敗を含めるとしたら三回です笑
そんな私が一番お酒を飲んでいたであろう頃に書いた「角の街」シリーズには、様々なお酒が登場します。
作品の解説も含めて文章にさせていただきましたので、是非前記事と一緒にお楽しみください。
蜂蜜酒「叶秋(Yè qiū)」
ガゼルが、お酒が飲めないディアの為に作ったお酒です。
ベースはウィスキー、香りに蜂蜜を加えたリキュールになります。
ディアが飲んでいるのは殆ど水に近いのかもしれません。フレーバーの詳しい仕組みを知ったのはこれらの話を書いたあとになってからですが、酒の香りで酒を飲んだ気分になるのはノンアルコール飲料が普及した現在なら違和のない描写ですね。
ガゼルがその後蜂蜜酒を商品化したものです。
ガゼルはとある理由で国の権力者からは存在しないものとして扱われていますが、彼が知らないうちに純粋に造酒家の実力が認められていたと判明するシーンです。
古い習慣に囚われているのは上層部だけで、若い人々は新しい時代に順応し始めていることを描いたシーンでもあります。
日本では鹿肉のことを紅葉と呼ぶことから、月夜に浮かび上がる鹿の角をイメージした名前です。
中国語の漢字の意味に当てはめると葉が覆い繁る秋となり、やはり紅葉を連想することができます。偶然ですが、日本語と中国語の関係を考えると必然なのかもしれません。
麦酒
ビールです。
この大陸は新大陸を指しています。いま思うとだいぶ説明不足ですね。
ビールへの感想は、当時洋酒ばかり飲んでいた私自身の感想がかなり含まれております。若い頃はほとんどわからなかったビールの味が、いつの間にか美味しいものに感じるようになっていることにはっとさせてくれました。
新大陸のビールといえば、マイケル・J・フォックスの伝記が印象的。アルコールに頼った生活をしていた彼が最後に飲んだお酒のシーンが子供心に印象的で、いまだに「あまり美味しいとは言えないもの」というイメージが強くあります。いまの私は好きですよ……。
黄酒「八仙花(Bāxiān huā)」
黄酒、つまり紹興酒のことです。
(シャンパン同じで「紹興酒」も特定の地域で作られたお酒のことをいうようです)
いなくなってしまったディアを探すために訪れた「国営院」にて、貢物をするシーンです。
一般的な黄酒は黄色ですが、上記製造で透き通った金色のお酒をイメージしています。
カクテルを作るのにも邪魔にならない、つまり「七変化」することから紫陽花の名前をつけました。
物語の後半にかけて、きちんと調べて書きはじめていることがわかります。それっぽさで勝負していた当時の私の甘さもよくわかります。
(初稿で恐らく2015年頃、加筆修正をしていた時点で2019年です。反省会になるのは察してください)
ワイン
ディアの婚約者が、ガゼルへの協力を約束するシーンです。
ガゼルをライバル視しているキャラクター・キダは、学生時代から洋酒を嗜んでいたガゼルの影響で、この国にとって珍しいワインを好んでいました。
ガゼルのワインは、葡萄農家の息子である助手のメリノが開発を手伝ってくれました。ウィスキーや黄酒は熟成する時間が必要なため、利益を得るためにワイン生業を行っています。
このあたりの知識は、故郷小樽の隣町・余市町のウィスキー工場をモデルにしていることがよくわかります。幼い頃から何度も足を踏み入れている場所の一つです。
日本酒
本編ラストシーンのため、ストーリーの解説は割愛します。
日本酒にとって純粋なのは美味しい水から、と散々聞かされて育ちました。故郷小樽には雪解け水を使った美味しい日本酒がたくさんあり、工場ではその水を飲むことができます。
酒好きの両親が幼い子供をあちこちの酒造所に連れて行っていたことがバレますね。お酒の工場っていい匂いがするから好きです。
ここからは番外編に登場する、実在するカクテルです。
番外編「相看て厭わざるは只有るふたつ」はマフィアパロです。
作中でガゼルは珍しい外国のお酒を使ってカクテルバーを開いています。本編とは異なる世界観のため(中華風ですが、どちらかというと西洋のアジア街的な世界をイメージしています)、本編では極力使わないようにしていたカタカナを解禁しています。
モスコミュール
「喧嘩をしたらその日のうちに仲直り」というカクテル言葉があるお酒です。単にこれは当時私が好きだったお酒な気がします。
エル・ディアブロ(悪魔)・カンパリソーダ
エル・ディアブロのカクテル言葉は「気をつけて」
カンパリソーダは「自由」です。
どちらも真っ赤なカクテルですが、プリグリに出したエル・ディアブロの方が辛口のお酒です。
罠にはめて泳がせている存在を相手にしているプリグリに対し警告を発するガゼルの粋な計らいです。
ピーチレディ
カクテル言葉は「純愛」ですね。お兄様(ディア)大好きな彼にぴったりなお酒です。
全然関係ありませんが、北海道ではピーチリキュールを烏龍茶で割ったカクテルを「クーニャン」と呼びます。確か最初はそっちで書いていて、全国的なものではないと知って変えたような記憶があります。
陽炎
珍しい柿のリキュールをベースにしたカクテルです。
これはまだ飲んだことがないお酒です。カクテルのレシピって眺めているだけで楽しくて好き。
「角の街」には執筆当時のお酒への憧れが強く反映されております。
大抵の味を知ってしまったいまとなっては、書けない描写が多いのかもしれません。プロットや設定作りも甘く、下調べも足りていない面でももう書けないと感じる分、当時の気持ちをいつまでも思い出せる作品です。
伍月鹿の原点として、何かの折りに触れて頂ければ嬉しいです。