気象予報士試験 気象業務法以外のもの その2 災害対策基本法 Vol.16
本日は災害対策基本法です。気象予報士試験にも度々出題されます。それでは、本日も頑張っていきましょう。
災害対策基本法とは??
災害への備えの体制作りとして、「中央防災会議」「地方防災会議」を設置して、平素からの災害の備えを行い、災害発生時には、災害対策基本法に基づいて「特定災害対策本部」「非常災害対策本部」「緊急災害対策本部」を設置して対応することが定められています。また、防災計画や警報の伝達、被災地への物資の供給、災害復旧など幅広く定められています。
元々は、昭和34年の伊勢湾台風をはじめ国土に甚大な被害を受けたことを契機として法制化が進められたもので、気象災害とは密接な関係があります。
気象予報士試験でよく問われる条文を紹介します。条文が難読かつ冗長度が大きいので一部については、所々省略していますので、条文をご参照ください。
災害対策基本法の目的(第1条)
国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護するため、防災に関し、
基本理念を定め、
国、地方公共団体及びその他の公共機関を通じて必要な体制を確立し、
責任の所在を明確にするとともに、
防災計画の作成、災害予防、災害応急対策、災害復旧及び防災に関する財政金融措置その他必要な災害対策の基本を定めることにより、
総合的かつ計画的な防災行政の整備及び推進を図り、
もつて社会の秩序の維持と公共の福祉の確保に資することを目的としています。
災害とは??第2条に災害対策基本法で定める災害は次のとおりです。
暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、噴火、地滑りその他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害をいう。
災害対策本部の設置・・・・その規模感は?
🟢特定災害対策本部 その規模が非常災害に該当するに至らないと認める場合に内閣府に設置。
特定災害対策本部長は防災担当大臣その他の国務大臣
🟠非常災害対策本部 非常災害が発生又は発生するおそれがある場合に内閣府に設置。
非常災害対策本部長は内閣総理大臣。事故ある時は予め指名する国務大臣が代行。2021年の法改正までは非常災害対策本部長は国務大臣であったが、法改正以降内閣総理大臣となった。過去問を解く際には注意。
🔴緊急災害対策本部 著しく異常かつ激甚な非常災害が発生又は発生するおそれがある場合に内閣府に設置。 緊急災害対策本部長は内閣総理大臣。
国民に対する周知(法51条の2)
内閣総理大臣は、非常災害又は特定災害が発生し又は発生するおそれがある場合において、避難のため緊急の必要があると認めるときは、法令または防災計画の定めるところにより、予想される災害の事態及びこれに対して取るべき措置について、国民に対し周知させる措置をとらなければならない。
🔴警報の伝達等 法第54条 発見者の通報義務 この条文はよく試験に出ます!!
災害が発生するおそれがある異常な現象を発見した者は、遅滞なく、その旨を市町村長又は警察官若しくは海上保安官に通報しなければならない。
何人も、前項の通報が最も迅速に到達するように協力しなければならない。
第1項の通報を受けた警察官又は海上保安官は、その旨を速やかに市町村長に通報しなければならない。
第1項又は前項の通報を受けた市町村長は、地域防災計画の定めるところにより、その旨を気象庁その他の関係機関に通報しなければならない。
異常な現象を発見した者⇨🔴市町村長 ⇨🔴気象庁その他の関係機関
⇨🔴警察官 ⇨🔴市町村長⇨🔴気象庁その他の関係機関
⇨🔴海上保安官⇨🔴市町村長⇨🔴気象庁その他の関係機関
🔴都道府県知事の通報等
都道府県知事は気象庁その他の国の機関から災害に関する予報若しくは警報の通知を受けたとき、又は自ら災害に関する警報をしたときは、・・・・予想される災害の事態及び取るべき措置について関係指定地方行政機関の長、指定地方公共機関、市町村長その他の関係者に対して必要な通知と要請をするものとする。
🔴市町村長の警報の伝達及び警告
市町村長は、災害に関する予報若しくは警報の通知を受けたとき、又は自ら災害に関する警報をしたときは、・・・・当該予報若しくは警報又は通知に係る事項を関係機関及び住民その他関係ある公私の団体に伝達しなければならない。
市町村長は、・・・避難のための立退の準備その他の措置について、必要な通知又は警告をすることができる。
🔴市町村長の出動命令等 法58条
市町村長は、災害が発生するおそれがあるときは、法令又は市町村地域防災計画の定めるところにより、消防機関若しくは水防団に出動の準備をさせ、若しくは出動を命じ、又は消防吏員(当該市町村の職員であるものを除く)、警察官若しくは海上保安官の出動を求める等災害応急対策責任者に対し、応急措置の実施に必要な準備をすることを要請し、若しくは求めなければならない。
🔴市町村長は、災害を拡大させるおそれがあると認められる設備又は物件の占有者、所有者又は管理者に対し、災害の拡大を防止するため必要な限度において、道外設備又は物件の除去、保安その他必要な措置をとることを指示することができる。
警察署長又は海上保安部長等は市町村長から要求があったときは前項に規定する指示を行うことができる。この場合で指示を行った場合は直ちに市町村長に通知すること。(法59条)
🔴市町村長の避難の指示等 法60条
・災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、人の生命又は身体を災害から保護し、その他災害の拡大を防止するため特に必要があると認めるときは、市町村長は、必要と認める地域の必要と認める居住者等に対し、避難のための立退きを指示することができる。
・前項の規定により避難のための立退きを指示する場合において、必要があると認めるときは、市町村長は、その立退き先として指定緊急避難場所その他の避難場所を指示することができる。
・避難のための立退きを行うことによりかえって生命身体に危害が及ぶおそれがあり緊急を要するときは、高所への移動、近傍の堅固な建物への避難、屋内の屋外に面する開口部から離れた場所への退避(緊急安全確保措置)を指示することができる。
・避難指示の必要がなくなった場合は直ちに公示すること。
・立退きの指示、緊急安全確保措置の指示を行った場合は、都道府県知事に速やかに報告。
・前項までの措置が市町村で行えないときは都道府県知事が代行可。
🔴警察官等の避難の指示 頻出出題項目です。
市町村長が避難のための立退き若しくは緊急安全確保措置を指示することができないと認めるとき又は市町村長から要求があったときは、警察官又は海上保安官(警察官等)は、必要と認める地域の必要と認める居住者等に対し、避難のための立退き又は緊急安全確保措置を指示することができる。
警察官等は、立退きを指示する場合、指定緊急避難場所その他の避難場所を指示することができる。
警察官等は緊急安全確保措置を指示したときは直ちに市町村長に通知しなければならない。
令和3年度第2回(第57回)学科一般知識 問15
(1)中央防災会議は、災害及び災害の防止に関する科学的研究の成果並びに発生した災害の状況やこれに対して行われた災害応急対策の効果を勘案して、毎年、防災基本計画に検討を加え、必要があるときには修正しなければならない。⭕️
👉 災害対策基本法第34条のとおり。
第34条 中央防災会議は、防災基本計画を作成するとともに、災害及び災害の防止に関する科学的研究の成果並びに発生した災害の状況及びこれに対して行なわれた災害応急対策の効果を勘案して、毎年、防災基本計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならない。
2 中央防災会議は、前項の規定により防災基本計画を作成し、又は修正したときは、すみやかにこれを内閣総理大臣に報告し、並びに指定行政機関の長、都道府県知事及び指定公共機関に通知するとともに、その要旨を公表しなければならない。
(2)都道府県の地域について災害が発生した場合において、防災の推進を図るため必要があると認めるときは、都道府県知事は、自らを長とする災害対策本部を設置することができる。⭕️
👉そのとおりです。
(3)市町村長は、基礎的な地方公共団体として、当該市町村の地域に係る防災に関する計画を作成し、法令に基づきこれを実施するよう努めなければならない。❌
👉「努めなければならない」ではなくて、「責務を有する」(義務)です。
(4)国及び地方公共団体は、ボランティアによる防災活動が災害時において果たす役割の重要性に鑑み、ボランティアの自主性を尊重しつつ、ボランティアとの連携に努めなければならない。⭕️
👉そのとおり。
令和2年度第2回(第55回) 学科一般知識 問15
我が国の___①___に鑑み、人口、産業その他の社会経済情勢の変化を踏まえ、災害の発生を常に__②____とともに、災害は発生した場合における被害の最小化及びその迅速な回復を図ること。
国、地方公共団体及びその他の公共機関の適切な役割分担及び相互の連携協力を確保するとともに、これと併せて、住民一人一人が自ら行う防災活動及び____③____その他の地域における多様な主体が自発的に行う防災活動を促進すること。
災害に備えるための措置を適切に組み合わせて、一体的に講ずること並びに科学的知見及び___④_____を踏まえて絶えず改善を図ること。
①自然的特性 ② 想定する ③自主防災組織 ④過去の災害の教訓
👉災害対策基本法第2条の2からの出題でした。
令和2年度第1回(第54回) 学科一般知識 問15
災害対策基本法において、市町村は、___①___地方公共団体として、当該市町村の住民の生命、身体及び財産を災害から保護するため、___②___を作成し、実施する責務を有しており、市町村長は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合には、避難のための___③___勧告し、及び急を要すると認めるときは、避難のための___③___ __④___することができる。
①基礎的な ②地域防災計画 ③立退きを居住者等に ④指示
👉過去問では「勧告し」と書かれていますが、法律改正により上記問題文太字の「勧告」は現在は「指示」が正しい記述となります。
令和元年度第2回(第53回) 学科一般知識 問15
災害が発生するおそれがある異常な現象を発見した者は、___①___、その旨を市町村長又は___②___若しくは海上保安官に通報しなければならない。
通報を受けた___②____又は海上保安官は、その旨を速やかに市町村長に通報しなければならない。通報を受けた市町村長は、___③___の定めるところにより、その旨を___④___その他の関係機関に通報しなければならない。
①遅滞なく ②警察官 ③地域防災計画 ④気象庁
平成30年度第2回(第51回) 学科一般知識 問12
(1)災害対策基本法における定義によると、防災とは、災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ、及び災害の復旧を図ることをいう。⭕️
👉規定のとおりです。
(2)防災に関する組織として、中央防災会議、都道府県防災会議、市町村防災会議の設置が災害対策基本法に定められている。⭕️
👉規定のとおりです。
(3)防災基本計画及び防災業務計画並びに地域防災計画は、中央防災会議が作成する防災に関する計画である。❌
👉防災基本計画➡️中央防災会議が作成(法34条)
防災業務計画➡️国の行政機関が作成(法36条)
地域防災計画➡️都道府県防災会議及び市町村防災会議が作成(法2条第10項)
(4)市町村の地域について災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合において、防災の推進を図るため必要があると認めるときは、市町村長は、市町村地域防災計画の定めるところにより、市町村災害対策本部を設置することができる。⭕️
👉規定のとおりです。
平成29年度第1回(第48回)学科一般知識 問15
(1)都道府県の地域について災害が発生した場合において、防災の推進を図るため必要があると認めるときは、都道府県知事は、都道府県地域防災計画の定めるところにより、災害対策本部を設置することができる。⭕️
(2)非常災害が発生した場合において、当該災害の規模その他の状況により当該災害に係る災害応急対策を推進するため特別の必要があると認めるときは、内閣総理大臣は、臨時に内閣府に非常災害対策本部を設置することができる。⭕️
(3)災害が発生するおそれがある異常な現象を発見した者は、遅滞なく、その旨を市町村長又は警察官若しくは気象台長に通報しなければならない。❌
👉「気象台長」ではなく「海上保安官」です。
平成28年度第1回(第46回) 学科一般知識 問15
太字部分の正誤
(1) 消防法の規定 (略)
(2) 水防法の規定 (略)
(3)市町村が災害のためその全部又は大部分の事務を行うことができなくなり、市町村長が避難のための立退きの勧告あるいは指示をできなくなったときは、当該市町村長に代わって都道府県知事がそれを実施しなければならない。⭕️
最後までお読みいただきありがとうございました。
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