趣向を凝らした展示、今回はいかに?
毎回楽しみな展示方法
現在、国立科学博物館で開催中の「特別展 鳥」(2024.11.2~2025.2.24)に行ってきた。国立科学博物館の展示はこれまで数回行ったことがあるが、毎回、趣向を凝らした展示方法が個人的に楽しみのひとつである。
前回、たしか「和食」展では、巨大なこんぶが床から壁面を這わせ、天井いっぱいに展示されていた。普段目にするのは出汁用のこんぶからは想像がつかないほどの巨大さに圧倒された。
さて、今回はどのような工夫がなされているのだろうか。
国立科学博物館ならでは。多様な年齢層
国立科学博物館らしいなと感じるのは、来場者の年齢層が多様なことだ。今回も平日の昼間に行ったのだが、若いカップルから小さな子供を連れた家族、様々な年齢層のご夫婦と思しき方々など、広い層が来場していた。
入り口付近からして、たくさんの人でごった返している。何があるのかと思いきや、最初にお出迎えしてくれたのが、孔雀とシマエナガのはく製だ。孔雀の大きさに比べてシマエナガのなんと小さいこと。シマエナガは今、キャラクター化され100円ショップなどでも雑貨やノートなどにプリントされたもいのを販売しているので、目にした方も多いだろう。
かわいいと人気のシマエナガをカメラに収めようと、多くの人が立ち止まって撮影していたのだ(一部を除きほぼすべて撮影可能)。
今回の面白展示は…?
鳥類の起源や、空を飛ぶために進化してきた骨格や呼吸器についてなど、興味深い説明が続く。そろりそろりと展示パネルに沿いながら歩いていき、右へ折れようとしたときに視界の隅に何やら巨大なものが見えてくる。これぞ楽しみの一つ、工夫を凝らされた国立科学博物館ならではの展示だ。
今回はなんだろうと期待に胸を膨らませて振り向いた先にあったのは、天井から吊るされた、巨大なアホウドリ…?であった。いや、しかしアホウドリにしては大きすぎる。だが、どう見てもアホウドリにしか見えない。これは国立科学博物館の人が面白半分?に展示したのか、はたまた、アホウドリの体がよく見えるように巨大化したのだろうか?
実物大の復元は世界初!
実はこの正体、史上最大の空を飛ぶ鳥類「ペラゴルニス・サンデルシ」という鳥だ。聞いたことも、見たこともない…。それもそのはず、約2500万円前に地球に生息していた鳥類で、今は絶滅してしまっているからだ。
このペラゴルニス・サンデルシの姿は、今回の企画展に合わせて国立科学博物館の生態復元プロジェクトチームの方々が、1983年にアメリカ合衆国・サウスカロライナ州の工事現場で発券された化石や、骨格の全体的な類似性をもとに生態が似ていると思われる海鳥の仲間のワタリアホウドリなどを参考に復元作業を進めたのだそう。実物大で復元したのは、この特別展が世界で初めてという。
ド迫力の姿が天井に
翼を広げた長さは約7メートル。翼を大きく広げ、やや頭を下げた状態で獲物を狙っているかのような鋭い目で天井からドドーンと吊り下げられている。こんな大きな鳥が大海原を滑空していたら、度肝を抜かされるにちがいない。アニメなどで大きな鳥が猛スピードで迫ってくる影に人々がおびえ、逃げ惑う姿を描いた場面を見たことがあるが、本当に今にも巨大な影が迫ってきそうな迫力である。
面白いのが嘴に見える、たくさんの歯のような鋭い突起。実際に歯のようにしか見えないのだが、正確には顎の骨に多くの突起があるい、偽歯あるいは骨質歯と呼ばれるもの。太く大きな嘴と、びっしりと生えた(突き出た)歯のようなものでガブリとやられたら、ひとたまりもないだろう。
動画にも小さな親切が
毎回、展示方法で楽しませてくれる国立科学博物館。展示物はすべてはく製だが、多くのコーナーで、動画が用意されていた。短い尺で鳥たちの生きている姿を見られるのはありがたい。
しかも、モニターの下に動画再生時間が表示されている。いずれも1分半から2分弱で納められているので、人だかりになってしまうこともない。画面は小さめだが、モニターの前に人いたとしても、長くても2分弱待てば移動することがわかるので、押し合いへし合いになったり、混んでいるからとはなから諦めたりせずに待てるのもいい。
再生時間が表示されているのはすごく親切だ。小さなことかもしれないが、こういった気遣いは観ている側からすると、とても嬉しい。
趣向を凝らした展示に今回も感激
国立科学博物館は美術館と違って、展示にさまざまなしかけがあるのが面白い。今回はどんな展示になっているのだろうと、毎回ワクワクする。
巨大な「ペラゴルニス・サンデルシ」に圧倒されただけではなく、他にも空中でタンチョウが美しい舞をする姿があったり、展示パネルの梁(?)の上にちょこんとはく製が乗って(展示されて)いたり。
キョロキョロしながら進むと、「あっ、こんなところにいた!」と、見つけた時には宝を探し当てたような、少し得意な気分になれる。今回も展示方法に遊び心を感じさせる、国立科学博物館ならではの展示会だった。