【ご報告】未経験でNGO代表に就任。カリスマ創設者亡き後の組織づくりに奔走した10ヶ月の歩み
日頃よりモヨ・チルドレン・センターの活動を応援・ご支援をいただきまして、心よりありがとうございます。代表の佐藤南帆です。
2022年2月、モヨ・チルドレン・センター創設者の松下照美さんがご逝去されました。
照美さんが亡くなる3ヶ月ほど前、電話口で「あなたの人生をかけてモヨ・チルドレン・センターに関わってほしい」とおっしゃっていただいてからあまりにも早いお別れで、現実を受け入れることは簡単ではありませんでした。
モヨの代表に就任させていただき、早10ヶ月。気づいたら2022年が終わろうとしてます。
この10ヶ月、数えきれないくらい悩み、もがき、モヨから家に帰る車の中で涙を堪えられなくなることが、何度も何度もありました。
一方で、過酷なストリート生活を生き延び、強く生きていこうとしている子ども達の姿や、スタッフが自身の仕事に誇りと情熱を持ち、自身の家族のようにモヨの子ども達を愛し、ケアをしている姿に、心が震え、感動の涙が溢れることもたくさんありました。
決して楽な10ヶ月ではありませんでしたが、子ども達、スタッフ、そしてモヨをご支援いただいている皆様のおかげで、今日のこの日も子ども達の笑顔を変わらず守ることができています。
このnoteでは、私が2022年2月に代表として引き継がせていただいてから10ヶ月の活動を振り返り、モヨの活動の賛同・応援してくださっている方々に「照美さん亡き後も、変わらずにモヨは子ども達を守り続けることができている」ということをお伝えできればと思います。
代表を引き継がせていただいてからも、変わらずご支援いただいた多くの皆様、そして、新しくモヨをサポートして下さることになった多くの皆様に心からの感謝を込めて、精一杯綴らせていただきます。
モヨの活動について
モヨ・チルドレン・センターは4つの活動(児童養護施設の運営、ドラッグリハビリテーションセンターの運営、給食支援、学費支援)を軸に、助けを必要としているケニアの子ども達のサポートをしています。
支援している子どもの数を単なる数値だけで表現するのは、適当ではないことを承知の上で、ご覧いただいた方にわかりやすいように敢えて、下記の表に2021年と2022年にモヨを通じてサポートした子ども達の人数を比較させていただきました。
上記の通り、今もモヨは変わらず活動を続け、支援対象となる子どもの人数を増やし、活動をすることができています。
現状のモヨの予算、人員体制や施設のキャパシティを鑑みると、ケアの質を維持するためには、現状の支援人数が最大だと考えています。
照美さんが亡くなった時、モヨの後援会である『モヨ・チルドレン・センターを支える会』の役員の方々の中では「モヨを閉鎖しなければいけないのでは?」という議論もあった中、こうして変わらぬ活動を続けていられるのは、他でもなくご支援いただいている皆様のおかげでしかありません。
何から始めたらいいの?
非営利団体の運営や子ども支援の経験なしで突然モヨの代表に就任。
照美さんというモヨの絶対的存在を失い、残された現地スタッフと私だけで組織を存続させるために、まず何から始めればいいのか、右も左もわからず、ごちゃごちゃになった頭を必死に整理し、行ったことは大きく分けて2つあります。
1. 子ども達とスタッフを理解すること。
2. 照美さんがいないモヨをどう続けていくべきかを考えること。
子ども達やスタッフと可能な限り時間を共有したり、1on1の時間を設けて対話をしたり、改めて彼らの生活背景を調べたり…様々な方向から彼らのことを理解するように最大限努めました。
そして「助けを必要とする子ども達がいる限りはモヨを存続させたい」という照美さん・私・現地スタッフの想いを現実にするために「持続可能な団体への組織づくり」に必要な課題を洗い出し、それぞれの優先度を決め、細かいアクションプランに落とし込みました。
この課題の整理に際して、NPO法人チャイルドドクターの宮田さん、起業家として長年ケニアで事業をされているくにさんをはじめ、モヨと同じ地域で子ども支援活動をしている現地のNGOの代表やスタッフの方々など、様々な経験を持つ大先輩に、多くの時間をいただき、相談に乗っていただきました。
どんなに忙しくても「持っている知識は全て教えるよ」と学びを下さった方々、豊富なご経験があるのにも関わらず「日々の全ての出来事が学びだから一緒に学ぼう」と親身になって導いてくださった方々。
何も知らない私に貴重な時間を使い、あらゆる知識を分けてくださった全ての皆様にこの場をお借りして感謝いたします。本当にありがとうございます。
〇〇がいないと組織からの脱却
現在、モヨとしての大きな弱点は「〇〇がいないと回らない組織である」ということです。
私たちの弱点を克服し、どんなことが起きても継続的に子ども達を守れる持続可能な組織になるために、ここ数ヶ月で取り組んできたことは大きく分けて4つあります。
1. ビジョンの再検討
照美さんがモヨを設立したのは約20年前。
当時に掲げた照美さんのビジョン・ミッションやプランを改めて自分自身でも理解・解釈をし、今年発表されたケニアの児童法改定の内容や子どもを取り巻く社会の変化と合わせて、活動の軸を再考しました。
昨今のケニアの児童法では「子ども達は児童養護施設ではなく、社会で育てるべきだ」という"脱施設化"の流れがあります。
適切に運営がされていない児童養護施設は強制的に閉鎖を強いられていて、モヨがある地域(ティカ)の児童養護施設はここ数年で約3分の1に減りました。
定期的に開催される児童局主催のカンファレンスでも、これからの子ども達支援は施設サービスに留まらない包括的なアプローチを強調されています。
加えて、照美さんと一緒に長年子ども支援に従事してきたモヨのスタッフが大切にしてきた価値観は何か?をじっくり話し合い、モヨの活動の軸となるビジョンとミッション、ターゲットを定めました。
今までは照美さんが全ての判断軸だったけれど、これからはモヨスタッフ全員で紡ぎ出した新しいビジョンが全ての判断軸になります。
2. 活動内容のアセスメントと運営戦略
ある日、子ども支援活動をしているケニアのNGOに訪問させていただいたとき「モヨはケニアの子どもや社会にどんなインパクトを生んでる?」とそのNGOの代表に問われました。
その問いに対して、スラスラと答えられないことに悔しかったのはもちろんですが、改めて「そもそも私たちが行っている日々の活動が、本当の意味で子ども達のためになっているのか?」「日々の活動の中で今後も続けるべきこと、改善すべきことは何か?」を丁寧にアセスメントしなければいけないと気づかされました。
そして、毎週のスタッフミーティングで「活動内容のアセスメント」というアジェンダを設け、私たちの4つの支援活動に紐付くスタッフの日々の細かいひとつひとつの仕事を洗い出し、全ての仕事の「Strengths(強み)・Weeknesses(弱み)」をスタッフと一緒に洗い出しました。
アセスメントの流れは、
となります。
前述した①〜⑤の中で、現在はまだ②の段階で、正直、焦りもありますが、辛抱強く、丁寧に今後の戦略を立てていきたいと思っています。
3. 人員配置と採用、スタッフの教育
前述した通り「〇〇がいないと回らない組織」であることが私たちの大きな弱みです。
例えば、カウンセラーとソーシャルワーカーの資格を持つ現場責任者のブライアンや、10年以上勤続して下さっているマネジャーのタイタスという2人のマネジメントスタッフが現場のほとんどのオペレーションを担ってくれています。
もし、仮に彼ら2人がいなくなってしまうようなことがあったら、これまで通り子ども達に最善のケアをすることが難しくなり、子ども達が持っている権利を守れない事態になってしまうことは容易に想像ができます。
よって、来年からはブライアンとタイタスの元にそれぞれ1人ずつスタッフを配置し、ペアワーク制度を設ける方針です。
ペアワーク制度の導入に向けて、新しいソーシャルワーカーの採用にも注力し、ありがたいことに新しいスタッフを来年からインターンとして採用させていただくこととなりました。
マネージャー2人にも「持続可能な組織になるために、来年はスタッフの教育に注力してほしい」と今後の教育体制を議論しています。
4.オペレーションルールの明文化
モヨスタッフとして働く上で大切にしなければいけないポリシー、守るべきルール、各スタッフの責任領域、各スタッフの業務のマニュアルなどがなく、ほとんどの業務が長年の経験による"暗黙の了解"で進んでいることも大きな弱点です。
"暗黙の了解"で業務を行う、つまり、明文化された共通認識がないままだと、新しいスタッフが入職したときや、スタッフの人員配置を変更しなければいけなくなったときなどに、これまで通りの方法で子ども達を守ることができません。
よって、各スタッフの業務内容の明文化とマニュアル化、そして必要なポリシーの策定を進めています。
以上、ざっくりではありますが、現在「モヨの組織体制を整える」ために私が注力している業務です。
まだまだ他にもやるべきことはたくさん、たくさん、たくさんあります。しかし、今はじっくりと基盤づくりをしていきたいと思っています。
2023年に向けて
前述した「活動内容のアセスメント」「人員配置とスタッフ教育」「オペレーションルールの明文化」は2023年3月中旬までを目処に進めていきます。
合わせて、モヨを1人でも多くの方々に知っていただくこと、すでにご支援いただいている方にモヨをより近くに感じていただくことなどファンドレイジング部門にも徐々にウエイトをかけて進めていく所存です。
まだまだやるべきこと、やりたいことは、泉のように湧き出てきます。
組織を構造で捉えることを大切にしつつも「目の前にいる子ども達に最善を尽くすことができているか?」という視点を忘れず、引き続き、目の前の子ども達にも精一杯向き合っていきます。
最後に
この10ヶ月「私なんかが代表でいいのだろうか?」と何度も思い、不安とプレッシャーに押し潰れされそうになり、前に進むことが怖くなることがたくさんありました。
自分のできないことを埋めるために、代表に就任してから丸一日休むことはなく、寝る間を惜しんで働き続けました。
RAHA KENYAでフルタイムで働きながらも、モヨの仕事もし、限られた時間のなかで課題を整理しつつ、頭と心を切り替え、両立することは楽な道のりではありませんでした。
オーバーワークによるストレスで心身ともに疲弊しそうになることも何度かありました。
チャレンジングな日々でしたが、私自身が心を燃やし続けることができたのはどんな時も明るく元気いっぱいに笑顔をくれる子ども達のおかげです。
先日、ドラッグリハビリセンターに暮らすある子どもが私宛に書いたという絵を見せてくれました。
その手紙には「自分の子どものように接してくれてありがとう。安全な場所をくれてありがとう。長生きしてね」と書かれていました。
こんな幸せなこと、あるんですね。
大変だった日々は一瞬で吹き飛び、つらかったことはもう全て忘れました(笑)
モヨの子ども達やスタッフと過ごす時間を重ねるごとに、子ども達やスタッフは私にとって切っても切り離せない、心の一部になったような気がします。
私にとってのモヨの子ども達は自分の弟であり、家族のような存在です。
この大切な私の一部を、これからも守り続けられるように、もっと強く逞しく、頼り甲斐がありつつも、等身大な代表になりたいです。
至らぬことは多々あると思いますが、モヨの子ども達のために全身全霊をかけて日々活動をしていることだけは胸を張って、断言いたします。
少しでもモヨの子ども達に思いを馳せていただけたらモヨのサポーターになっていただけたら嬉しいです。
全ては罪のない無垢な子どもたちの未来を共に照らすために。
モヨ・チルドレン・センター代表
佐藤南帆
ご協力のお願い
モヨ・チルドレン・センターを今後も継続的に運営していくことができるよう、どうかどうか一人でも多くの方にご支援いただけますと幸いです。
継続支援(マンスリーサポーター)はこちらからお願いいたします。
◉ https://congrant.com/project/moyochildrencentre/4262
単発のご寄付はこちらからからお願いいたします。
◉ https://congrant.com/project/moyochildrencentre/4257
いただいたご寄付は全てモヨ・チルドレン・センターの子どもたちのために大切に使わせていただきます。
モヨ・チルドレン・センターの今後のためにどうか、お力をお貸しください。
皆様の温かいご支援とご協力を心から宜しくお願い申し上げます。
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