土屋信

詩作、読書、映画鑑賞 https://garnet1789.blog.fc2.com/

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最近の記事

落書き帳

ゲームの幕開け 宇宙の穴蔵から記憶の 扉を開ける 一次元の綱渡りの果てに 終末への入口 若返った三毛猫が 誕生の出口へと跳躍する ゼロの起源から 十次元の流れを辿る  落書き帳の夢想の足跡

    • 即興詩

      たまに鉛筆で書いてみる 午後の窓辺の陽射しを 懐かしむように 透明になってゆく指先から 延びる鎖が吸い込まれて 白黒の海に溺れ 青空の翼が喘ぐ 瓶に封じ込められた 記憶が震える 空と海の一コマが 机の上に置かれている 何処でもないそこで 時が歩み始める

      • 古本

        たぶん外見が好ましければ 中身も美味しいに違いない 並んだ本をさらっと見て 目に止まった本を抜き取る 背表紙は重要だな ロクでも無い本はボロい 身なりでうらぶれている 古本屋に幾ら本があっても 出自の正しいものは すぐ目に入る なんと ボロとクズで溢れているか ネットの世界も同様に

        • 銀紙の星

          物質化したメロディが転がり 時にぶつかって結晶が砕ける  のんびりとした猫の肢体 夜の川面に揺れ惑う光 金で買える物は実は買えない物 僕は空虚なむくろを 手にしている 虹に触れたいという願望 山の裾野の虹を目指して 駆けて行く子供たち 夜 中也の銀紙の星がまたたく

          見えない扉

          夜の底の壁を叩けば 奇妙な筏は漂ってゆく 君と君の魂を乗せて ネジをくるくる回して外すと 多次元は君の暗い部屋の 時間と距離の枠を取り払う 視よ、われ戸の外に立ちて- 黙示の頁が翻って 次元の結節点に灯火が揺らめく 牢獄の壁を見つめながら もう一人の自分が見えない扉を開く 焼き増しされた写真が舞う

          見えない扉

          春の釭(ともしび)

          ガラスの脆い球が 母なる闇の中から 転げ落ちる その中で完結して 一つのドラマから もう一つ物語へと 手品のように 変わってゆく  しかし 決してゴングが 鳴ることはない 答えは他所にあるから 春の釭のように ※ふかき夜を花と月とにあかしつつよそにぞ消ゆる春の釭(ともしび) 藤原定家

          春の釭(ともしび)

          記憶のない場所

          迷路の隘路がすべてじゃない 出口は一つだから  レッテルしか信じない 乞食は道に迷う 自分の御旗と心中するのは あなたの勝手  旗は勝手に飜る 狂信的な 信者が何人死のうが関係ない 先に有るのは形のないもの 型にはめる馬鹿らしさ 気が付いたら始めとは似ても 似つかないあなたがいる ゲームの始まりのように 場所の記憶もない

          記憶のない場所

          ポッケに入れた月

          ポッケに入れた あなたの知らない世界 地球の内側から あなたの 内なる宇宙へと 吐息に揺らめく頁が開き 羽毛が靡き蠢く胎動  カオスに滑る氷の刃 完璧と言う名の嘘 瑕なき作品のつまらなさ エントロピー崩壊の 新たなる予感

          ポッケに入れた月

          天使の分け前

          絵筆がキャンバスをうねり 結晶の奥のエメラルド 翠の瞳の眠る岩肌 女神の眼差しをよぎる風 みなものざわめきを越えて 青銅の沈黙に沈んでゆく 呼ぶ声は失われた天使の分け前 パズルのピースのひとカケラ 知っていても触れ得ない 張り巡らされた思いだけが 繋ぐ証し悪魔の取り分

          天使の分け前

          鳥は卵から脱出するために戦う。卵は世界。生まれようとする者はまず世界を破壊しなければならない。鳥は神のもとへ飛ぶ。神の名はアブラクサス 『デミアン』 ユングとヘッセ

          鳥は卵から脱出するために戦う。卵は世界。生まれようとする者はまず世界を破壊しなければならない。鳥は神のもとへ飛ぶ。神の名はアブラクサス 『デミアン』 ユングとヘッセ

          ブックダーツ

          銅のブックダーツが頁に 留まって豚の子は 野原を散歩する 鳥は卵を暖め 世界の崩壊を予感する 錆びついた剣を研いで 殻の上に座り 溢れる水を見ている 小人の老人 年老いた眠り姫は 古いヨーロッパ街道を 夢に見る 毒から逃れたつもりで ブランコに乗ったまま 爆弾を解除出来ない

          ブックダーツ

          分身

          眠っていた繊毛がふるえ 春の岸辺のめざめた 若草の萌え出る芽のように 黄金の頁は心の海と空に 広がる 燻み錆びついた扉は 開かれ時間の制約を解き放たれて 無重力の空間で 自分なかに降りてくる その時それは特別なものになる それ以外では何ものでもないものが 自分の分身になる

          欠片

          日差しが零れ落ち 夕陽の車輪が駆けて行く 内にも外にも音の調べが 響き合い記憶の部屋を 渡ってゆく 縦書きの原稿用紙 つけペンの息遣い インクの海から 釣り上げることばで 余白に描くプラネタリウム 星の誕生と死 死の欠片が 生の沈黙の叫びを呼び込む 死ぬ為に生まれた来た意味を

          一人でお茶を

          赤く燃える頁の縁が ピアノの音に乗って漂う 孤立する緑の中の青 黒いカードが反転し 赤いカードになる 三島由紀夫の切腹 老いさらばえることを 嫌ったローマ戦士の自死 機械で生かされている人達 死病の癌に慄き車に 轢かれる男 いつでも平等な死神は お気楽にお茶を飲んでいる

          一人でお茶を

          未完の告白

          フレームに 切り取られ肉体  壁に貼られた頁の コラージュが予感に慄く 素肌に散りばめた 不完全な記号 星の鼓動に呼応する 沈黙の音 息遣いが冷たい闇に白く漂い 秘密の出入り口を行き来して 完璧の嘘を告白する アンバランスの魅力を 吐き出しながら 不協和音があなたの裸身を包む

          未完の告白

          憂鬱

          形の不揃いな茶色い角砂糖 不戦勝の憂鬱は 蒼白い仮死の夢に沈み 霜月の朝の現の閾に微睡む 燃える短い蝋燭の炎を 向う側に幻視する時 鼓動するミクロとマクロは 同期し動悸する 蒼白い殻を破り転げ出る 赤裸々の魂が 翼を広げ飛び立つ