誠実性を高める前に
前回に引き続きお世話になります。
前回の記事を振り返ると,
①誠実性を高めるといいことがたくさんある。
②他の非認知能力ともかかわりが深い。
③小学生程度の年齢でもアプローチが可能である。
といったことを書かせていただきました。
今回は以下の3つの視点からもう少し深堀してみます。
誠実性を高める実践に必要なポイント
誠実性という言葉につられて,イメージ通りに誠実な行動を求めるばかりの実践をしてしまうと,いろいろ抜け落ちてしまうようです。
☆教員(他者)の評価より自己評価することでより高められる!
他者からの価値づけではなく,自己評価する仕組みを取り入れることで,より効果的に実践ができるそうです。これは効果量にも表れるものであり,リフレクションの考えなどにも通づるものがありそうです。
☆社会と情動性の学習(Social Emotional Learning)との相性がいい!
本書ではこのように書かれています。
SELを通して獲得されるコンピテンスが主に5つ考えられます。
※コンピテンスとは環境に対する適応能力をさす概念
①自己認識
②自己管理
③社会意識
④対人スキル
⑤責任ある意思決定
誠実性の側面から見ると,②自己管理と⑤責任ある意思決定が大きくかかわってきそうですね。
☆成功のカギは四つの要因がある!
上記したSELをただやるだけでは,効果的な取り組みにはならず,成功させるための4つの要因があります。
①プログラムが順序・秩序だっていること
②アクティブラーニング的な形式をとっていること
③コンピテンスを獲得することに焦点を置いた活動が一つ以上入っていること
④対象としているコンピテンスが参加者と実施者の双方に明示されていること
これらがない取り組みは,ほとんど効果があげられないようです。
※アクティブラーニングもいろいろな考え方があるようですがおいおい…
確認しておきたいこと
では実際に学校でも取り組もう!としたときに,もう少し確認したいことがあります。
☆雪だるまのように鍛えられていく。
雪玉を転がすと大きくなっていくように,非認知能力も消えることなく蓄積されていくものだということです。
同じ経験をしたとしても,大きい雪玉をもった状態と小さい雪玉をもった状態では見える世界が変わってきますので,大きいに越したことはないかなあと思うところもあります。
☆「能力」というよりも「特性」というとらえ方のほうが…?
言葉の整理からしますね。
「能力・特性・スキル」の似たような言葉を比べながら整理します。
「特性」:生まれながら持ったもので,将来にいい影響を与えるかどうかは
わからず,変化させることも難しい。
「能力」:生まれながら持ったものではあるが,はたらきがけで変化できる
可能性を秘めていて,将来にいい影響をもたらす方向へ動かすこ
とができる。
「スキル」:遺伝的な影響は大きくなく,変化させることができ,将来にい
い影響をもたらす方向へ動かすことができる。
誠実性の測定には質問紙法の人格調査を用いているので,「特性」なのだと著書に記されています。(まったくややこしい…)
ですが,介入が可能なので,能力的な側面も持ち合わせていますので,あくまで議論するときの土台として知っておきたいですね。
注意点
☆もちろんデメリットもあるよ。
いい話ばかりなはずもなく,何事も両面性があるものです。誠実性が高すぎることで…
・感情的経験が抑制
・簡単な仕事においてのパフォーマンスが落ちる
・大学のGPA(大学成績評価のひとつ)も下がってしまう
デメリットがあるから,誠実性を高めない!なんて極論はなしで,知っておくということが大事ですよね。
☆倫理的問題
これまでいいことやとらえ方などを書いてきましたが,個人をとらえるときの一つの切り口にすぎません。誠実性が高いからいいとか低いからだめなんていう議論をするのではなく,見方として持っておくということが大事ですよね。
また,誠実性が低いから生活が苦しいなんてことがあるなら,補償制度を見直せばある程度は解決するでしょうし,無理やり高めようとするのはパーソナリティの否定にもつながりかねません。
自分の引き出しに一つ,「誠実性」の考え方があるのは,学校生活にとどまらず,様々な対人関係を見つめるときのいい「よりどころ」になりそうです。
次回は,これまで書いてきたことを踏まえ,じゃあ私はどうしたいのかということを言葉にしていきたいと思います。
今回は長文になってしまいました。
お読みいただきありがとうございます。
誰かの「よりどころ」になりますように。