ショート 恐怖
うっかり帰りが遅くなってしまった。金欠病の俺は、ボロアパートから追い出され、やっと見つけたボロボロアパートに引っ越して1ヶ月経った。仕事もあるし、部屋も確保出来たで、申し分ないのだが、仕事先からアパートまで1時間半ぐらい、これだって、全く問題ないのだ。ただ一つ問題は道だ。
最寄駅から徒歩15分!この道が怖いのだ。田舎の無人駅で、駅から線路に沿って細い道があるのみ、片側は線路側で緑色の高い金網が続く、反対側は斜面が競り上がった様な階段状の墓地だ。墓地は古く、鬱蒼とした笹に覆われていて、道の半分はその笹が迫り出して、ガッシリ埋まっている。歩くのがやっとで、自転車は無理である。墓地側に一つだけ街灯があるが、これが暗い街頭で、一層不気味だった。
いつもは、一つ手前の駅で降りる。そこからバスで帰れば、田舎の商店街と畑道を抜け。バス停から2分でアパートだ。終バスが午後8時40分、その日はこれに乗れなかった。田舎の一駅は長い、歩いては行けない、タクシー代などもったい無い、
その日、ホームに降りたのは3人、男2人に女1人だった。あの道を行く人が2人もいる事に安堵した。女性を先頭に、三メートルぐらいの間隔をあけてひたすら家路を急いでいたのですが、先頭の女性が一瞬振り向き、ヒッと声を出したかと思うと、「来ないでぇー」悲鳴と共に走り出した。
俺のすぐ前には、会社員が居る。一瞬、こいつがふざけて脅かしたのか?と思ったが、彼が、「ウワー」っと大声をあげて、走り出し、女性を追い越して走って行ってしまった。
嘘だろ!? すれ違う事も出来ないこの道で、追い越すって、どう言う事だよ!
10メートルほど先で、女性が立ってこちらを向いている。墓地の上の方から風が吹いて来て、伸びた笹が顔に当たる。
俺は無言で踵を返し、駅まで金網に打ち当たりながら引き返した。無人駅には反対方向の電車が来ていたので飛び乗った。
二日ほど夕飯を抜けば良い、タクシーで帰ろう
おしまい