連載小説 サエ子 第9章
再来
帰路の車中で、サエ子が言った。「武史、私ね、お金持っているの」「うん、俺だって貯金あるよ、結婚式するか?」「そうじゃ無くて、家族の保険金のことなの、高額あるの、でもアレは家族からの形見だから、お墓を造ろうと思っているの、合同葬儀の時にお寺さんが、名前と住所と生年月日だけで、戒名と位牌を作ってくれて、皆んな位牌を預かってもらっているの、新しい街の整備が終わったら、お墓を立てようと思っているの、お寺や市役所の方は、お墓はいつでも建てられるから、自分の幸せのために使ったら、って言ってくれるけど、山本のことで馬鹿なお金の使い方をしてしまって、もう自分のことで使うのは止めようと思ったの、でも、もう私は1人じゃないし、武史はそれでいい?」もちろん、それで良いに決まっている。それを聞くと、サエ子は安心して少し眠った。
サエ子の職場の女性が、YouTuberで、3匹の赤ちゃん猫とサエ子の様子を公開し、それがとても好評で、特にハチワレのマロはアイドル化してしまい、ファンの皆さんが送ってくれる子猫のおもちゃで、部屋はいっぱいだ。
週末、遊びに来た女子社員と、夢中でおやつを食べる子猫を見ていた。「ネエネエ、オハギって足チョット長いよねえ」「うん、スタイル良いよね」「トラちゃんってさぁ、足ずいぶん短いよねぇ、フフッ 可愛い♪」YouTuberの同僚、平井敦子は「最近トラちゃん可愛いって言う書き込みも多いのよ」と笑う、撮影している真ん中を、ビュッと横切ったマロが、俺の肩に駆け上がり、そのままサエ子の頭にジャンプ!その加速でキャットタワーの最上段へ! マロは一番元気だなあ、下を見下ろして満足そうである。そしてすぐニャーニャー鳴いて、台の上をウロウロ、そうなんだ、マロは未だ自分では、降りられない、でも高い所が好き、最近ではサエ子の頭に乗っていることが多く、サエ子も乗りやすい様な髪型にしている。編み込みという髪型、彼女はそれがとても良く似合っている。立ち上がってマロの方へ行こうとしたら、タワー中断に、床にと続けてジャンプ、尻尾をピント立てて、ドヤ顔である。拍手をしたり笑ったりで、楽しく過ごした夕方、敦子は「帰ったらすぐ編集するから、日曜日は見てね、いいねボタンを忘れずにネ」と帰って行った。
日曜日は、遅い朝食のあと、敦子から (載せたよ、YouTube見て)とメールが来ていたので、玄米茶を入れてネコ達と見た。「お前、マロヘルメットよく似合っているよ」「ほんと?嬉しい」なんて和気藹々だった。だがしかし
「武史これ見て」と、サエ子が書き込みを指差すと、そこには・・・
山ちゃん:吉田😵
10人程の書き込み
山ちゃん:サエ子 見付けた ミーツケタ!
つづく