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ショート やっぱり君が好き

世間では就職氷河期なんて言われていた頃、両手に余るほどの面接に落ちていた。彼女がいて同棲までしていたが、アルバイトで何とか食い繋ぐ状況だった。彼女の名前はミサト、ミサトは中堅クラスの会社の正社員で陽気な女性です。

出会いは学生時代、俺はバスケ部で、彼女はそこのマネージャでした。お金が貯まったら旅行しよう、なんて話したこともあった。

路上の針金細工売りで千円の指輪を買い、思い切って借りたちょっと広めのアパートで暮らし始めた。彼女の就職が在学中に決まった時はお祝いしたのに、俺の就職先は決まらなくて、卒業半年でやっと決まった会社は小さな印刷会社だった。それでもミサトは喜んでくれたよ、俺も嬉しかった。でも給料がミサトより随分低いことに、残業が多いことに、俺はクサってしまった。2年でそこを退職した。それからは無職時々アルバイトの生活で。自分で自分が嫌になってしまい、いつも優しいミサトが鬱陶しくなってしまった。優しい笑顔が、俺を笑っているように見えてしまう、病んでいたのだと思う

喧嘩して、バイトをクビになった日、別れてくれと頼んだ。俺じゃ君を幸せに出来ないと言った。

ミサトは泣いて、「アンタが、結婚してって言ったから待ってたのに」って「俺は、プロポーズなんかしてないぞ」って言ったら、6歳の時だって「アンタが、私立の小学校に行ったから、大学までズーッと会えなかったのよ」だって、・・・でも無理だった。

地方の建築工事アルバイトを住み込みで決めて、強引に出て来た。

ドライブインに居た女性、友達に置いて行かれてしまい、タクシーを呼ぼうかと、困っているらしい、こちらは男ばかりの5人組、仕事帰りで汗まみれ、臭くても良ければ、お乗りなさいと、現場監督がバンの最後部座席に1人で座って貰ったのだが、急ハンドルを切る際、心配で女性の方を見た俺だけが気付いてしまった。七曲りを外回りする度に、ドアを突き抜けて外側に体が半分以上突き抜けている。そして、何事も無かった様に戻ってくる。仲間達はいつもの帰路でウトウトしていて気付いていないのだ。ミラー越しに目が会い、ガッと睨まれて、思わずチョットブレーキを踏んでしまい、ハッと起きた監督が、「ああ、いかん、お嬢さん確か降りる場所は、アレッ? バイト君彼女、降りたの?」って言うから、はい、もう先ほど降りられました。って言ったよ、だって俺の後ろに居るんだもん、見えないけど分かるんだよ、これが

宿舎に着くと、監督が「バイト君、今日までだったよねえ、手配してあるから、明日の朝10時までには事務所で、給料受け取って帰ってね、お疲れさん」俺もベットに入りたかったが、気配が怖くて動けない、暗い庭に取り残されてしまった。

こんな時にスマホに着信があった。ミサトだ。スマホを取り出すと、例の女も覗き込んでくる。見えないふり・見えないふり 開くと画像が来てた。

ミサトが踊ってる。歌ってる

ロンリーチャップリン♪ 貴方から♫ 、貰った指輪は もう 入らない〜♪

二つ作るのが癖なのよ♪ いつも1人で食べてるの♫ ああもう 服が入らない〜〜♪

例の女が、真顔で見てくる 結構美人だ。 シュッと上の方へ消えて行った。もう気配もない

俺はすぐ電話した。「バカ、いつ帰ってくるのよ」「明日の夜」「肉ジャガで良い?」「うん」

おしまい

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