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あおによし奈良の都に行って来た、の話
「あおによし」は奈良の都の枕詞だと遠い昔日の光が斜めに差し込む教室で古文の先生に習った記憶がある。美しい奈良の春をうたった和歌だった。濃い桜色の花びらが一面に咲き乱れ空気の色まで桜色に染まるような光景を思い浮かべてうっとりした教室での記憶。
あの時、先生が青によしの意味を話していたのかどうか記憶があいまいでよくわからないけれど、先日春日大社の神主さんに「青丹よし」の意味を教わってから、桜の向こうに浮かぶ緑と朱の建物を思い浮かべるようになった。「青丹よし」の建物の緑と朱色が美しいという意味なのだそうだ。
そんな記憶をたどりながら、紅葉の季節が終わり冬の気配が訪れた日の午後、今も青と丹に彩られた奈良に出かけた。
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近鉄特急あおによし
京都から奈良に行くルートはたくさんあるけれど、今回は奈良の枕詞を冠した近鉄特急あおによしに乗車。
近鉄特急あおによしは紫色の車体に吉祥紋をあしらったボディの観光列車。車内はイメージカラーの紫の良く映える緑のチェアがゆったりと配置されている。京都から奈良まで35分。途中、平城宮跡を車窓に見ながら旅の期待が高まってくる。
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待ち合わせは行基前
奈良で友人と待ち合わせ。
待ち合わせの場所は近鉄奈良駅前広場の行基像前。
行基は東大寺の大仏建立に尽力し、その功績を認められて日本で初めて大僧正になった高僧。像は噴水の上に建っており、奈良定番の待ち合わせスポットとなっている。
しばらく待つと、待ち人がやってきた。
さて、奈良観光と行きましょうか。
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まずは商店街をぶらり
近鉄奈良駅は観光スポットまでのアクセスがいいのでどこから歩くか迷うけれど、たまには商店街をぶらっと歩いてみるかという事になり、行基像から右手に伸びる商店街へと向かう。
商店街は昔ながらの和菓子屋や奈良漬けの名店、レトロな銀行の建物に交じって昨今流行りのインバウンド向けジャパニーズ商品を並べる商店などが立ち並び不思議な雰囲気を漂わせている。アーケードの下をしばらく歩き、開けた道に出ると人だかりができていた。
ダイナミックな高速餅つきで有名な中谷堂。SNSで世界中に拡散されているからなのか人だかりを形成しているのはほとんど海外からの旅行客のようにも見える。
列に並ぶと見かけより早くつきたてのよもぎ餅をゲットできた。ほんのり暖かく、ふんわり柔らかで、がっつり伸びる。慌てるとのどに詰めて大変なことになるので、ゆっくりよく噛んでいただくことをお勧めします。
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中谷堂HPから高速餅つきの様子を見ることが出来ます
お昼は老舗の柿の葉寿司
中谷堂から左をむくと猿沢の池が見える。
池の周りには柳が植えられていて、晴れた日には興福寺の五重塔が水面に美しい姿を現し、日本情緒を感じさせる。SNS界隈では猿沢の池のそばにあるスターバックスが有名ではあるけれど、今回は前を通り過ぎて奈良の名物柿の葉寿司の老舗平宋奈良店本館へ向かう。
路地を歩くと小さな鳥居があちこちにあり清潔に整えられた神様の祠があり、古の昔より人々が祈りをささげ大切に守ってきたモノが息づいている。
平宋本店は猿沢の池からすぐの場所にある。
案内されたのは畳が敷かれた席。当然、靴は脱いで上がる。
店員さんが丁寧に出してくれるお茶が冷えた体をほっとさせる。
注文は茶粥と柿の葉寿司のセット。茶粥にはほうじ茶が使用されるらしく、口に含むと香ばしい香りがうちの中に広がる。柿の葉にくるまれた寿司は強めの酢飯とネタの相性がいい。
盛り付けられてきた柿の葉寿司の一つが紅葉した柿の葉で作られていて、料理は目でも食べるという日本食の美を感じた。
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中川政七商店で工芸品を見る
せっかく奈良に来たのだから記念になるものでも買って帰ろうかと近くにある中川政七商店本店まで足を延ばす。中川政七商店は1716年に晒を扱う商家であったそう。古くは袈裟として使用された晒は現在では布巾をはじめとする様々な商品に加工され店舗だけでなくネット販売などでも商品を手に入れることが出来、ファンも多い。日本の工芸品を数多く取り扱われており、老舗の気概を感じさせる。
中川政七商店の奈良本店は鹿猿狐ビルと変わった名前のビルにある。
名前の由来は何ですか?と尋ねたら、鹿を配した紋章を持つ中川政七商店、猿田彦珈琲がテナントとして入っており、隣におお稲荷さんの祠があることから名づけられたのだと店員さんが話してくれた。
1階入り口右手の猿田彦珈琲からいい香りが漂ってくる。
いきなり話しかけたにもかかわらず若い店員さんはビルについて丁寧に話をしてくれて、ビルの名前の由来だけでなく商店の歴史的背景なども話してくれた。
話のついでに、レジ横で販売されていた鹿・猿・狐が仲良く並ぶおみくじを購入。可愛い入れ物は今、家の玄関に飾られている。
店内は広く、中川政七商店の歴史を展示する展示室もあるのでぜひ見ておきたい。
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イケメン阿修羅像を見に興福寺国宝館へ
中川政七商店で奈良にまつわる可愛いおみやげを買った次に目指したのは興福寺。
興福寺は法相宗の大本山。1300年前に創建された奈良を代表する寺院である。
広い境内でひときわ目立つのは2018年に再建され青丹のコントラストが美しい中金堂。
その横を抜け、仏像会のスーパースターと言われる阿修羅像を拝みに国宝館に入る。
中は静謐な空間。京都のそれより大きくおおらかな雰囲気の仏像が並んでいる。
高さ5メートルを超える千手観音菩薩立像、見事な筋肉美の金剛力士像、そして思春期の苦悶の表情が美しい阿修羅像。写真撮影ができないのでお見せできないのが残念だけれど圧巻の国宝たちを見て古に思いをはせる。
入館料金は大人700円。
春日大社を神主さんに案内してもらう
旅の最後は平城京の守護、春日大社へ向かう。
ちなみに、近鉄奈良駅から春日大社までバスが出ているけれど、国道沿いの道をぶらぶら歩くのがおすすめ。博物館や有名寺院が道沿いにたくさんあるし、途中から神様の化身の鹿が増えてくる。ずらりと並ぶ燈籠とついて来いと言いたげな鹿たちに誘われて到着した二の鳥居の下で神主の吉岡さんが待っていてくれた。
ここからはスペシャルな神主さんによる春日大社ツアーが始まる。
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二の鳥居をくぐるとすぐに瀬織津姫の神社がある。瀬織津姫は大祓の祝詞に出てくる女神で汚れを払ってくれる神様である。皇族方がお越しになる時もここで汚れをお払いになり御本殿へと進まれるのだそうだが、その際は被いで中を見せないようにするのが習わしなのだとか。
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春日大社は藤原氏との関係が深く、現在でも藤原氏のお血筋に方々が参拝に訪れた際には別ルートを通って参拝されるそう。道のはじまりは魔除けのために矢印の形をしている。
道を進むと左手に榎本神社の階段が見える。ここにいらっしゃるのは榎本の神。昔々からこの地一帯を守ってくださっていた厄除けの神様なんだそうだ。「神様は耳が遠いので本殿へお参りする前に参拝に参りましたよとそばに行ってお伝えしないといけないんです」と教えていただく。
本殿へと続く道には燈籠が並んでいる。一つだけ漆塗りの者があったのでなぜかと尋ねると元はすべて漆塗りの豪華な燈籠だったのが長い年月をかけて剥げてしまったのだと答えが返ってきた。漆と金で飾られた豪華な燈篭に灯がともり揺れる様を思い浮かべてうっとりする。ちなみに、春日大社の参道は3000基の燈籠がならび、かつては日本一明るい場所だと言われていたのだそうだ。
歴史上の人物たちが寄進した釣燈籠がたくさんあるので探してみるのも一興か。
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本殿は写真撮影ができないのでお見せできないが、神の山を背後に頂く本殿は凛とした空気が流れ背筋が伸びる思いがした。
残念ながら、本日は御本殿までのお参りとなったのだが、春日大社は広くたくさんの神様が祀られている。次回はゆっくり時間を取って、くまなく巡ってみようと思う。
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終わりに
京都から奈良へ行くと、いつも何もかもスケールが大きいことに感動する。
今回は近鉄奈良駅を起点に半日ぶらぶらしてみたのだけれど、奈良は他にも有名寺院や古墳群が点在し、以前からホテルになったら収監されてみたい奈良監獄もある。
春の奈良公園は桜色の包まれて天国のようにきれいだし、勇壮なお水取りの光景も見てみたい。吉野は花の名所だし、宇陀の街並みも訪れてみたい。
しばらく、奈良に通うことになりそうな予感がする。