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2024年 創作怪談集

X(旧Twitter)にて、応募企画に参加した創作怪談をまとめました。

#戯草140

「奇談戯草」様(@kidanntawamure)の企画 #戯草140 の参加作品です。

1
郊外にひっそりと佇む、とある廃墟。
そこに行って、「何もなかった」という人もいれば、「建物の中いっぱいに人が立っているのが見えたから、中に入らずに逃げた」という人もいる。
「何もなかった」という人はみんな、あの廃墟に入って何があったのかを、言いたくないだけなのだと思う。

2
フリーマーケットで買ったビデオのラベルには、女性の名前が書いてあるだけ。
友人達と見てみると、終始ノイズまみれ。
不思議なことに何人かが震えている。
ノイズに混じって、女性の声が聴こえるという。
「呼んだでしょ。責任とって」
ラベルの名前を口にだした人だけに聴こえるようだ。

3
小さい頃、庭で割れないシャボン玉が浮いてるのを見ていた。どうしてもそれを割りたくて、掴んで踏み潰すと、いつの間にいたのか、知らない女性が拍手をして褒めてくれる。
「それは生まれ変わることもできなくなったねぇ」と、笑う女性。そんな記憶。そういえばその日、お葬式をやっていた。

4
「お地蔵様って、ほとんど手を合わせてるでしょ?だから、あそこにズラーっと並んでたのが全部両手をだらりと下げていて…。後で先輩に聞いたら、信心が足りてないからだとかなんとか言われて…」
全身を包帯で覆われた彼は、身を震わせた。
「次も、手を合わせてなかったら、どうしよう」

5
交番に現れた泥だらけの男は、「人を埋めました」と自供した。警官数人が男の案内のもと、付近の雑木林へ。
男の言う場所を掘り返すと、その男の遺体が見つかった。
じゃあ今一緒にいる奴は…と見直すと、まったくの別人。
結局、その場で逮捕されたが、犯人に交番に行った記憶はないそうだ。

6
ゴミ袋いっぱいに詰められた人形は、全て同じモノだった。
いくつかある同じような袋に囲まれて、首を吊っていた住人。
遺書…らしき紙には、
「こんなにたくさん、増えるとは思わず。育てる自信がなくなりました」とだけ。

7
廃墟巡りが趣味で、そこに遺されてるVHSテープがあると、怖いの映ってるかなと思って持ち帰るんです。
最近、いろんな廃墟で拾ってくるビデオを見ると全部、同じ家族のホームビデオなんですよ。
怖くはないですよ。
でも、いつかこの家族の末路を、映像で見てしまうのではないかと思うと…

8
若者が空き地で穴を掘っていた。
その様子に尋常ではないものを感じて、思わず声をかける。
「どうしました?探し物ですか?」
若者は穴を掘る手を止めないまま、
「私が…代わりになるしかないんです!」
とだけ。
…なるほど。
先週、ここにあった祠が荒らされたが、この人の仕業だったか。

9
旅の途中、とある村にて。木板でできた小さな祠があり、村人達は通るたびに手を合わす。
私も拝んでおこうと、祠に近づいた。
祠の中一面に、写真が貼られている。
全て隠し撮りされたような老若男女のもの。
「この方々の犠牲で、村は安泰なんですよ」
隣で手を合わす村人が笑った。

10
フリマで木彫りの人形を買ってから、良いことが続く。この人形になにかあるのではと思い、霊感のある骨董屋に見せた。
いわく、人形が原因だという。愛情込めて作られたモノだそうだ。
「…木を素手で彫っている跡があります。
ところどころに血肉が染みていて…」
人形はその場で手放した。

11
とある神社に取材へ。参道に佇む和装の男性に話を聞くと、ここで道案内を担当しているのだという。
「時々ね、山の中に入って迷っちゃう人がいるから。神様の気まぐれなのかもねぇ」
怖いことを言うなぁと思いつつ、境内へ。
後で神主さんに尋ねると、そんな男はいないと言われた。

12
人の気配がして、振り向くと誰もいない。
そんなことがしょっちゅうある。
霊感というやつなのかはわからない。
ただ、そのおかげで。
先輩に誘われて行った廃墟は、まったく怖くなかった。
まるで人混みの中にいるような感覚だったから。

#不気味な書き出し文藝


「河出書房新社 文藝」様(@Kawade_bungei )の企画 #不気味な書き出し文藝 の参加作品です。あくまでも書き出し。物語の始まりだけで怖さを表現するのが難しかったです。


①身体についた虫を払い除けるかのように、
彼女は僕の背中をさすった。
呆気にとられる僕の斜め上を見ながら、
「…もう、あそこには行っちゃダメだよ。
次はないよ」
彼女はそう言って黙った。
昨日あの廃墟ではぐれた他のみんなは、
もう助からないのだと、悟った。

②ついに、私の家に肖像画が流れてきた。
お隣りからの回覧板にはさまっていたらしい。
父さんは面倒そうに、神主へ連絡していた。
母さんはお隣りへの愚痴を繰り返す。
愚痴がやがて名も知らない誰かへの讃美に変わりだしたので、慌てて口を塞いだ。
元に戻るといいけど。

③不気味な書き出し文藝 を考えていたら、知らない女から怖い話をされる夢を見るようになった。
おそらく仏間であろう畳敷きの部屋の中、和装のおかっぱ頭の女と膝を突き合わせている。
その女の話がどうもいまいち怖くない。
不満そうな私に、
「じゃあもう、お前が出くわせばいいよ」
女は言った。

④「真夜中、子供達の騒ぐ声がする」
そんなクレームがあったので、
空室のはずの十三号室に入ってみた。
家具もない、空っぽな部屋のいたるところに、写真が散らばっていた。
どこかの小学校の卒業アルバムに掲載されているような、子供達の写真。
特殊清掃は済んでいるはず。


⑤拾ったメモ帳に殴り書きされていたのは、
私の住所だった。
100円ショップによくある掌サイズのメモ帳。
ページは全てボールペンで真っ黒に塗り潰されていた。
0.5㎜の線で何度も何度も。
唯一判読できたのが、私の住む県と市と町と地番、アパートの名と部屋番。
私の住所。

#納涼ホラー祭り
#恐怖いかがですか


ずんこ様(@jun311gude)企画の参加作品です。
文字数に制限がなく、朗読の台本というカテゴリーでもあったので、画像で投稿しました。

①「家族の喧騒」

②「落ちていたのは」

③「先輩のビデオカメラ」

④「笑」

⑤「地図」

#寺たん

「お寺で納涼怪奇譚2024」様(@teratan_paradox)企画 #寺たん 参加作品です。

1
一枚の写真がある。
どこかの広間。壇上に座る男性の話を聴いているのだろう、座っている男女が部屋いっぱいに並んでいる。その所々に、小学校低学年くらいの子供が数人、こちらにピースをしている。
当時、その場所で百物語がおこなわれていた。
その日、参加者に子供はいなかった。

2
上司は机にあった釘を掴むと、自らの額にその先端をぐりぐりと押しあてた。
突然のことに慌てる職場。
そんな中、込み上げる笑みを我慢するかのような顔がひとり。私は見逃さなかった。
あの人、そういえばさっき、眠たそうにあくびをしていた。昨夜はさぞかし遅くまで起きていたんだろうな。

3
部屋の電気がよく消える。
見ると、毎回電球がゆるんでいる。
この事故物件で起きていることというと、これくらい。
前の住人は、首を吊って亡くなったらしい。
電球を直すたびに思う。
天井に近づく私の顔と向き合うように、故人の顔があったのではないかと。
私の顔を見たいが為に。

4
うだるような暑さもなんのその。
今日も近くの山へ。
日陰が涼しいし、絶好の遊び場。
ただ、ほら穴には近づくなと、大人に言われている。
溢れる好奇心に逆らえず、穴に近づいた。
「おーい!入っちゃダメだぞぉー!」
穴の奥から響くその声は、去年亡くなった祖父のもの。
夏休みの思い出。

5
とあるホテル。
一室だけ、カッターが置かれている。
その部屋に泊まると、無意識にそれを腕にあててしまうらしい。
ならば置かないほうがいいと思うが。
そのカッターの刃は取り除かれているため、大事にはならない。
カッターがないと、割った鏡の破片が使われるので、そうしている。

6
終電間際の電車に乗っていたときのこと。
何気なく車窓を眺めていると、反対側を行く電車とすれ違った。
その車両内の座席に隙間なく、日本人形が並べて置かれていた。
後にも先にも、そんなのを見たのは一度きり。

7
青い空、海、砂浜。
人で賑わう海水浴場で一際異彩を放つ美女。
パラソルの下、オイルで光る白い肌をあらわにうつ伏せで日光浴。
皆が注目するその理由。
背中に浮かびあがる小さな掌の跡。それが日焼けのようにその背を覆いはじめているのを、当の本人は知る由もない。

8
生前の友人から貸してもらい、返しそびれていたラベルのないCDがある。
すすめられた当日に聴いたが、ノイズまみれで耳が痛くなる程だった。
もう一度聴いてみようとすると、その友人の声が流れはじめたので、すぐに止めた。

9
路上放置されていた車の運転席には、男性の遺体。そして助手席や後部座席には、それぞれ三人分の衣服が丁寧に折り畳まれて置かれていた。
まるで家族三人分のような。
男性に家族はいない。

10
鬱蒼とした山の中、公衆電話があった。たまらず緊急用のボタンを押し、受話器に耳をやると繋がったのだと、遭難した男性は言う。
その直後に息をひきとったのだ。
確かに電話は来たが、森の中に公衆電話など無い。
それを口にださなければ、命は助かっていたのか。山の神様は気まぐれだ。

11
女性の乗客がひとり。目的地はだいぶ離れた場所。ずっと後ろを気にしている様子。
小さなトンネルの前で停車するように言った女性は、鞄から一升瓶を取り出すと、中身を車にかけ始めた。
「…だから、僕の車だけ無事にトンネルを出れたんでしょうね」
そのタクシー運転手はそれしか言わない。

12
とある中学校の三階は、完全に封鎖されている。階段には防火シャッター、窓も全てカーテンで閉ざされている。
なのに、二階にいる生徒達曰く、上から確かに自分達と同じような授業の喧騒が聴こえてくるのだという。
関連は不明だが、式典には必ず一学年分程の空席が用意されている。

13
ホテルの廊下に飾られた女性の肖像画。
キレイな人だな、そう感じた。
チェックアウト時、受付に絵のことを聞いた。従業員は頭をかしげる。すると、奥から男性が表れて、あからさまに誤魔化された。帰る背に聴こえたのは、
「振り向いたってことは、気に入ったってことだよな。よかった」

14
葬式を隠し撮りした映像だと思う。
鞄の中から撮られているらしき画角。
喪服の男女の背を映している。
絶えず響く読経に混じって、女性同士のヒソヒソ話が聴こえる。亡くなったであろう人の名前が会話に出てくるのだが。
動画サイトで見たという人が何人かおり、その名前が人によって違う。

15
とある廃屋に友人数人と肝試し。
中は荒らされているが、リビングだけ異様にキレイだ。
思わず、テーブルの席についた。
そこから記憶が途切れている。
気がつくと、みんなと外にいる。
全員少し腹が膨れるほど、満腹感を伴っていた。
以来、食欲がわかない。

#怪異が本当に出る町

「夜行列車」様(@55yakou)が提案された #怪異が本当に出る町 の参加作品です。①〜⑥は #一行怪談 としても投稿しました。全て、同じ町での出来事です。

①視線を感じて、振り向いた先にある家の窓がピシャリと閉まるのだが、ここら一帯は空き家しかないはず。

②あのカーブミラーを見上げると、自分が亡くなる時の顔が映るという噂があるため、通行人はみんな下を向いたまま歩く。

③あれは蛍の光だと誤魔化す、とある御寺の住職。

④天罰がくだるから交番がある必要がないと、平気な顔で被害者は呟く。

⑤読経しなければ渡れない並木道。

⑥行列の絶えない廃屋。

7
駅前に設置された案内地図。
年々、黒く塗り潰される施設や店舗が多くなってきた。
そういった場所は、全て空き地と化している。

8
町に数軒ある空き家の、門扉にある貼紙に描かれたQRコードにアクセスすると、その家で撮影されたと思われる心霊写真が見れてしまう。
その貼紙を誰が何のために用意したのかは誰もわからず。

9
幼稚園児の息子は、小さなブロックでよく遊ぶ。
建物をたくさん作って、自分なりの町を作って楽しんでいる。
少し気味が悪いのは、その小さな作られた町の中に、息子はバラバラにした人形の各部を乱雑に置く。
「それはなに?」と聞くと、
「いつも、おそとにあるやつ」
とだけ。

10
終電を逃した先輩から、徒歩圏内にあるこの家に泊めて欲しいと連絡が来た。
深夜一時五十分。この町では二時以降、外に出られない。
二時までに来るように念を押した。
結局、何年経っても先輩は来ず。
町の写真ばかりが送られてくる。
いまだに彷徨っているのだろうか。

11
深夜二時過ぎ。
外から聴こえてくる子供の泣き声に、
思わず心配になって窓を開けようとするも、
この町のルールを思い出してためらった。
その声は、
そんな自分の心情を察したのか、
ひきつるような笑い声に変わっていた。

12
良い町ですよ。
治安は良いし、家賃は安い。
繁華街にアクセスしやすいのにね。
ただ、夜中二時から四時。
この間、何が聴こえても絶対に窓を開けたり、外を見たりしちゃいけない。
それさえ守れば、大丈夫。

13
衛星写真で検索して見ようとしても、
この町は黒く塗り潰されている。
…ように見えた。
よく見るとその黒は、小さな人の影が無数に折り重なって町を覆っていた。
おそらく、世界で一番巨大な心霊写真ではないだろうか。

14
多数の目撃情報が寄せられたが、
「その女性は宙に浮いて暴れていた」
というものと、
「その女性は宙から伸びる、巨大な手にわしづかみされていた」という、
二つに分かれている。

15
道端に人型の染みが現れたら、必ずお供物をしなければいけず、見かけたら必ず手を合わせなければいけない我が町のルール。

16
この町には神社が三箇所ある。
どれも学校の跡地であり、
過去に「こっくりさん」が原因で廃校となっている。

17
「礼儀をわきまえれば、無事にあの家から出られるよ」
心霊スポットと噂される、あの廃屋から帰ってきた友人はそれしか言わない。
なぜ、全身が切り傷だらけなのか、
一緒に行った人達はいまどこにいるのか、
いっさい話したがらない。


改めて、企画運営関係者の皆様、ありがとうございました!

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