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週4回のお弁当教育の真の意味

息子が通った幼稚園は、週4回お弁当持ちだった。多すぎる……
それが理由で、通わせたい幼稚園からは、除外していた。そんな面倒な幼稚園は行かせたくない。

真っ先に却下したはずだったが、説明会の園長先生の話を聞くと、心を大切にする教育に後ろ髪を引かれた。
息子のためなら、週4回頑張ろう!
そう思い直し、その幼稚園に通い始めたが、思っていた以上にハードだった。

仕事が好きな私は、家事全般ができない。何より料理が苦手だった。
毎朝起きて、小さなお弁当箱を開けると、ため息をつく。小さなスペースが大きな世界に思え、気が遠くなった。何を入れたらいいだろう? 冷凍食品に助けられながら、お弁当を持たせる毎日は、苦痛以外の何ものでもなかった。

息子が小学生になると、腹痛が始まった。
合わない学校生活に適応しようと、無理をしていたのだろう。毎朝苦しむようになった。
腹痛のピークは2年生だった。朝、座り込んで歩けないくらい痛むこともあった。学校まで車で送り、毎日息子が苦しむ姿をどうすることもできず、ただ見守るしかなかった。

ある日、息子を励まそうと、息子が寝てから小さな付箋にメッセージを書いた。その付箋を筆箱の中にそっと忍ばせておいた。
「いい1日になりますように」
帰宅した息子は、「ママ、ありがとう」と柔らかな笑顔を見せた。

それ以来、学校に馴染めない息子を励ましたくて、毎晩、息子が寝た後にメッセージを考えるようになった。前日と同じ文面にならないようにと言葉を選ぶ。

「もういらないよ」
息子がそう言うまで、続けてあげよう。
息子が学校を嫌がらなくなるのを祈りながら、毎日、毎日、付箋にメッセージを書き続けた。
心を込めながら言葉を選んでいると、ふと幼稚園のお弁当の存在が頭に浮かんできた。
お弁当は、親の愛を表すもの。「励まし」だったのだ。

お弁当箱を開けた瞬間、子どもがいちばんに感じ取るのは、「親の存在」なのかもしれない。小さな身体で、外の世界で頑張っているのだ。辛いことを我慢することもあるだろう。

小さな心の揺れを支えられるからこそ、幼稚園の先生方は、毎日のようにお弁当を持たせたかったのだろう。
付箋のメッセージを書き続けながら、幼稚園の「週4回のお弁当教育」の真の意味を理解できた気がした。


#子どものお弁当

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