ゴールド高騰と欲と戦争


まばゆい輝きを放つ金、いわゆるゴールドは、文明の黎明期から人類を魅了してきました。古代エジプトでは、王であるファラオたちが装飾品や宗教の祭具に使いました。金は権力や太陽の象徴であり、腐食しにくい性質から「不滅の金属」と称されてきたのです。

その金の国内相場が爆上がりしています。今月に入って買い取り価格は1グラム当たり1万3800円台に達し、この4年間でほぼ2倍に跳ね上がりました。人々は家に眠るベルトのバックルや仏具、宝飾品などのゴールド製品を探し出し、買い取り店に駆け込んでいます。古代エジプトの時代から5千年の時を超えてもなお、金は人の欲をかき立て、熱狂させてやみません。  

ただ、急騰の理由を思うと手放しでは喜べません。相場を押し上げている一因が、ロシアによるウクライナ侵攻や、イスラエルによるガザ侵攻だからです。経済の先行きが不透明な状況が続けば、安全資産である金に資金が集中し、価格が上がります。「有事の金」と呼ばれるゆえんです。  

沸騰する相場の陰で、戦火が絶えず、多くの命が失われている事実を忘れてはならないでしょう。今この瞬間も悲惨な戦争が続いている現実に、想像力を働かせたいと思います。  

金にちなんで、金字塔という3文字を思い起こしてみます。永遠に曇ることのない金の輝きになぞらえ、後世に残り続ける不滅の偉業を指す言葉です。長引く戦争を一刻も早く終わらせ、犠牲者をなくす―。人々の理性と英知を結集して、平和の実現という金字塔を一刻も早く打ち立てる時ではないでしょうか。

国内の金相場は、1980年代のアフガン侵攻から2020年ぐらいまで、最高でも1グラム6000円台でした。それが、この数年で1万円の天井をいとも簡単に突き破り、一気に倍増したのです。国際情勢がいかに不安定になったかを明確に物語る数字です。金はそもそも価格が乱高下しにくい資産です。長年、金相場をウオッチしてきた私から見ると、少し怖いぐらいです。世界は大丈夫なのかと…。

これで台湾有事でも起きようものなら、さらに異次元の急騰になるのではないでしょうか。もはや恐怖でしかありません。

世界平和の金字塔が奇跡的に建ち、世界から戦争がなくなった時、金の相場は大きく下がるかもしれません。しかし、お金には決して替えられない穏やかな日常が戻り、罪のない人の命が救われます。戦火が希望に変わる、まぶしい歴史の転換点を見たいものです。



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