日本は核融合発電に本腰を入れる時
きょうは未来の発電技術について書きたい。「地上の太陽」とも称される核融合発電のことだ。
地球温暖化を招く二酸化炭素を出さないし、原発のように暴走せず、安全性が高い。原発とは異なり、高レベルの放射性廃棄物も出ない。しかも、燃料は水素で、海から取り出せるため無尽蔵だ。世界では2030年代にも実証発電が始まるとされ、実用化に向けて日本や欧米、中国で研究開発が着実に進んでいる。
核融合は人類の夢の発電技術である。エネルギー政策の主軸の一つに据え、技術開発に手厚い予算を組むべきだ。
私は常々、原発の拡大に力を入れる政府の方針に大きな疑問を持っている。多くの活断層が走る地震大国の日本では、安全に運転し続けられる保証はない。高レベル放射性廃棄物(核のごみ)を地下深くに埋める最終処分場の場所は決まっていない。迷惑施設とされ、場所の選定は難航。国は巨額の交付金というアメで自治体に手を挙げさせ、その結果、地域住民の賛否が割れて分断を招いている。
問題はそれだけではない。原発の使用済み核燃料から取り出したプルトニウムは核兵器の材料になる。たまり続ければ、日本は国際社会から核兵器開発の疑念を抱かれる。プルトニウムがテロ集団などに狙われ、安全保障上のリスクを負う恐れもある。
原発は安全性が担保されず、社会的に受容が難しい。政府の新増設を取りやめ、廃炉する方向にシフトし、核融合発電の実現と普及に大きくかじを切ることが望ましい。
本格的な実用化は2050年代とも言われるが、あと20数年しかない。欧米や中国は巨額の予算を投じて技術開発を加速させている。世界の潮流に乗り遅れぬよう、日本はエネルギー政策を転換する重要な局面を迎えている。