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こっくりさんの呪い

わたしが中学生の頃(約40年前)、女子の間で『こっくりさん』が流行っていた。当時は放課後の教室が開放されていたので、よくみんなが居残って『こっくりさん』をしていた。

わたしはそういった心霊的なものを信じていなかったのであまり好きじゃなかったけど、そこは女子のお付き合い。だから本気で信じているような子たちとはかなり温度差があったと思う。

とにかくその時も誰かが『こっくりさん』をやろうと言い出してわたしも渋々参加することになった。プリントの裏に鳥居の絵や「はい」「いいえ」「分からない」といった言葉や五十音を書いて、五円玉を用意した。

まず、鳥居の下に五円玉を置きみんなの指を五円玉に突き立てる。そしてみんなで「こっくりさん、こっくりさん、こちらにお越しください…」のような感じで始めるのだ。

内心退屈だったわたしは早く終わらないかなぁと思ってやっていたのだけど、友達の一人がその当時好きだった男の子が自分のことを好きかどうか聞くと言い出した。そして「こっくりさん、こっくりさん、○○くんの好きな子は私ですか?」と質問した。
ーーその時わたしの心によからぬいたずら心が湧いてーーわたしはそれとなく指先に力を入れて五円玉を「はい」のほうに誘導した。

「ちょっと動かしてるんちゃうの?」と言われたけど、「そんなことするわけないやん、怖いもん」と誤魔化した。「はい」という答えになった友達は有頂天だった。わたしも一緒になって喜んだふりをしていたけど、だんだんと不安になってきた。

もしかして、告白とかしちゃうんじゃないだろうか?と。

その結果、振られでもしたら友達を傷つけることになるし、下手したらわたしが恨まれることになるかもしれない。「あの時やっぱり動かしたんやろ?」と問い詰められたらどうしよう、と不安は大きくなっていった。

しかし友達は自分から告白するのは嫌だったようで、相手からのアプローチを待っていた。結局中学を卒業するまでその二人には何もなかったし、その男の子は誰とも付き合ったりしなかった。

そして中学を卒業した後はその友達とは違う高校に進学したこともあって、付き合いもなくなった。

今となっては子供時代のささいな話だけど、当時のわたしは真剣にいたずらをしたことがバレたらどうしようと思っていた。相手を傷つけるかもしれないことより、自分が恨まれることのほうが怖かった。自分勝手だったと思う。

今でもその時の自分のやったことを思い出すと、我ながら嫌な奴だなと思い、少し落ち込む。多分相手は覚えてもいないだろうけど。

これってある意味『こっくりさん』の祟りじゃないか?
やっぱり『こっくりさん』は怖い。

#創作大賞2024 #エッセイ部門

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