『聖闘士星矢 the Beginning』感想(ネタバレあり)
4月28日から全国公開された本作。
公開初日から上映回数がびっくりするぐらい少なかったが、遂に地元では上映終了されていた。
しかし、この記事は悲しすぎる。
流石にもう観たい人は観ただろうし、上映が終わってきているので、今回は以前の様なあやふやなものではなく、少し内容に突っ込んだ感想を述べたいと思う。
こんな時代にハリウッドで聖闘士星矢の映画を制作しようだなんてこと自体がもう奇跡みたいなものだと思うし、それなりに力の入った作品に仕上がっていて、子供の頃からのファンとしては満足できたと思う。
ただ、本当に立て付けはごく一般的なハリウッド映画と言う感じで、上手いこと聖闘士星矢の世界観をプラスしたという感じで、まあ聖闘士星矢の要素がなかったとしても成立した様な気はしないでもない。
今回のストーリーは原作で言うと、暗黒聖闘士編の主に一輝戦と、白銀聖闘士あたりの沙織さんが女神として覚悟を決めるところの話を独自の要素・解釈で編集したという感じだった。
尺や予算の都合上仕方ないのだろうが、本作は登場人物が最低限に絞られているし、タイトルに反して聖闘士はたったの3人しか出てこない。
聖衣のクオリティを考えたら使い捨ては非常にむずかしい気もしたが、やはり鎧を着て殴り合う展開を期待していたので、最後の方にちょこっと戦っただけでは、やはり物足りなく感じた。
主人公の星矢の生い立ちや聖闘士になる決意、シエナとの絆については非常に濃密に描かれているのだが、正直な所星矢を悩ませ過ぎている様に感じた。
少しでも登場人物たちに感情移入させようという意図はあったのだろうが、あの手のヒューマンドラマは聖闘士星矢にはあまり相性が良くない様に思う。
そもそも原作の星矢は、そこまで思い悩んだり、葛藤を抱えながら戦うタイプでもなく、スッキリとしたキャラクターである。アニメ版では何だかナヨナヨした部分も時折見せたりするので、どちらかと言うと東映アニメーション側の采配なのかもしれないなあと思ったりした。
確かに原作そのままだとドラマ性も薄いし、キャラクターの濃さでいうと紫龍たちの方が優れているので、あくまで聖闘士星矢というタイトルよろしく星矢を主人公に仕立てるとするならば、映画の様な味付けにするしかないのかもしれない。
それに映画の内容は、明らかに先の展開を見据えて作られているので、もし続編が叶うのだとしたら今回のストーリー・設定は意味があると思う。だが、流石のファンでも擁護できない天界編と同じ様なことをしちゃったなあ、という感は否めないところではある。
実際は天界編より大分面白いのだが、もう少し聖闘士の修行部分は簡略化してしまって、ガンガン戦わせた方が良かった様に思う。
新田真剣佑さんのアクション、星矢としての佇まいはとても素晴らしいというか、これぞ絵になると言った感じなので、非常に見応えがあったと思う。
だからこそ、途中までがほとんど負け展開になってしまっているのは本当に残念で、ラストシーンでより爽快感を得て貰おうという設計なのだとは思うが、あまり上手くいっていなかったなあと思った。
近未来のテクノロジーで聖闘士の力を使ったり、神を殺そうとするというのも、今思えば何だか良く分からない設定だったなあとは思った。
原作の舞台が昭和なので、そのまま落とし込むと更におかしなことにはなるのだが、黄金聖衣を科学的に応用するとかも少し謎だったなあ。
文句ばかり言っているが、本当に新しい聖闘士星矢を製作してくださり、令和に再び新作を観ることができただけでも嬉しいし、ここまで誠実に映像化されているのは本当に感謝しかない。音楽も良かったし。
ただ、やはり聖闘士星矢の華といえば黄金聖闘士なので、この先があれば・・と切に願うばかりなのだが、今回の興行成績ではそれも望み薄なのかなあ・・と思う。
やっぱり、丁寧にやり過ぎたんじゃないかと思う。
それに比べると、90分程度で聖闘士集結から十二宮編をまとめた「Legend of Sanctuary」は本当に凄かったと思う。冒頭のアイオロスvsシュラは、後のCGアニメ版にも、本作にも多大な影響を与えているというか、ぶっちゃけ使いまわしていないか?と思うほどの名シーンだったと思う。
これくらいの勢いで駆け抜けてくれれば良かったなあと思うのだが、ともすればリアルで聖衣を作るなんて無茶なことができなくなるし、そこも予算との兼ね合いだったのかもしれない。自分が思いつくくらいだから、プロのクリエイターだってそうしたかったと思うはずだろうし、やはり賭けに出たみたいな所はあるのだろうなあ。
それぞれのキャラクターの味付けや、ヴァンダー・グラードというオリジナルキャラクターを加えての家族内争いも、車田正美作品ではまあ観られんよなあと思うので、そこもある意味では面白かった。
ただ道中、シエナも前向きにアテナの力と向き合って、それを制御する努力みたいなものが垣間見えても良かったのかなあとは思った。その方が時代にもあっているような気もするし。
色々と細部に原作リスペクトが散りばめられていて、ファンなら「おおっこれは」と思う要素も数多くあったし、初めて聖闘士星矢に触れる人にも普通に内容を楽しめるようになっていた様な気もする・・と個人的には思う・・のだが・・
日本の漫画原作の映像化、というとなかなか厳しい部分もあったのかなあ。。
なんか色々頭の中で整理しようと頑張ったが、書いているうちに自分でも良く分からなくなってきた。