[試合分析レポート⑤]2023.11.16 イタリアリーグ SerieA1 Milano vs Trentino
(画像: 月バレ.com)
イタリアリーグ2023/24が開幕して1か月ほどですが、ミラノはまだ1勝しか挙げられていません。試合はほとんど観れていないので誰が不調だったのかとかは分かりませんが、これから頑張っていってほしいですね。
今回は、第5節のミラノ vs トレンティーノの試合を分析していこうと思います!
以前の投稿では様々な試合の分析を行っているのでぜひ見てみてください
目次はこちら☟
対戦チーム
スタメン
Allianz Milano
我らが Yuki Ishikawa が率いるミラノは、現在イタリアリーグの中堅といったところでしょうか。
昨シーズンは非常に粘り強いプレーを見せてプレーオフ進出、シーズン中無敗だったペルージャに勝ち切るなど素晴らしい活躍でした。
今シーズンはオポジット(OP)を入れ替えて、プレーオフ進出を狙います。
セッター(S) 16番ポッロ
オポジット(OP) 7番レゲルス
アウトサイドヒッター(OH) 1番カジースキ、14番石川
ミドルブロッカー(MB) 8番ロセル、11番ピアノ
リベロ(L) 5番カターニア
Itas Trentino
トレンティーノはイタリアリーグの4強と呼ばれるチームの一つです。
今年もイタリア代表のサイド陣を中心にディフェンス力・アタック力が非常に高いレベルだなと思います。
またミドルブロッカー陣がいつも外国人選手の印象です。
今季はまだ全勝で、非常に調子は良さそうです。
セッター(S) 6番ズベルトリ
オポジット(OP) 11番リヒリツキ
アウトサイドヒッター(OH) 5番ミケレット、15番ラヴィア
ミドルブロッカー(MB) 4番コザメルニク、18番ポドラスチャニン
リベロ(L) 13番ローレンツァーノ
試合結果
MIL(ミラノ) 1-3 TRE(トレンティーノ)
MIL TRE
1st 22 25
2nd 25 21
3rd 19 25
4th 16 25
試合スタッツ
項目別成績
上がミラノ、下がトレンティーノの項目別成績です。
赤字になっているものは、相手チームと比較して成績が良かった数値です。
MIL TRE
サーブ 2.1% 7.4%(+5.4%)
ブロック 17.1% 23.0%(+5.9%)
アタック 32.7% 45.2%(+12.5%)
レセプション 50.0% 66.4%(+16.4%)
ディグ 71.2% 75.9%(+4.7%)
全ての項目でトレンティーノがミラノを上回りました。
気になった項目に関して順番に見ていこうと思います。
項目① サーブ
一見するとそこまで差が無いように見えるサーブですが、トレンティーノの方がサーブ効果のあった本数が多いことが分かります。
下の図を見ていきましょう。
左側がトレンティーノのサーブコース、右側がミラノのサーブコースです。
丸の色は左側はサーブに対するミラノのレセプション評価、右側はトレンティーノのレセプション評価です。(色が濃いほどレセプションが悪い)
トレンティーノのサーブは真ん中左側にとても集中していることが分かります。
この位置はレシーバーとレシーバーの間、特にレセプションが比較的得意ではないカジースキ選手がほとんどのローテーションで位置する場所でもあります。
トレンティーノがいかに集中して相手の弱いゾーンに打っていたかが分かると思います。
項目② アタック
ミラノは石川選手や7番レゲルス選手が多く打っていますが、その効果率はだいぶ低くなっていますね。
対して、トレンティーノもサイド中心に効果率が高く、クイック攻撃もある程度打てていることが分かります。
スロット・テンポ別のトス配分についても見ていきましょう。
左側がミラノで、右側がトレンティーノのトス配分とその決定率です。
トレンティーノはセンターの割合が非常に高いことが分かります。
特にバックアタックで大きく差が出ていることが分かると思います。
今回トレンティーノのセッター(S)・6番ズベルトリは多少レセプションが乱れた状態でもパイプ攻撃(クイックを囮にしたバックアタック)やビック攻撃(セッターに近い位置の早いバックアタック)をガンガン上げていました。さすが代表のセッターだけありますね。
またトレンティーノは、今や石川選手の代名詞となったフェイクセットも多用していて、それをフェイクとしたいわばフェイクトスフェイクアタックも多かったです。
それによってブロッカーがセンターに引き付けられてしまい、レフトやライトのサイド攻撃が多く決まってしまったのかなと思います。
トレンティーノの選手のスパイクコースを見ていきましょう。
これはトレンティーノ・15番ラヴィア選手のレフトからのコンビ攻撃のコースです。
ストレートコースに、しかもブロックタッチ無しで多く決まっていることが分かります。
ほとんどはストレートにブロッカーがいることが多いのですが、ミラノのブロッカー陣がセンターを警戒しすぎて、レフトにトスが上がった時にストレートを締めることができていなかったのだと思います。
ついでに、ミラノのスパイクコースも見てみます。
左側が14番石川選手で、右側が1番カジースキ選手です。
どちらもクロス方向に多く決まっています。
ですが、普段の石川選手はブロックのいないインナーコースに打ち込むことが多いので、そのスパイクが無かったというのはトレンティーノのブロックがいかに強力かということをよく表していると思います。
カジースキ選手もインナーコースは全てブロックに当てた得点になっています。
ブレイクポイント
ミラノのブレイクは、S5ローテで多かったです。
ミドルブロッカー(MB)の8番ロセル選手がサーブのローテですね。
前衛にカジースキ選手・ピアノ選手・レゲルス選手が並ぶので非常にブロックが高くトランジション(スパイクレシーブからの攻撃)がしやすいからだと思います。
逆に、被ブレイクは、S3ローテで多かったです。
カジースキ選手やレゲルス選手が後衛に下がり攻撃力が下がるローテですね。
トレンティーノのブレイクはローテで差があまり見られませんでしたが、S4ローテでブレイクが少なくなっているのが分かります。
被ブレイクはS2ローテが多かったようです。
リヒリツキ選手をブロックされたのもS2ローテだったと思います。
試合全体の評価
ミラノはサーブ自体は良かったが、トレンティーノのレセプションが非常に良く、なかなか崩すことができていない印象でした。
一方で、トレンティーノは集中して前衛サイドを狙ったサーブでミラノのレセプションを若干ながら崩して、高いブロック力でミラノの攻撃を封じていました。
また、トレンティーノはセンター線を多用して相手ブロッカーがセンターに寄ったところで、サイドにトスを振って効果的に得点で来ていたと思います。
逆にミラノは、レセプションが少し乱れていて、トスがサイドに振られていたので、ブロックが完全につきやすくスパイクの効果が低くなったと考えられます。
しかし今回カジースキ選手はブロックアウトが良くできていて、石川選手やレゲルス選手も本来その能力は高いと思います。
今後の試合では、今回少なかったセンターをより使ってサイドからの攻撃も決まりやすくなるようにしたいですが、そのためにはまずカジースキ選手そしてリザーブのメルガレホ選手のレセプションが向上しなければ難しいと思います。
最後に
今回は、トレンティーノ視点での分析が多くなりました。
他にも分析してみたいチームがたくさんあるので、日本人選手のチーム以外も観ていけたらと思います。
次の投稿もぜひ楽しみにしていてください。