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[バレーボール男子日本代表]オリンピックを決めた3つの試合についてまとめました。

(見出し写真: NHKニュース)
こんにちは。無事にオリンピック出場が決まりましたが、しばらく代表選手が見られなくてさみしいという人が多いのではないでしょうか。
次の国際試合は来年5月のネーションズリーグですから、長い期間が空いてしまいますね。

しかし、その大会が終わるとその数か月後にはオリンピックが来てしまいます。
オリンピック出場が決定したチームの監督たちは、残り少ない時間を自チームの強化と相手チームの分析に費やすでしょう。
来年のネーションズリーグでも、あと5か国の出場も決まるので、必死になってデータを取っていることだと思います。

しかし、僕はオリンピックでの試合観戦を楽しむためにもこのデータというのは非常に面白いのではないかと思います。
例えば相手のチームがどんなプレーが得意で誰が上手なのかが分かると、試合の注目すべきポイントを抑えることができますね。
また、この選手はどのコースにスパイクを打つのが得意なのか、ということが分かると、では日本チームはどのように対策してくるのかという観点からも観戦を楽しむことができると思います。

今回は、オリンピック予選(OQT2024)で重要となった、トルコ・セルビア・スロベニア戦をまとめて分析をして「日本代表がどのようなチームなのか」について考えていきたいと思います。

目次はこちら


本記事に出てくるバレーボール用語の解説については以下の記事をご覧ください☟

また、スロベニア戦に関しては試合全体のデータ分析を行ってみたので併せて読んでもらえればうれしいです。


3試合全体のスタッツ

まずは、3つの試合を通じて

・各選手のサーブやスパイクなど項目別成績
・日本のローテーション別種類別ブレイク数・被ブレイク数の合計
・各選手のスパイクコース

について解説していきたいと思います。

①項目別成績

1つ目の図が各選手の項目別成績になります。

3試合の合計スタッツ

3試合とも日本が3-0で勝利したので、計9セットでの数値となります。
順番に見ていきましょう。
項目はサーブ・ブロック・アタック・レセプション・ディグの5つです。


スタッツ項目:サーブ

・サーブ -"Serve"
"All"はその選手が打った総本数です。
そして"Ace"はサーブによる得点、"Effective"は相手のレシーブを乱した時(専門的に言うと「レセプション失敗」という時です)、"Miss"はサーブミスのことをいいます。 "%*"というのは、これらの数値から計算した「サーブ効果率」というものになります。(詳しい説明は「バレーボール用語」の投稿で解説しています)

これを踏まえてみてみると、関田選手のサーブ本数が群を抜いて多いことが分かります。
また後ほど触れると思いますが、現在の日本の強みは関田選手のサーブから始まる「S1ローテ」と呼ばれるローテーションで、攻守のレベルがとても高い事です。

それについてはまた話すとして、"Ace"に注目してみましょう。
高橋藍選手が4本と一番多くなってますね。
サーブ効果率も一番高いのですが、計算式からも分かる通り、"Ace"の本数が多いとそれだけ効果率が高くなりやすいという特徴が出ています。

"Effective"の本数は石川選手が一番多いですね。
普段はもう少しサーブエラーが多いかわりに得点数も多いような気がしますが、今回は比較的ミスが少なく、強烈なサーブを相手レシーバーに打ってレセプションを崩すシーンが多かったと思います。

スタッツ項目:ブロック

・ブロック -"Block"
続いては"Block"の項目を見ていきます。
ブロックの要であるミドルブロッカー(MB)の小野寺選手と高橋選手はブロック本数もブロック得点もとても多いですね。
今回の試合では特にこのブロック力の成長というのが際立っていたのではないかと思います。
特に高橋選手は長期間ケガをしていてプレーを今まであまり見れていませんでしたが、相手の速いクイック攻撃に高確率でワンタッチを取って味方がレシーブしやすいようになっていて、その反応の速さや高さは日本の大きな武器となっていました。

そして、「オポジットキラー」の異名を持つ石川選手もブロック本数最多となっています。
オポジット(OP)はライト側からスパイクを打つことがほとんどなので石川選手・高橋選手が主なブロッカー担当なのですが、石川選手は移動が素早くて手の出し方もきれいなので相手としては目の前に急にブロックが飛び出てくるように感じるみたいです。

スタッツ項目:アタック

・アタック -"Attack"
"Attack"項目からは石川選手がスパイク総本数、決定数ともに最多であることが分かります。
それに対してアタック効果率は高橋選手が一番となっています。石川選手には速いトスができない時にトスが上がることが多くリバウンドを取ったりする場面も多いため少し効果率は下がっていますね。

そして総本数では2位の西田選手もとても高い効果率を示しています。
去年はケガや不調により精度が落ちていたようでしたが、同じポジションの宮浦選手や他のスパイカーの活躍により今回は負担も少なくリラックスしてプレーしている印象がありました。

スパイク面で課題をあげるとすればまだ他国と比べてクイックの本数が少ないことでしょうか。レフトスパイクが1試合だいたい計30本以上であるのに比べて、クイックはだいたい12本程度です。
今まではさらに少なかったのですが、ここ最近その本数が増えてきつつあると思います。
クイック攻撃の決定率は高いなと思っていて、もう少し本数を増やしても問題はなさそうかなと思っています。

スタッツ項目:レセプション

・サーブレシーブ -"Reception"
サーブレシーブは"Reception"と呼ばれていて、スパイクレシーブを指す"Dig"と区別されています。

注目してほしいのが、高橋選手ですね。
レセプション返球率はなんと、72%!
この数値は世界のトップリベロ達と並ぶ、いやそれ以上の数値といっても過言ではありません。
試合によっては80%を超えるときもありますから、まさに「リベロ兼スパイカー」ですね。

今回、山本選手の返球率はあまり高くないですが、そもそも本数がかなり少ないですね。
ほとんどのサーブはレセプションが上手な石川選手と高橋選手が行い、間の処理が難しいサーブは山本選手がレシーブするシーンが多く見られました。
他のチームでは「スパイカーがレセプションする=助走がとりづらくなる」となってしまうのですが、
高橋選手と石川選手はレセプションのリズムのまま助走に入ってそのまま強いスパイクが打てるという強みがあります。
また、後衛でレセプションしたときは、そのまま時間差でバックアタック(このようなBAを「パイプ」と呼びます)を打つことで、相手の意表を突くようなプレーを得意としています。

スタッツ項目:ディグ

・ディグ -"Dig"
レセプションでは数値が低かった山本選手ですが、ディグの精度はとてつもないです。
相手の強烈なスパイクやきわどいコースを狙ったフェイントでも、ただ拾うだけではなくセッターがクイックを上げられるようなAパスを返すことができます。
優秀なリベロがいるからこそ、日本のセッター、スパイカー達が本領を発揮できるのです。

②ブレイク数

ブレイクポイントというのは、2点差以上で25得点以上しなければならないバレーボールにとって重要なものになります。
逆に言えば、「相手よりブレイクポイントを多くとること」がバレーにおける勝利条件になります。
そしてもう一つ重要なのが「どのローテーションでブレイクを取ったか」という事です。
ローテーションはセッターがバックライトの位置の時を「S1」としてフロントライトにいる時を「S2」、という風に時計回りに数字が増えていきます。

ただ実際の試合ではローテーションは反時計回りに行われるので
S1→S6→S5→S4…という風になっていきます。

実際の日本代表の選手で考えてみると分かりやすいですね。
S1:関田選手がサーブ↓
S6:石川選手がサーブ↓
S5:高橋健太郎選手がサーブ↓
S4:西田選手がサーブ↓
S3:高橋藍選手がサーブ↓
S2:小野寺選手がサーブ↓

そしてそれぞれで前衛のメンバーが変わっていきます。
例えば、S1ローテでは前衛が石川、高橋健、西田の3人です。
この3人はブロックもよく、攻撃力も非常に高いですね。
そのため日本代表というのはこのS1ローテを特に強みとしています。

逆に、レセプションのフォーメーションもローテごとで変わる必要があるため、ブレイクされやすいローテなども存在します。

これを踏まえると点を取るためには、「自チームが強いローテで相手が弱いローテを当てる」ことと「自チームが弱いローテの時にいかに失点を減らすか」というのが重要であることが分かると思います。

説明が長くなりましたが、今回のブレイクポイントについて見ていきましょう。

・ブレイクポイント -"Break"

上の表がブレイクポイントですが、圧倒的にS1ローテが多くなっています
特に多いのがアタックによるブレイクポイントですね。
S1ローテはサーブが関田選手、前衛が西田選手・高橋健選手・石川選手となっています。
まず関田選手のサーブはとても安定していて相手スパイカーをけん制することを狙いとしています。
そして前衛はブロックが良い3人後衛にはディフェンス力の高い山本選手・高橋藍選手・関田選手がいるので高確率で相手の攻撃を拾うことができます。
そして万全の状態で石川選手のカウンターをぶつけることができるというわけです。

・被ブレイクポイント -"Broken"

逆にS1ローテでは失点することも多かったようですね。
S1ローテというのはセッターが定位置につくのに1番難しい位置から走らなければならず、またライトからの攻撃が得意なオポジット(OP)がレフト側から、レフトからの攻撃が得意なアウトサイドヒッター(OH)がライト側から打たなければなりません。
このS1ローテはブレイクも多く取れるが失点もしやすい。リスクのあるローテーションと言えそうですね。
また、ブレイクの種類に注目してみると、ブロックによる被ブレイクが少ないことが分かります。
日本は身長が低く、本来ならもっと被ブロックが増えてもおかしくはないのですが、それをスパイクスキルで克服できているようですね。

ブレイクポイントの表


③スパイクコース

・石川選手のスパイクコース(前衛レフトからのスパイク)

この図はレフト側から早いトスを打ったスパイクが、どのコースに打たれたかを示しています。
・薄い青・・・ブロックに触られなかったもの
・濃い大きい青・・・ブロックタッチがあったもの
・オレンジ・・・ブロックタッチなしで得点したもの
・大きい赤・・・ブロックタッチがあって得点したもの
・白・・・スパイクミスとなったもの
という見方です。

クロスコースに多くスパイクを打っていることが分かります。
また、コート中央らへんにフェイントをして得点していることも分かりますね。
石川選手の特徴として、スパイクの選択肢が多いというのがよく挙げられます。強打だけではなく、軟打も混ぜることで効率よく得点しています。

・高橋選手(前衛レフトからのスパイク)

石川選手と比較してみると、ストレートコースにもスパイクが見られます。
また、対角線方向のスパイクよりもコート中央奥に打つスパイクが多いことも分かります。

こう見ると、選手ごとに得意なスパイクコースや種類があるんだなーと思いますね。
下の図は、左側が西田選手で、右側は今年7月ネーションズリーグでの宮浦選手のスパイクコース(ライトからのスパイク)です。
宮浦選手はストレート方向が多いのに対して、西田選手はクロス方向が多いように見えます。
もし相手がこのような分析結果が出ていた場合、宮浦選手に対してはストレート方向にブロッカーを付けて、西田選手に対してはクロス方向にブロッカーを付けるように指示が出るかもしれません。

まとめ

今回の試合では日本代表は攻守のレベルがとても高く連携がよく取れていて、特にS1ローテ―ションで多く得点していることが分かりました。
また、ミドルブロッカー(MB)によるブロックがちゃんと機能していて海外選手の高い攻撃に対しても通用していることが分かりました。

課題としては、クイック攻撃の本数をさらに増やしていく必要があるかなと思います。

最後に

またしてもずいぶん長い記事になってしまいました。

できるだけ伝えたい事をまとめたり削っているつもりですが、まだまだ見やすいものとは言えないですね。もっと工夫していけるように頑張ります。

今回は、大会のメイン試合を通じて代表の特徴について考察しましたが、いかがだったでしょうか。
オリンピックまであと半年以上あるので、どんな国が出場するのか、日本代表が勝つためにはどのようなことがポイントになってくるか等を投稿してみようかなと考えてます。
国別の紹介とかしてみるのもよさそうですね。

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