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ベテラン記者がベソスの許可を得て記した最高のノンフィクション

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Hey! What's up people~!?  鎌田です。今回も編集者目線で気になった本をご紹介させていただきたいと思います。今回はこちら「ジェフ・ベゾス果てなき野望」です。

これまでAmazonで本を買ったり売ったりしてきた中でAmazonの経営についてはさほど興味を傾けておりませんでした。私は株価対策で収益率に注目してきたからでAmazonの場合は、本書が発売された当時である2014年1月のアマゾンの時価総額は1814億ドル(約19兆円)、従業員8万8400人と、どんな基準からみても世界的大企業です。

ところがその営業利益率は非常に低く、このところ1%を上下しています。マイクロソフトの5%、アップルの9%など巨大テクノロジー企業の営業利益率と比較にならないのはもちろん、同じ小売業のウォルマートの6%、ターゲットの7%に比べても格段に低いんです。

しかし、アマゾンの株価は2008年1月に3ドルの安値を付けて以降、一本調子で上がり続け、現在は400ドル前後になっています。これほど低い利益率でなぜ株価が5年で10倍以上になるのでしょうか?

アマゾン・ドットコムのCEO(最高経営責任者)、ジェフ・ベゾスはクリスマス商戦を目前にして、自動操縦のミニヘリコプター(ドローン)で空中から商品を配達する「プライム・エア ー」という構想をテレビ番組の中で公開しました。

もちろん法的規制を考えただけでも実用化されることは当分なさそうですが、アマゾンが公開した動画は、あっという間に1300万回も再生されました。

一見破天荒なアイデアをブルドーザーのようなパワーで最後には実現してしまうことで知られているベゾスのこと、そのうち本当に玄関にアマゾンの配達ドローンが飛んでくるようになるのかもしれませんね。

アマゾン・ドットコムはいろいろな意味で型破り、かつ謎が多い企業です。書籍、おもちゃ、カメラ、電気洗濯機をオンラインで売り、キンドルタブレットを独自に製造販売する一方で、世界最大級のクラウド・コンピューティング・サービスの提供者でもあります。

最近はIBMを退けてCIA(アメリカ中央情報局)から大規模な情報共有システムの構築を受注して注目されていましたし、アマゾンはなぜ一見無関係とも見える分野に貪欲に進出するのでしょうか?動向が常に注目を集めている。ジェフ・ベゾスとはいったいどういう人物なのか?

この本を購入したのは5年以上前で、同時期にベゾスについて書かれた「ワンクリック」をkindleで購入して読んだばかりでしたので個人的には結構な部分で内容がかぶっていてあまり新鮮な感じはありませんでした。

わかっているのはベゾスという人物どんなに非現実的で、実現不可能とも思えるようなアイデアであったとしても、必要とあれば全力を傾けることができる存在だということです。

私も色々な企業の経営に関わる者として、私もそうありたいとは思いますが本書で描かれるアマゾンという企業と、ジェフ・ベゾスという経営者とは方向性が違うとも感じました。

本書は、ベゾスやアマゾンの経営手法に学ぼうというような分かりやすいビジネス書ではないですね。起業から今までの出来事を細部にいたるまで描写されており、まとめ的な期待はしない方が無難です。

先ほど私が共感しかねるといった部分が2000年前後のドットコム・バブル期に盛んだった近視眼的ともいえる行動とかブラック企業さながらに社員に限界まで働くことを要求する姿や要求をのまない相手に対する超攻撃的な姿勢ですね。

今の時代ですからワークライフバランスを考えたいものです。そもそも脳が疲れているときはロクなアイデアはだないものだし良質のアウトプットもできない。それなら寝ていた方がマシだと思います。

そして税制や独占禁止法などのルールに対するグレーな姿勢などは社会貢献という意味で企業としてどうなんだろうと疑問を持たざるを得ませんでした。

しかしながら、こうした強引なスタイルは、アマゾンという異質な存在を正しく理解し、そこから何らかの教訓を得るために必要なものだと思いました。プロローグの中に、とても印象に残る場面が描かれています。

本書を引用しますと

私の本をテーマとした1時間の面談が終わりにさしかかったころ、ベゾスが体を乗りだし、こう尋ねてきました。

そしてベソスがインタビューワである本書の著者にこう言ったそうです。

講釈の誤りにはどう対処するつもりなのですか?

講釈の誤りですって!? このめっちゃ頭がいい宇宙人のような上司から想定外の質問をされて、冷や汗をかいたアマゾン社員はここ20年で何人もいたはずです。

こんな質問されたらやばいですね。私もスマートな対応できないかもしれません。

ベゾスによると、講釈の誤りとは2007年に出版されたナシーム・ニコラス・タレブ著の「ブラック・スワン」という書籍に登場した言葉で、複雑な現実には何かと講釈を並べて耳当たりはいいんだけど簡略化しすぎた話にしてしまう人間の傾向を指摘しているのです。

ちなみに私の経営する会社でも「ブラック・スワン」は必読書指定をしておりました。ブラックスワンの著者であるタレブは言います。

人間は脳の限界により、関係のない事実や出来事のあいだに因果関係を見いだし、わかりやすい講釈をこしらえてしまう傾向がある。そのように講釈を並べることで、人間は、現実世界の偶然性や経験という混沌、物事の成否にかかわる運・不運といういまわしい要素から目を背けるのだ。

また共感できる部分はアマゾンが始めたクラウド事業、アマゾンウェブサービスは、い今日多くのインターネット企業が活用しているわけですが、それらの製品がどのように開発されたのかについて簡単に説明できるわけではないとベゾスは感じていて次のように述べています。

社内でアイデアが育まれるプロセスというのは意外にぐちゃぐちゃなもので、頭に電球がともる瞬間などありません。

アマゾンの歴史を単純化して語ると、現実と異なって、すべてが明快な印象になってしまうのではないかとベゾスは心配したわけです。本書を読む限りでは、ベゾスの心配は杞憂でした。

これは複数の要因が複雑に絡み合って、時には運も作用しながらその結果として生まれたのが今日のアマゾンの姿であることを明らかにしているのです。

本書ではある決断が下された時に、アマゾンやベゾスはどのような状況にあったのか、そのとき何を考えていたのか、そしてその決断が成功あるいは失敗につながったのにはどのような要素が影響していたのかなどを理解することができると思います。

非常に誠実な書籍であるとともに、ビジネスパーソンにとって本質を捉えているという意味においてとても参考になる内容だと思います。

それではまたお会いしましょう!

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言の葉を綴じる杜
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