「儲けるから儲かるへ」循環で完成する地球と経済の未来
先進国のひとつである日本に住む私たちは、高度成長期を経験し、モノに溢あふれ、とり巻くテクノロジーも進化を続けています。
そうした中で生きていると、つい錯覚してしまうのです。
これからも経済は成長し続け、さらに発展をし続けていくような漠然ばくぜんとした感覚を持ってしまいがちです。
しかし、実際には資本家がどれだけ投資しても、私たちの生きる社会は、より多くの人々が幸せになるための「豊かさ」が増えているわけではないのです。
では、私たちは、どこを「目指す」べきなのでしょうか?
そもそも「目指す」とはゴールであり、現実にはそれも一つのマイルストーンでしかないのです。ゴールした先には、さらにハードルの上がった次のゴールがあり、今度はそのゴールへ向けてラットレースが始まるのです。
終わりの見えない先には何があるというのでしょうか。それとも私たちは適切な目指す場所を間違えてゴールを見失っているのでしょうか。
そのヒントを与えてくれるのが、2021年9月17日に発売された『儲けるから儲かるへ』です。著者である会宝産業の近藤典彦氏は、困難に立ち向かう経営に必要なのは失敗を恐れない行動力と行動を裏打ちするビジョンについて本書の中で論じます。
近藤氏は、「静脈産業」の観点から、循環で完成する地球と経済の未来を提言しています。著書の中で「孫の笑顔を見て決意した」とありましたが、人が大きな決意する時に、ありふれた幸せの中で真実と守るべき未来を考えて覚悟を持てるのかもしれないと思いました。
本書では、「環境」「成長」「経済」をキーワードに、持続可能な環境の中で、誰もが利益を得ながら成長し続ける経済として「環成経」というビジネスの形を提言されています。
私は資本主義が限界に来ているにも関わらず、衰えることのない成長でどうにかなるであろう、と考えることについて疑問がありました。
この「成長」というのは「信仰」のように甘く、危険な麻薬です。身を委ねることは楽なことですし、本質や潮流というものから目を背けることと同義です。
しかし、本書ではその事実を鋭く指摘していることが、読者の関心を惹くところではないかと思いました。「環成経」とは、自分中心のエゴシステムから、「未来・地球・まず相手」のエコシステムへの価値のトランスフォーメーションなのです。
近藤氏が唱える「経済の未来」とは一体どのようなものなのか?著者渾身のメッセージが溢れており、注目を集める本書の一部をご紹介します。
利他の心を考える(P161)
冒頭で人が大きな決断をするときに、ありふれた幸せの中で覚悟を決めるという話をしましたが、大きな知恵を学ぶときも実にシンプルなのです。
そこで著者の母の言葉が回想として続きます。この言葉は実に「真理」をついていると感じました。ここは是非、本書を読んで体験して欲しいと思います。
本書のタイトルにもなっている「儲けるから儲かるへ」。パッと見ると禅問答のようにも感じますが、つまりは利他の心です。
これからの社会がどうあるべきか、そのヒントについて本書は多くの示唆を与えてくれています。本書は多くのビジネスパーソンに、これから持つべき価値観と行動方針を与えてくれることでしょう。