アジアの熱帯の国々における森林から見た地球環境の真実が見えてくる!
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Hey! What's up people~!? 鎌田です。それでは編集者目線で気になった本をあなたにご紹介させていただきたいと思います。今回はこちら「コーヒー豆を追いかけて~地球が抱える問題が熱帯雨林で見えてくる」です。
コーヒー豆は、熱帯や亜熱帯で広く栽培されており、世界じゅうに輸出され、コーヒーとして飲まれたり、スイーツなどに使われたりしています。
だからコーヒー豆のことを調べると、地球上のさまざまな問題が見えてきたと著者は主張します。
私も農業生産法人を立ち上げて、環境に最も負荷を与えている仕事だと知り、恩返しをするために現在は環境のお仕事もさせていただいております。
著者は熱帯林に何度も足を運び、森のようすや、そこに生きる人たちの暮らしを研究して、調査や研究のようすを紹介しながらわかりやすく書いてくれています。
第1章はコーヒーと人間の長い歴史を5回にわたって分かりやすく説明されており、第2章にコーヒー豆の豆知識が楽しく書かれています。
第3章は飲料としてのコーヒーがもつポテンシャルを紹介しており、第4章から、本書の狙いであろう熱帯雨林と環境問題について、どのような問題があるのか書かれていました。
ここでは本来の珈琲の話ではなく、珈琲を起点にした環境の変化についての話を続けます。私たちは珈琲を飲むときに、その香りや味に癒されていますが、環境にも影響を与えていることを考えながら感謝していただきましょう。
少し意識の高い人なんかだと、プラスティック・フリーのお店で珈琲を飲んだりしているのかもしれませんが、そんなことで問題の本質は変わりません。私たちは地球から石油を取り出して生活しています。石油を用途に分けて精製する過程でプラスティックは生まれます。
つまり、プラスティックの使用を辞めると、その材料があまってくるから、私たちの知らないところで何かに生まれ変わり、誰かが美味しい思いをしているのです。
だからといって、何もしないよりは良いと思っていて、ビニール袋の有料化も賛成ですし、プラスティック・フリーの流れは新たなビジネスも生まれるでしょう。産業構造の変化も起こるかもしれません。
私はイチゴの産地化の依頼を受けたときに、溶液栽培を考えたときに発泡スチロール容器の導入を検討しました。この時からの付き合いで、ある大阪の発泡スチロール・メーカーと懇意にしておりまして、担当者から業界動向について伺うのですが、先ほども申し上げたように、需要は減るどころか増えているのが現実だそうです。
環境に負荷を与えないために私たちができることはなんでしょうか?珈琲を飲むのを辞めますか?これだと先ほどのプラスティックと同じで別の何かの需要があがるだけで、例えばそれが紅茶であってもやっぱりどこかの自然が破壊されていくのです。
さて、世界的な珈琲の需要増に応えるために熱帯林が切りひらかれると、森にすむ動物たちが暮らす場所がせまくなってしまいます。それが原因で森から出てきた動物たちが、農地をふみあらしたり、農作物を食べてしまったりして、人間との衝突が起こることも少なくありません。
日本にも獣害問題がありますが、本質が全く違っていて日本における問題は山と里との境界線が曖昧になったことが原因だと思います。全国各地均一な理由ではないと思いますが、少なくとも私が農地開発した地方はそういった原因がありました。
仲間が増えて山の食べ物が足りなくなったから里に下りてくるというフローは起こり得ません。山の食べ物は豊かなままですし、自然の動物というのは食べ物が少なくなれば、自然に個体数を減らす自助作用が働くのです。これは猟師として山に入って観察していてもよくわかる変化です。
こうした変化は急激に環境が変わってしまった熱帯雨林では事情が違います。インドネシアでは、森から出てきたスマトラゾウが畑のなかを歩きまわり、コーヒーの木をだめにしてしまったり、バナナなどを食べてしまったり、人間に危害をくわえたりすることがあるといいます。
困りはてた人びとが毒を使って、ゾウを殺してしまったという話も耳にしました。そもそも動物たちは森のなかで、人間は村や町で、たがいにほどよい距離をたもちながら暮らしていたのです。
それが人間の勝手な都合で、熱帯林を切りひらいたことで、動物たちと人びとが近づきすぎてしまいました。
動物と人間の衝突が起こらないように、野生のゾウを飼いならして、農園をパトロールしているところがあります。ほかのゾウや動物がむやみに村に入ってこないように、飼いならしたパトロールのために飼いならされたスマトラゾウゾウの力をかりて防いでいるのです。
なんだかなぁと思うのですが、パトロールをはじめてから、農地があらされたり、民家がこわされたりする被害はずっと少なくなったそうです。
もう一つ大きな問題があります。それは熱帯林がうしなわれたことが原因の地球温暖化です。
二酸化炭素は、温室効果ガスのひとつです。温室効果ガスは大気中にとどまって、地球から外に出ていく赤外線という目に見えない光をつかまえて、ふたたび地球にもどす働きをします。地表にもどってきた赤外線は大気をあたためるから、生物は快適に生きられるのです。
ところが近年は、温室効果ガスがふえすぎて、地球全体に熱がこもるようになりました。氷河がとけて海面が上昇したり、異常気象が発生したりと、自然のバランスがくずれて問題になっています。世界じゅうで二酸化炭素がふえている原因の二十パーセント近くは、森林の減少だといわれています。
植物は光合成をするときに二酸化炭素を吸収しますが、樹木が次つぎに切りたおされると、吸収される量がへってしまいます。それで、地球全体の二酸化炭素の量がふえてしまっているというのです。
地球温暖化や気候変動の問題に取りくむために、世界の国ぐにが集まって、議論が交わされています。一九九二年に気候変動枠組条約が採択されてから、先進国と途上国がいっしょになって、温室効果ガス をへらすにはどうしたらよいのかを話しあうようになりました。
日本は、政府開発援助(ODA)のひとつとして、インドネシアなどで森林を守るプロジェクトなどもおこなっており、私もアグリ・コンサルタントとして参加させていただきました。こうした国際協力を通じて、温室効果ガスをへらすことをめざしているのです。
熱帯林の減少は、地球温暖化や気候変動にとても大きな影響をあたえます。そこで、気候変動枠組条約では、途上国が森林を守る活動をすると国際社会から利益を得られるしくみがつくられました。この取り組みはREDD+といって、注目されています。
熱帯林を切りひらいて農地にするより、森を守るほうが経済的にゆたかになるようにすることで、森林の破壊と地球温暖化を食いとめることが目的です。
REDD+は、残されている森林がこれ以上破壊されないように守ったり、植林をして森林の面積をふやしたりして、地球全体の気候変動をゆるやかにすることをめざしています。
もちろん、熱帯でおこなわれる農業や林業のすべてが、森林破壊につながっているわけではありません。しかし、ベトナムのコーヒー農園、インドネシアのアブラヤシ農園や紙をつくる樹木の植林地のように、うしなわれたり、破壊されたりしている熱帯林があることもたしかです。
ベトナムの大規模なコーヒー農園と同じように、アブラヤシ農園ではほかの樹木を一緒に栽培していません。
そのような農園では、熱帯林にすんでいた動物や植物は生きられないのです。いったんアブラヤシ農園になってしまった森を、もとのゆたかな森にもどすことは、かんたんなことではありません。
そして、ゆたかな森を切りひらいた農地でつくられたものは、おもに先進国に輸出されています。わたしたちが珈琲を飲んだり、スナック菓子を食べたり、洗剤や紙を使ったりするときには、このような問題があることに気をむけたり、どうしたら熱帯林を守れ、そこにすむ動物と人びとがともに生きていけるのかを考えたりすることが大切なのです。
本書の第5章では熱帯雨林を保っていくために、この定義された問題に対して、どのような解決方法があるか著者は現地でフィールドワークを通じて現地の人と近い視点で述べられています。
第6章では、そこで働く人の視点から「農民たちの生活」というレベルまで掘り下げて珈琲という商材で生活をしている人たちを取り上げて、第7章でフェアトレードの実態について現地の視点から、しっかりと調査されていました。
最終章である第8章でプロジェクトについての紹介がされており、コーヒーでみんなが幸せになるために私たちはなにをすべきかを伝えてくれていました。
コーヒーで癒された私たちがすべきことは環境への貢献だと知ることができる良書としておススメです。
それではまたお会いしましょう!
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