桜に男一生の夢と命を注いだ言葉には深い愛と祈りと哲学に満たされている
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Hey! What's up people~!? 鎌田です。それでは編集者目線で気になった本をご紹介させていただきたいと思います。
今回はこちら、桜のほほえみ「桜守のはなし」です。
日本を代表する花の木はと問われたら、皆さんは、きっと桜の木をあげるのではないでしょうか。
別れと出会いを象徴してきた桜の木。
それほど知られていて親しんできた桜は日本人なら誰しもの思い出にも、桜の花はきっと一番強く深く結びついているのではないでしょうか。
それなのに桜ほど、私たちがなにも知らないといっていい花や木はないのかもしれませんね。私たちのよく知っている桜というのは、春の満開の桜でしょう。
しかし、花が散ったあとについては、誰もほとんどなにも知らないと言っていいのも桜ですよね。たいていの人は、桜をみるのは1年のうちで、満開のときの5日前後ではないでしょうか。
しかし、残りの360日が桜にとっては大切なんです。
私は農業生産法人を経営している時に自社で農薬なども扱っていた経緯もあって、樹木医の肩書も持っていたりもします。
緑のお仕事というやつですね。すると自治体からの依頼で桜の木のメンテナスを請け負うわけですが、この仕事は桜が散って芽がでてからが、1年のはじまりになりとなります。
桜守とは、その名のとおり、桜を守る人のことです。
その桜守の聞き書に、写真を添えてつくられた絵本ですが、京都弁のやわらかな語りのせいでしょうか、一つ一つの言葉が、水琴窟のようにきれいに響きます。
そんな佐野藤右衛門さんの言葉を3つ、ご紹介させていただきます。
職人さんの視点から見た桜は世界が違っているようで感じ方が素敵ですね。
ムクドリのたべた桜の実が糞にまじり土におちる。うまいこといくと、そこに新しい桜がうまれるわけです。
桜は、親木と種がおなじ木になることはまずありません。
と佐野藤右衛門さんはいいます。
そもそも種から育つ桜は、どれだけあると思いますか?たったの3種です。山桜、大島桜、彼岸桜です。
染井吉野や里桜のように種で残せない桜を残すには、人間が「接ぎ木」をしてやる必要があるんです。
このように桜は守り、育て、継いでやらないと、絶えてしまう木なんです。
職人さんの話す日本語は、とてつもない初々しさをのこす言葉であることが少なくありません。
先ほども農業生産法人の話をしましたが、酒蔵の経営もさせていただくことになって、南部から杜氏を招聘して、新しいお酒を醸したその年に、二回りも年齢の違う父の背中に似た杜氏と桜の下で新酒を酌み交わしました。
桜の花が乱れ咲く向こう側には、酒蔵の黒い瓦屋根と白壁がひときわ鮮やかに輝いていたのが強く記憶に残っています。
この本の職人も同じです。美学があるから美しい言葉となって発せられるのだと思うのです。
本書は「こんな言いまわしがあるんだ」と、いまの世代にこそ伝えたい、初々しい日本語のつまった本でもあります。
是非読んでみてください!
それではまたお会いしましょう!