今は既存事業が好調で成長戦略を描く企業の収益の多角化に最適
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Hey! What's up people~!? 鎌田です。それでは編集者目線で気になった本をあなたにご紹介させていただきたいと思います。
今回はこちら、2019年3月の発売以来、「中小企業経営」カテゴリ1位に累計で30日以上もランクインするという偉業を達成した先行きの見えない時代にふさわしい一冊。「中小企業の「ストックビジネス」参入バイブル」です。
売上が安定するビジネスをつくりたいという気持ちは、ほとんどの会社を経営する者にとって切実な願いだと思います。
たとえ売上が急減しても、固定費である人件費やオフィス・店舗の賃料は毎月必ず支払わなければなりません。売上が事業計画から未達成の状態が続くときには、法人口座の預金残高を見ると胃が痛む経験をお持ちだと思います。
さらに悪化してくると、月末の資金繰りも不安になり、夜もぐっすり寝られなくなります。
「なんでこんなに大変なことをやっているのだろう」と、誰にも相談できず、ひとり孤独感にさいなまれることもあるでしょう。
私も経営者の一人として様々な会社の運営に関わってきた中で、期が変わるごとに事業計画は立てるものの、またゼロベースで明確な自信を持てないまま日々会社を経営に当たってきました。
いま世界は、全ての人にとって新型コロナウイルス感染予防及び拡散防止による新しい生き方を模索するなかで、経済的にも大きな打撃を受ける分野も多く、大変な時代です。
特に経営者にとっては、会社を順調に経営していくことが難しい時代になりました。急激な人口減少、少子高齢化による地方の衰退、その影響で土地価格が下落、アベノミクスの影で生活保護受給者も増えているといいます。
そこに追い打ちをかけるように、インターネット・IT革新やグローバル化の大波が既存産業を飲み込もうとしています。10年後の日本はどうなっているのでしょうか? いまや来年ですら高い精度で予測するのは難しいでしょう。
米国ではGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの頭文字を取った造語)と呼ばれるようなIT企業が経済をリードしています。一方、日本は昔と大きく変わらない 大企業がいまだに時価総額ランキングの上位にいます。
つまり、新しい企業が全然育ってきていないのです。政府も起業を促すような政策をいろいろと実施していますが、結果は見ての通りで、いまや会社は1円でつくれる時代です。
しかしこれを、継続するのは本当に難しいことなのです。戦後の高度経済成長時代は復興需要と人口増加ボーナスによって、とにかく頑張っていれば多くの人が成功できたのです。
ところが、バブル崩壊以降の「失われた20年」といわれていたの間に必要な「自己変革」を怠り、2011年の人口減少の始まりとともに、いよいよ下り坂をゆっくりと転げ落ち始めているのです。
もちろん、そういったなかで気を吐いている事業もたくさんありますが、みんながみんな成功できるような時代ではないことは明らかです。
本書からの引用になりますが、ダイヤモンド・ザイが集計した「連続増収増益株ベスト5 (2017年度版)」によると、6年以上連続して増収増益を達成できている日本の上場企業は、約3600社中でたった110社しかなかったそうです。
これは全体のわずか3%ということになります。ということは、残りの9%企業は5年以内の期間しか右肩上がりに成長できていないわけです。
これは私自身において、さまざまな上場企業の成長戦略室や経営企画室の経験でも実感しています。こうした上場企業でさえこんな状態ですから、中小企業はさらに厳しいと思われます。
しかし、このわずか3%しかない増収増益を続ける上場企業には、ある共通する特徴があります。それが本書で提案されている「ストックビジネス?継続的な売上が期待できるビジネス」です。
増収増益を長期間続けている安定成長企業の多くは、このストックビジネスを持っていたのです。そして、このストックビジネスこそが、いまのような不確実性が高い時代に最も必要なビジネスモデルでして、上場企業の決算資料などでも、最近は「ストックビジネス」の文字を多く見かけるようになってきました。
IT企業では「サブスクリプションビジネス」と呼ばれていますが、これもストックビジネスの一種です。そして、上場企業や一部のIT先進企業ばかりではなく、日本の屋台骨である中小企業こそが、このストックビジネスを理解し、自社のビジネスに取り入れ、景気が多少変動してもしっかり安定経営できる仕組みを持つべきです。
しかし、実際にはどうやって導入すればいいのでしょうか?
本書では、著者の経験をベースにした中小企業でも実践できる「ストックビジネス参入法」が紹介されています。
内容はビジネススクールの教授が書いたような学術書ではなく、さまざまな経営現場での知見をまとめたエッセンスとなっておりまして、ストックビジネスに参入する方法は大きく分けて2種類あります。
一つ目は、社内のリソースを活用して自社事業内でストック化や新規事業の立ち上げを行う方法が一般的です。
二つ目は、投資やM&Aによって社外リソースを一気に獲得することで低リスクで素早く参入する方法です。
本書では、おススメの中小企業における経営戦略として、二つ目の社外リソースを獲得する投資やM&Aによる参入法が紹介されており、その理由として、経営リソースやスピードに限界がある中小企業は、必ずしもすべての事業を自社で立ち上げる必要はないと考えるからだそうです。
皆さんが現在の自社事業を軌道に乗せるために、これまで費やした労力や時間を思い出してみてください。大変な苦労があったのではないでしょうか? それに比べて、「投資・M&A」で社外リソースを獲得して、一気に参入できる方法は魅力的に感じられるはずです。
一方で、投資やM&Aと聞くと、リスクが高いと感じる方もいるかもしれません。
しかし、成功が不確実な新規事業の立ち上げとは異なり、投資・M&Aでは実際に立ち上がっているビジネスを自分の目で確認しながら参入できるのです。「ビジネスの計画」に投資するのではなく、すでに「稼働中のビジネス」に投資するわけですから、確実性はかなり高いものです。
とくに、既存事業がいまは好調だけれども、将来に不安がある企業の収益の多角化に最適です。
そうした特性もあり、本書は、安定収益・安定経営を目指す経営者や経営幹部の方々、収益の柱を複数つくりたいと考えている方にとって、非常に参考になる内容だと思います。
大企業の経営戦略としてすっかり定着した投資・M&Aを先進的に取り入れながら成長したい中小企業にも最適です。
もちろん、すべての会社に万能な手法は存在しませんので、本書では各参入法を比較しながら、メリット・デメリットを詳しく解説することで、自社への適合性を客観的に評価していただけるよう工夫しました。
さらに、大手企業のストックビジネス成功事例も複数取り上げていますので、ストックビジネス自体に関心のある方や、経営学部の学生の方にもおススメの一冊です。
それではまたお会いしましょう!
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