お笑い芸人の話 第1話
第1話
僕は幼い頃からお笑い番組が大好きだった。テレビで有名な番組などは必ずエアチェックしている。自分で言うのも何だが自分にはお笑いのセンスがあると感じている。大喜利場番組などを見ていても面白い回答がポンポンと浮かんでくる。テレビの大喜利番組に実際に投稿して賞品をもっらたりしたことも結構ある。そんなお笑いのセンスには自信がある僕ではあったが、実際の僕はと言うと、友達も少なくクラスでは目立たない暗い奴だと思われていた。しかしダウンタウンの松本さんが成功したことで明るく人好きのするタイプではなくボソボソと喋るタイプの陰キャの人間であったとしても成功できる世界であることは証明されているので、僕は卒業したらお笑いの養成所のNSCに入学したいと本気で考えていた。そのことを担任の先生に話すと、「辞めておけ。お前みたいに暗くて大人しい奴が入ったって成功できる世界じゃないぞ。そんな甘いものじゃないから前向きに大学へ進学することを考えろ。」と言われた。しかし僕は自分のお笑いのセンスには自信があったので、「たとえ今暗かったとしても在学中に明るい人好きのする人間になってみせます。」と強気な態度に出て、担任の先生の反対を押し切って卒業後は本当にNSCへ入学した。
僕はどうしても漫才がしたかったので数少ない友達の河野君を僕のツッコミになってくれないかと誘って入学した。高野君はあまり成績も良くなくて、卒業しても大学には行けそうにも無いし、就職するより他無かったので、お笑いで一発当てられるならばという思いで僕と一緒に入学したのだった。僕には相方がいたので、さっそくに講師の前で漫才を披露することが出来た。すると講師は漫才の内容自体は物凄く面白いのに、それを表現している君たちはいまいちだな。声も小さいし..キャラクター的にもかなり無理があるんじゃないかと言われた。そう言われて自信がなくなったのか、元々お笑いのセンスを持っていなかった河野君は1カ月もしないうちにNSCを辞めて普通のサラリーマンになってしまった。僕としては解散してしまうと相方がいなくなって漫才ができなくなるという危機だ。必死で引き留めたのだが彼は「元々俺にはお笑いのセンスなんて無かったんだ。もっと良い相方を見つけて成功しろよ。」と言い残して言い残してNSCを去ってしまった。
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