銀河鉄道の夜 第1話
第1話
地球に銀河鉄道がやって来た。宇宙間の移動というと、個人で宇宙船に乗って行うのが普通であるが、中にはゆっくり星の移動の間でも旅行気分を味わいたいという人もいる。そうゆう人たちのために銀河鉄道はあるのだ。だから銀河鉄道には超お金持ちしか乗れない。銀河鉄道は半年かけて惑星の間を運航する。だから地球に来るのも半年ぶりだ。その銀河鉄道が地球に降り立つ様を一人の青年がうらやましそうな目で見ている。彼の名は三郎、幼い頃から超貧乏で、お金にはいつも苦労させられていた。だから銀河鉄道で旅行を楽しむなどということは、夢のまた夢の話だった。「ああ、うらやましいな。僕にもお金さえあれば、ああいう鉄道で旅行を楽しむことが出来るのに。」と羨望の眼差しで三郎は半年ぶりに銀河鉄道が地球に降りてくる様子を眺めていた。彼の家は農家だった。毎日農作物を耕すことに明け暮れていたが、その日は久々に街へ出た。彼は一カ月に一度だけは必ず街へ出かけて必要な物を買い物してくるのだ。その買い物に街へ出たその日がたまたま銀河鉄道が地球へ降りて来た日だった。その日彼は食料品店で缶詰をたくさん買って出た。すこし道を歩いていると、なにやら道に落ちていることに気づいた。「なんだろう?」近づいて見てみると、「財布!財布だ!財布が落ちている。彼はそれを拾い上げると、直ぐに交番へ届けなければという思いと共に、「もしこの財布を家に持ち帰ったら、随分と楽になるのに、、。」という思いがよぎった。そういう複雑な思いで財布を開けると、中には大量の札束と、定期入れのようになっていた。その定期入れの部分の中身を見てみると、確かに「銀河鉄道、半年間有効、滞在予定の惑星の間ならどこまででも行けます。」と書いてあった。
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