結婚か破局かの2択しか待っていない"付き合う"の一歩が怖くて踏み出せなかったあの頃【マチアプ⑤】
どんどん惹かれ、大好きなフジオカさんと先に進みたい。けれど進みたくない。そんな拗らせ切った考えを抱き始めた私。
前回の話はこちら。
先に進む勇気をもう持てない程 男性不信に陥っていたが、人間の皮を被った悪魔たちとフジオカさんを同等に思ってしまっているのかと気づき、それは失礼だと思った。フジオカさんには何も嫌な事はされていないし、ちょっとした違和感すら感じていない。
彼は私を想ってくれているのに、彼とは関係のない人との思い出でぶち壊すのは間違っている。
彼を信じよう 心から。そう思った。
どんな時も家の前まで
彼は決して私の家に行きたがったりしなかったし、もちろん私に触ってくることもない。
一緒に出掛けた日は、私の最寄り駅に途中下車をし私の家の前まで送ってくれ、大切なものを扱うように、いつも優しさで溢れていた。
フジオカさんと何回か会い、何度目かの見送りの時、彼は真剣な顔をして私を見ていた。
いつもにこやかだったフジオカさんが真剣な顔をしていたので、悪い癖でとっさに別れ話かと身構えたが、彼を信じて向き合った。
ゆっくりと、静かな声でお付き合いを打診された。彼らしい。
"付き合おう"が言えない人は"結婚しよう"も言えるはずがない
彼は前に前進してくれた。その想いが嬉しすぎて、なんて答えたか全く覚えていない。私たちはカップルになれた。
大切に集め始めた二人だけの思い出達
色んな所に行って、いろんな事をしたい。
そう思ったけれど、世の中はコロナ禍真っ最中。職業的にもコロナには絶対に罹れなかったフジオカさんとは、人が少なさそうなところや屋外を選んで楽しく過ごした。彼との時間はやっぱり楽しい。行動に制限が掛かっていても全然気にならなかった。会っていない時もLINEを繋げ続け、一緒に筋肉体操をしたり、映画を観たり、料理をしたり、サテライト同棲のようなことをしていた。
ある日、フジオカさんの家でフジオカさんと並んで寝ていた時、ふと投げかけられた言葉が優しすぎて私の荒んだ心に深く突き刺さり涙が溢れた。
”こんなに優しい人に出会える未来があるんだよってあの頃の私に教えてあげたい”
あの頃の私が可哀そうすぎて静かに泣いていた。フジオカさんは泣いている私に気が付いて、さらに優しい気遣いをして余計に私は泣いた。
泣きすぎて鼻が詰まり、もっと寝れなくなった私の為にフジオカさんは「鼻の詰まりを解消する方法」で調べ始めた事は、これ以上ない素敵な二人の思い出だ。
彼が引っ越すその日まで
少しずつ二人の世界線を作って仲を深めていたが、彼が〇〇県へ引っ越す期限が近づいてきた。分かってはいたけれどやっぱり寂しい。気軽に会える距離ではなくなってしまうし、慣れ親しんだこの界隈から彼がいなくなってしまう。
"彼はどうするのか、私はどうなるのか"
彼と会うたびにその思いが大きくなったが、例にもれずやっぱり私からは聞けなかった。
つづく。
次の話はこちら。