妊活記録4.体外受精(A病院移植二回目)

ホルモン補充による移植一回目が失敗に終わり、生理が始まった。
失敗とはわかっていたので、そんなにショックではなかったけど、複雑な気持ちだった。
生理が来ないと前に進まないし、なかったら心配なので来てくれてよかったが、また子宮内膜無駄になっちゃったな。

次は自然周期を私から希望し、残った最後の卵で移植二回目に進むことになる。
自然周期の場合は基礎体温計をつけろ、と指示され、基礎体温計など持っていないのでしぶしぶメルカリで使用済み700円ぐらい?のものを買った(ケチなので…)。
基礎体温計は口にくわえて計るものとは知っていて、あえてメルカリで買ったが、売るほうも売るほうだが買うほうも買うほうだな、と我ながら思った。
まあでも無事妊娠したから売りますって書いてあるから、妊娠菌(だっけ?)が移るかもしれない。

自然周期は生理後しばらくは通院がないらしく、面倒だったエストラーナテープもないので、こっちのほうが簡単だなあと思った。
自然周期は通院が増えるとも言われたが、意外とそんなこともなく、手元の記録によると、2月16日の移植のために、二回ほど通院しただけだった。

移植日は大きな仕事があった日だったが、なんとか迷惑にならないところまで自分の担当を終わらせ、病院へ急いだ。
前回と違って、尿ための具合はわかっているので、膀胱の時間調整もばっちりのはずだ。

いつもすぐに採血に呼ばれるのだが、この日に限って10分経っても20分経っても待たされ続け、これはだめだったのでは?という不安が兆してきた。
呼ばれた後の採血担当看護師さんも、採血後に奥から深刻そうな顔で戻ってきて、「あっ…待合室で待っててくださいね」という含みがあったのも気になる。

率は少ないとはいえ、卵が凍結から融解されるときに、ダメージに耐えられなくてダメになってしまう例はある。
…今回それだったかな、それとも私側の何か問題が採血で発覚したのかな…と悶々とする。

悶々と色々な可能性を浮かべているうちに、
「だめならだめでもういっそ終わらせてくれ、トイレ行きたい」と思い始め、宙ぶらりんの状態で待たされるのが辛くなってくる。
が、40分ほど待ってようやく手術室に通され、「いよいよ引導が…」と思っていたら、
診察室で手術着に着替えるように促され、
椅子に座らされ、消毒を受け(すごく不快だけど痛いわけではないし耐えられなくもない)、
済んだので裏の手術室に案内され、気づいたら私は手術台に横たわっていた。
あ、よかった、ここまでくれば移植にこぎつけられたんだ…と思った。しかしトイレ行きたい。

たぶん前に説明してくれた培養士さんが、「尿ため大丈夫ですか」の質問に「大丈夫ですけど、もうすこし遅かったら危なかったですねー」とうっかり答えてしまい、培養士さんの顔が曇った。
しまった、まだ待ち時間があるのに、ギリギリ感を出してしまった。

「じゃあ導尿を…」と言われるのを必死で「いえまだまだ大丈夫です!」と言い張り、実際そろそろだったが耐えることにした。

二回目の移植もすぐに終わった。
尿ための最中ぐいぐいエコーで押される一瞬がちょっとだけ辛かったというか危なかったし、器具を突っ込まれて固定されて尿ためしてるから股がぴくぴくするのもだいぶつらかったが、処置自体は5分もかからず、所要時間は大半が待ち時間と安静時間だったので、そんなに辛いものではなかった。

移植後に前回と同様ウトロゲスタン膣剤を渡され、先月もお世話になってシンクロフィットを頼りに毎日忘れずに入れていた。

一回目の移植から数日間、体に色々な変化があった気がしたのでスマホに体調メモを取っていたが、陰性だとわかり、あったような気がした変化は完全にただの思い込みだった。
今もスマホに残っている体調メモが悲しい。

なので2回目移植後はあまり体のことは気にせず、
「気のせい気のせい。妊娠超初期症状なんてほぼ何も感じないはず」
と言い聞かせていたら、本当に何も感じなかった。

うまくいく気がしなくて、前回も行った前夜のフライング検査をやってみたが、当然のごとく真っ白だった。
防衛反応であまり期待しないようにしており、
「ああやっぱりね」と冷静なつもりでいたが、完全に強がりだった。

あんなに採卵辛かったのに…。通院も大変だったけど頑張ったのに…。
3時間待ったことも何度もあるのに…。
保険適用といえどもこの半年でかなりお金かかったのに…。
自然妊娠なら一銭もかからないはずなのに…。

判定のために通院するのが非常に嫌だったが、素人検査でなにか間違いがあったら困る。
ゾンビのような状態でなんとか体を動かし、仕事後に病院へ。

次回採卵の可能性があるのであれば麻酔薬について相談すれば変えてもらえるのかどうか聞かなくては、
でもそのためには移植失敗の前提に触れなくてはと思い、
採血の看護師さん(年配かつよく言えばフレンドリーな)に
「昨日検査薬で試したけど真っ白だったので陰性だと思います、
(だから次回採卵だと思うのですが前回麻酔でひどい悪夢を見たので薬を変えてほしい…)」
と聞きかけたが、
「あらまだ早いわよ!検査薬だと出ない場合があるからね、大丈夫よきっと」
と言われ、せっかく覚悟を決めてダメだった意識で一色だったのに、医療従事者に言われたことでちょっとだけ可能性あるかも、なんて思ってしまった。
励ましてくれる、よく言えばフレンドリー看護師に対してなんとか軌道修正し、
麻酔でひどい悪夢を見た、もう二度と嫌なんですが他に麻酔薬の選択肢はあるのでしょうかと聞いたところ、
・悪夢を見る患者はよくいるので、そういう場合はほかの麻酔と混ぜることもできる
・採卵時の診察で医師に相談してくれないと確定はできないが
とのこと。
ああ選択肢はあるのか、じゃあはじめからそうしてくれれば、とかつい思ってしまった。

待っている間に考えた。
さっきの看護師のせいでワンチャンあるのかもなとちょっとだけ思ってしまっているが、いや私調べではこのケースではいい結果である可能性はゼロだ。
あとはHCGが微量でも出ているのか、それとも0なのか。

1時間後、呼ばれて入室する。
さっきの人とは違う看護師に結果を伝えられたが、淡々と「マイナスでしたね…(陰性という意味かな?) 先生の指示で、着床障害の検査も採卵と同時にしたほうがいいということなんですけど、次はどうしますか」
と言われて、あーやっぱりね、と思う。
これまでにたっぷり自分でショックを受けたので、ここでは事実を噛みしめるだけで済んだ。

フライング検査については医師の間でも賛否両論あるようだったが、
私はやらないで期待して、病院の人前で頽れるのはまっぴらなので、
これからも自分の精神衛生上やったほうがいいと思う。
意に沿わない結果が出たとしても、医師の処方通りに薬を服用するのだけは止めちゃいけないと思うけども。

これで凍結した卵が0になったので、次回も採卵にするか、と聞かれた。
私は一回目移植判定待ちの段階から、転院について猛然と調べ始めており、調べれば調べるほど、もっといろいろな選択肢がある、技術が高い病院に移るべきではないかと考えていた。
保険適用の移植回数は限られている。
もしも本当にそんなに病院が違うだけで結果が変わるのであれば、なるべく早いうちに自分にあった病院を探して落ち着くべきだ。

だが、いまの病院でもう少し試したい気持ちもあるし、駄目だった結果がなければ、改善も検討できないという面もある。
色々な採血の検査数値もここにすべてそろっている。
転院すれば手間も時間もかかる。今の病院が一番近い病院なので、他県のもっと大きい病院に移るとなると、最低移動だけでも+1時間はかかる。

麻酔を調節してくれるなら、採卵時に検査もやってくれるなら、もう一回ここでやったほうがいいんじゃないんのか、いやでもここで二度と採卵はやらない、ケタミンとかいうヤバイ麻酔を二度と味わいたくないと決めたからいろいろ調べてたんじゃないか、とかいろいろな考えが飛んでは消えて、私は何も言えなくなってしまった。

「あーでも、採卵だけでも…やれるならやろうか…うーん考える時間をください…」とかなんとかもごもご言ってる私に対し、
看護士は「じゃあ一応継続ってことで、先生に聞いてきますね。生理は今回自然排卵周期なら3~4日もたたずに来ると思います。プラノバールが出ると思います。出ないかもですけど」
ということで、会話は終了し看護師は奥の通路に消えて行ってしまった。

…。
待ってる間はほんの数分間だったが、おかげで混乱状態だった頭が冷えた。

いや、もうこの病院ではもう二度と採卵はしない。
臨死体験は二度とごめんだし、麻薬に名を連ねる麻酔薬なんか、さすがにダメージが大きすぎる。
やめます。

幸い薬の処方はなかったですと言われたので、
「考えたけれど、繁忙期もちょうどこれからなので、やはりしばらくお休みにします。転院も検討しているので、その可能性もあるかもしれません」
と告げると、
「それがいいわよ!大変だったと思うし…お休みして戻ってくる人もいっぱいいるからね!転院するときも紹介状のお渡しはできるから、気兼ねなくいってね」
と快く認めてもらえた。
邪推だが、お休みにするというとやけにうきうきされたので、次回の指示がないと仕事がぐっと楽になるのだろうな、と感じた。

この病院に来ることは二度とないんだ、と思いながら会計して帰り道をたどると、やけにほっとしてせいせいした気持ちになったので、
私はこの病院のことは好きになれなかったのだと思う。

初めて採血失敗されて腕の中でぐりぐり血管探されて、派手に内出血してそのあとすごい腫れて会う人会う人みんなにびっくりされたな…あのへたくそめ…
とか、
常に高圧的な派手ネイルの受付の人、怖かったな…
とか、
ケタミンもOHSSなりかけもやばかったな…
とか、
ちょっと悪い思い出ばかりが次々と浮かんでくる。
さらばだ!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?