妊活TIPS1.ケタミン麻酔で見た死後の世界

2023年12月のA病院採卵1回目、ケタラールという麻酔が入った後に見た世界の様子です。
たぶん悪夢というものなんですが、私からしたらあれは夢じゃなかったです。
ドラッグをした時に言うトリップがまさに近いです。
その時に見た様子をなるべく書き残してみます。

第3層(ケタミンが一番効いてる状態・世界の奥深く)

暗い暗い闇の中で自分は漂っているようで、
自分はどこのだれでどうしてここにいてなぜこうしてるのかなにもわからなくて
思考に切れ目がなくて自分は自分じゃなくて全体に溶け合っているもので
闇の一部で意識はないものでここにはなにもないが考えてる自分がいるようだがなにもわからない…

と考えたところから意識が始まったと思う。
闇と同化したような意識には自我がなくて、ただひたすらにゆらゆらと何かに溶け合っていて、今から思い返してみれば、物心ついて以来、個の人間として味わわなければならない独立性とか孤独感などが初めて完全に失われて、液体状のアメーバのような存在になっていたと思う。

何かと一体であるということはとても安心感があって、自分は初めからこういう物体?で、もう二度と考えるということはしないし、闇に漂っているだけの生き物?だと感じていた。

いちいち?がつくのは、その世界に物体などというものはなくて、形もなくて、ただひたすらに暗闇に漂う液状のものしかいなかったと感じるからだ。
液状に溶けていた時間は感じられないほど永く永く、永遠という歌詞でしか聞いたことがない言葉は、その世界では当たり前のものだった。

第2層(ケタミンから覚めかけ)


漂っている闇のなかで、ふと、漠然の意識で、

ああここは死後の世界かというところから意識が始まって、あれ、これを考えてるということは自分には意識があるんだととうとう気づいてしまった。まさに我思う、ゆえに我ありというやつで、そこからどんどん考えが展開されていって、死ってなんだっけ?自分ってなんだっけ?
いままで何をしていたんだっけ?
と、一気に色々な疑問がわき、そこから知覚が始まってしまい、視界の端から金色の光が次第に見えてきた。

金色というのは、日差しの美しい陽光色などの金じゃなくて、ファラオが埋葬されるときのマスクに使われているようなド派手な金色で、純粋な金属の金ではなくて、メッキが混ざっているような若干けばけばしいすごい金色のタイルが、ドラムロールのようにつながってものすごい速さで視界一覧を埋め尽くしていく。
ああこれは金色のタイルで、これは細胞なんだ。
細胞っていうのは無数のタイルみたいなものの合体で、そこには感情などの曖昧な揺らぎはなく、ただひたすらに必要だからシステムをくみ上げているだけで、一切の人間的な温かみはなく…。
これが死後の世界なのか。
ああ、死んだってことはもう何もできないんだ、
誰にももう会えないんだなあ、と無性に寂しくかなしくなり、この世界が怖くて仕方がなかった。
不思議と自分には大事な誰かがいたことは覚えており、その誰かにお別れも言えないまま、こうしてこれからはずっと離れ離れになってしまったとわかっていた。
哀しい思いをしている私の横で、不気味な音を立てながら壁がものすごい勢いで積みあがったり崩れたりしていく。
壁と同じで、私は私が分解されたり組みあがったりするのを感じた。
世界の中で、急速に人類が進化していくのを感じる。
それと同時に、せっかく進化の最先端であったはずの私が、目玉が裏返った死体のような状態で、こうして屍になっている。
脳が腐って溶けているような感覚もあり、体が重苦しくてぴくりとも動かせない。
…ん?体?体ってなんだっけ?

第1層(ケタミンから完全に覚醒)


時間と言う概念はこの世界にはないけど、永遠にも似たような長い中で、あるとき私は唐突に病院にいるのがわかってしまった。
体がものすごく気持ちが悪い。
一定のリズムで変なサインが刻まれている。√が逆になったみたいな、へんなサインだ。
ああ自分は何かの原因で死んだんだ、だからこんなに変な世界にいるんだな、と考えたのはやけにはっきり覚えている。
よくわからないけど、医療事故という言葉が自然と浮かび、事故で死んだんだあ、漠然と考えていたと思う。
ゆがむ視界に、だらしなく弛緩した自分の体と、先生の無機質な不気味な声と、バイタルサインの音と、なんだかよくわからないが聞いてるだけで頭がおかしくなりそうな「「「ぺにゃーん?」」」※妊活記録11を参照
の音が絶え間なく続いていて、気持ち悪く響く。
なんとなくそれがガラスが100枚ぐらい隔てられた先ぐらいの感じで見えた。
これなんだっけ、病院になんでいるんだっけ?あれなんか痛い思いをさせられるから麻酔を受けてたのにもう覚めてるじゃん先生私の左卵巣にものすごくぐいぐいなんか押し付けててめっちゃ痛い…

左卵巣の痛みは尋常な痛みではなく、たとえて言うならまだ出血している大きな切り傷のぱっくり割れているところにとがったものをぐりぐり入れられて痛いところをえぐられているような痛みだった。

と、痛みを知覚したあたりでとうとうはっきりと目覚めてしまった。
ああなんだか不妊治療なるもので、体から卵を採り出す手術だったような。
同時に麻酔が冷めかけているのも自己認識してしまう。
これ、まだ終わってないのに目覚めちゃったやつじゃないか!
ひどい世界に旅した上に痛みも味わうとか、麻酔までやった意味がない!
どうすんのこれ、このまま続行しちゃうの?やめてくれよもう限界の痛みだよ!

と、思ったあたりで
「意識戻りかけてます!麻酔追加!」
と言っている声が聞こえたような聞こえなかったような。夢か?
いずれにせよそこで再び突然意識がぷつりと途切れて、
次に看護師に「〇〇さん!終わりましたよー!」と呼ばれて起きるまで、二度と何かを感じることはなかった。

しばらく意識が朦朧としており、寝たふりをしていたが何事かを話しかけられたので返事をして、目が覚めたのがばれた。
というか、酔っぱらっているみたいで、考える前に弛緩した気持ち悪い口が勝手に思ったことをしゃべっている。
宇宙に行ってきましたという話をしている。
看護師さんは「ウケる」と笑ってくれたが、「色ありましたー?」と言われたので気を遣って「ありました」と言ってしまった。
厳密に言うと光はあったがそこまでカラフルでもなかった。

終了直後の自分はかなりハイになっていて、
こんなひどい思いして死後の世界に行ったの自分だけっしょ、不妊治療マジウケる、死後の世界までいかないと子どももゲットできないんか、マジでギリシャの神話☆
みたいな思考をしていた。
普段私は真面目一徹にユーモアを一たらし、がモットーなので、こんな浮かれた思考をすることはまずない。

~あとは現実に戻って妊活記録2.に続く~

ケタミンについて

え~、今まで幾度となくnoteでケタミンについて語ってきましたが、
ケタミンの特徴はまとめると以下の通りです。

  • 呼吸を抑制しない(医師が一人しかいないような場合でも命の危険が少ない)

  • 周囲の環境との結びつきを喪失させるような体験を起こし、肉体から離れ魂だけとなり浮遊する感覚、宇宙空間をさまよう、子供時代の記憶の想起などであり、その体験は強烈で現実的なため実際に自分が肉体を離れたと思い続ける傾向にある「"ケタミン"」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』より。
    "2024年9月3日最終更新" UTC
    URL: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B1%E3%82%BF%E3%83%9F%E3%83%B3

  • 悪夢を見ることがある

まんま私はケタミンが起こしうるすべてを体験したようで、フルコースを味わっていますね。
かつては臨死体験ができるということでドラッグとして使用されていた経緯があるらしく、私も納得です。
トリップしていたときは死んだとしか思えなかった。
本当かどうかわかりませんが、ドラッグの身体的有害性と依存性をクロスさせたグラフがXに最近出回っていて、まあまあケタミンがどちらも中程度ぐらいの高さだったので納得しました。
わかる。そんなに高くないけど軽度ではない。0では絶対ない。

いまとなっては不妊治療=ケタミンではないのは理解していますが、採卵終わった直後ぐらいみんなこうなのかと思って絶望しました。
そういやC病院の採卵時にケタミンについて先生と話したときに
「ああ産婦人科医は使う人多いですね~、麻酔医はプロポフォールなんですけどね~」と言っていたので、科による好み?みたいなものがあるのかもしれません。
そのうち麻酔についても書きたいと思っていますが、ケタミンについてはこんなもんで。
悶々と日記に書いていましたが、こうしてケタミンについて世界の窓に書き記すことで、ようやく忘れていい気持ちになりました。


あなたとともに頑張ります。