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ゆく川のながれは絶えずして

※2月5日の日記のつもりで書き始め、すっかり長くなりました(汗)
楽しかった会食の話を写真を添えて書くうちにだんだん深刻になってしまったので、後半は仕事の話の一貫として有料にします。書き始めから2週間。一旦アップしますが、有料部分は今後も追記しそうです。
前半は無料でお気楽に読めます♪ お楽しみください


2月5日(火)の日記~初めての女子会

数年に一度という大寒波到来で、北日本や日本海側、九州方面まで大雪のニュースが報じられている。
ここ関東は雲ひとつないピーカンなのに。

昨夜(4日)、仕事仲間3人で近所の日本料理店で女子会をした。女子と呼ぶには烏滸がましいほぼリタイヤのわたしと、ちょっと年下のふたりは揃いも揃ってフリーライター歴30年超のはず。
フリーだから、幾つになっても仕事はできる。情報を集め、人脈を辿り、企画を通し、依頼を受けて原稿を仕上げればギャラになる。
とはいえ、出版社の契約社員という安定からは皆、さようならする時期にきている。
そんな時期になってようやく一緒にご飯しましょうなんということが実現できた。
オープンした頃から通っている和食店『哲茶ん』へ。旬の魚と10割手打ちそばが絶品のお店だ。

ひとりは取材に出ていて、まだ、大阪。間に合えば来るということで、最初は芸能班のTさんと差し向かい。
お互いに想像以上に長くなった記者人生。彼女とは、班が違うこともあって一緒に仕事をする機会はほぼなかったけれど、気がつけば気心知れた間柄になっていた。
ふたりだけてジックリ話すのはほぼ初めてだった気もするが、そうとは思えないほど話が弾んだ。

お互い猫好きで、彼女の愛猫は10日ほど前に17歳で亡くなったばかり。その哀しみを吐き出したい思いもあったのだろう。彼女は饒舌だった。

お通しは、菊花、江戸川春菊、わかめのさっぱり和え。激うま

彼女の猫の話、うちの猫の話、お互いの近況から昨今、世間で喧しい中居氏騒動も話題に上った。長く芸能の仕事をしている彼女の話はやはり面白かった。
書かないけどね。

ひとつのできごとでも、いろんな見方もあれば考え方もある。わたしが書けることは、わたしが直接、観て、直接聞いたことだけだ。
別の関係者も取材して裏を取った上で、客観的にみて事実なのか、どこからが憶測なのかを明確にしてから書く、書かないを決めたい。

仕事だと、そこにジレンマが生じる。
でも、noteならそれができる。
自分の責任だけで書けるなんて最高だ。書く世界が広がった気がした。

桜海老と鱧のしんじょうのお碗


仕事をほぼ離れたわたしが今、話せることはほとんどなかった。私たち世代が語り合うことといったら、昔話か、そうでなければ病気の話や訃報が多くなる。哀しいかな、それが現実だ。

結果、先輩カメラマンや先輩記者の退職や訃報の報告を聞くことになった。

ゆく川のながれは絶えずして、、、


あの人も、この人ももう居ないのか。
編集部に、ではなく、この世にいない。
それはそうかもしれない。みなさん、わたしより10歳以上年上だったんだから。
それでもギリギリまで現役で頑張っていたのだから頭が下がる。

お造りは左から甘鯛、しめ鯖とキハタ、金目昆布締め、白子昆布締め

決して楽な仕事じゃない。週刊誌のカメラマンなら、セッティングした照明のあるスタジオでの撮影なんてことは滅多にない。ほぼ張り込み、囲みで大勢に揉まれながら最高の一枚を撮る報道カメラマンだ。

雑誌の黄金期を華々しく駆け抜けた先輩カメラマンたち。みんな仕事がほんとうに好きだったんだなぁと思う。
他社の人から記者会見の四天王などと呼ばれていた時代もあった。
みんな背が高くて、ガッシリと大柄で、派手というか華やかな印象だった。

往年の大女優たち、デヴィ夫人、瀬戸内寂聴先生などの著名人のインタビューは、イケメン記者やカメラマンが担当することが多かったように思う。
小ぎれいなスタッフに囲まれれば自ずといい気分にもなるだろうし、良い話をしてもらえる(こともある)。
記者や編集者が気に入られて連載がとれることもある。専任になれば安定的にページが取れる。それがギャラに直結する。そういう世界だった。

ごま鯖の塩焼き

つまり、フジテレビで問題になった著名芸能人の酒席に女子アナが呼ばれるのと同じ文化は出版社にもあった。
さらにいえば、ハラスメントを受ける可能性は時女性だけじゃなく、男性にだってあったのだ。それは一般企業でも同じなんじゃないだろうか。

わたしたちだって似たような経験はしている。まぁ、酔って肩に手をおかれるなんてことは日常茶飯事で気にしちゃいられなかったけれどね。お尻に来たら、バシンでしょうくらいな感覚だった。

ただ実際には、もちろんわたしの場合には、という但し書きがつくけれども、仕事を逸脱するようなハラスメントを受けたことは、無いとまでは言わないけれども少なかった。絶対に許せない経験を一度だけしたことがあるけれども、それは文筆に関わる場面ではない。
だから、どこにでもあった。今だってたぶんあるのだろう。男と女がいれば、人と人が関われば起きる事態。
ただ、その扱いが、世間の受け止め方が、この何年かで大きく変わったことだけはたしかだ。

中居氏も松本氏も、ある種のスケープゴートということもできる。著名であればあるほど、問題になったときには認知度が高く、社会への浸透力もあるのだから。
盛者必滅。方丈記の一文が思い浮かぶ。

こんな仕事、辞めなさい。悪くなるよ


芸能班のカメラマンとは、仕事をご一緒する機会は多くはなかったものの、ある特別な企画でカメラマンの補助として、ニュース班記者が駆り出されたことがあった。
体も声も大きい人が多くて、恐れ慄いていた部分があったわたしだけれど、芸能班のカメラマンと同じ現場に立ってみると、実は皆さん、とても優しかった。

あるカメラマンと張り込み取材をした時のこと。
彼の車の助手席に乗り込んで、ターゲットの家の様子をうかがいながら雑談をしていたら、突然、シッと口をつぐませられた。Sカメラマンは目的の家の方に視線を走らせ、そっとカメラを持ち上げた。
記者として声をかけるべきなのかと、腰を浮かしかけたわたしに、彼は言った。

「ここにいて。動かないで。絶対に追いかけちゃダメだからね」
「あ、はい」

広い敷地の緑豊かな庭が立派なお屋敷から、女性がひとり颯爽と出てきた。
Sカメラマンは車の窓を少しだけ開け、レンズの頭だけ出して、身体を不自然に曲げながら、こちらに向かって歩いてくる女性を狙ってシャッターを押した。
車の脇を通りすぎ、大通りまで歩いていく、その後ろ姿までしっかりカメラに収めてから、彼は小さく息を吐いた。
「僕は撮られているってわからないように撮りたいんだ。気づいちゃったら、かわいそうでしょ」
それが彼のやり方だった。

隠し撮りのような撮影方法が好きなわけはない。でも、求められる写真を撮るために、撮られる相手の心の傷を最小限にするために、考え抜いた彼なりの方法だったと思う。
写真のなかの彼女は、いきいきと自然で、とても美しかった。待ち合わせの時間を気にしながらも心が浮き立っているのがわかる。きっと楽しいお出かけだったんだろう。

張り込み取材は若手が任されることが多く、ベテランが張り込みさせられることはほとんどなかったと思うけれども、その企画のときは日を変えて3人のカメラマンと張り込み取材をした。
三人三様、みんな撮り方、待ち方が違っていた。あまり覚えていないけれど、わたしが出ていって声をかけて名刺を差し出す隙に写真を撮る人もいたと思う。カメラマン自ら出て行って声をかけながら撮った人もいたような。

何れにしても撮られる方は迷惑よねぇ。わたし自身もとても心が傷みつつ、これが仕事なんだからと震える自分に何度も言い聞かせた。

そんなバチ当たりな仕事もたくさんした。たぶん、ピンピンころりなんていうわけにはいかないだろう。

だから若い頃は取材先でよく言われたなぁ。
「あんた、こんな仕事してると(人間or性格)悪くなるよ。辞めなさい、そんな仕事」

「週刊誌っていうからどんなに怖い人が来るかと思っていたけれど。あなたみたいな人もいるのね」

武田鉄也さんに
「そこらへんのチンピラ記者とは違うんだよ」
 と、吐き捨てるように言われたこともあった。その瞬間、たぶん私の顔色が変わったんだろう。武田さんは少しオロオロされ、優しい声色になってインタビューは滞りなく進んだ。
武田さんだって悪気があったわけじゃなかったのだ。直前に別の何かできっとイヤな思いをされたのだろう。


ここでもうひとり、K記者が新幹線を品川で降りて駆けつけた。
車内で少し食べたというので、それまで食べずに待っていたスペシャルメニューを注文する。

ヤギのチーズのババロワ。
金柑の甘煮をのせたものとオリーブオイルだったかな


ヤギのチーズで作ったババロワは木村拓哉主演映画の料理監修をしたシェフが、かつて教わりにきたという店主オリジナルの逸品だ!

そして締めはやっぱり手打ちそば。
信州生まれ、信州育ちのわたしはご多聞にもれず蕎麦好きだ。とはいえ東京ではなかなか美味しいお蕎麦に巡り会えない。哲茶んのお蕎麦はそんなわたしをも満足させてくれる美味しさだ。

10割の手打ちそば

Kさんは飲まないけれど、そば好きだそうで喜んでいた。Tさんは好みのお酒を見つけてしまい「これはダメなヤツですね。気をつけないと」と言いながら、おかわりを重ねた。わたしも珍しくゆず酒ソーダだけで終わらずハイボールまで飲んでしまった。
とても楽しいお酒だった。
その日は昼寝ができなかったので少し心配だったけれど、夜10時すぎまで眠くならずに外出先で持ちこたえられたのは、楽しかったからだ。

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