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[短編小説] 未曾有の未来
「帰ったら資格の勉強か」
残業続きの勤務から、久しぶりの定時退社。
誠は高卒から町工場で働いている。閃きと直感が鋭い爽やかな青年だ。
車に乗り込み、いつもはオーディオを聴くが、今日はラジオの気分だ。
─── 少し胸騒ぎがするな
信号待ちでラジオにノイズが入りだした。誠は僅かな異変に気づいたが、車を走らせる。
18時00分、タバコとお茶を買いにコンビニへ。会計を済ませたその時、急に店内の照明が落ちた。
「停電かな」
外に出てみると、夕焼けの明るさしかない。
信号も消えている。
18時20分、親父が先に帰宅していた。ロウソクに火を灯し、母親とスマホで状況確認をしている最中だった。
「日本中停電だってよ。無事帰ってきたな。」
頭をかきながら親父はビールを飲み、母親はカセットコンロで即席ラーメンを作っている。
ラーメンをすすりながら、最新ニュースをチェックするが、原因不明で現在調査中ばかり。
職場や同僚、友人は無事だった。
「俺、もう寝るは」
21時00分、未曾有の停電に疲れ、暗い部屋のベッドに倒れこんだ。頭がぼっーとするような、麻酔のような眠気に襲われた。
─── 今、何時だ?
眠い目を擦りながら、カーテンを開ける。
外は快晴だ。日本全国の停電は相変わらず復旧していない。
外に出て日光を浴び、風や音や臭いを感じた誠は察した。
本棚から愛読書のサバイバル書、サバゲーで使用している装備一式、ロープを引っ張り出した。
「いつか訪れる、この日が」