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なぜ?X線撮影で撮り直しをする理由
こんにちは。
診療放射線技師のだーはらです。
病院でX線撮影(いまだにレントゲンと言われることもあり)を受けた際、撮影したはずなのに、『もう一回撮り直します』と言われた事はありませんか?
撮り直しの理由は様々ですが、今回は特に取り直しになることが多い理由を3つ紹介したいと思います。
1 .目的部位が撮影範囲に収まっていない
これは、胸部X線撮影(胸の写真:心臓・肺など)でよく起こります。
以前はフィルムを使っていたX線撮影も、今はデジタルとなり多くの施設ではIPやFPDと呼ばれるパネルを使用しています。
胸の写真を撮る場合、以前は14×14インチ(約35センチ)が使用されていましたが、このサイズに収まらない人も多く、現在は14×17インチや17×17インチ(約43センチ)を使う施設がほとんどです。
体が大きい人や、体が曲がっているなどの理由でパネルサイズからはみ出してしまう場合があり、その際はパネルの位置を再度調整したり、パネルを大きいものに変更するなどして撮り直しを行います。
また、大腿骨や下腿骨といった脚の骨は、パネルサイズに収まるギリギリの長さであることも多く、収まらなかった場合、位置を微調整して撮り直しをすることもあります。
このように、パネル内に目的部位が収まらなかった場合、調整を行なって撮り直しをしています。
2.関節の角度調整
最も撮り直しの理由として多いのがこの角度調整です。
X線は全身にある様々な部位を撮影しますが、医師より「○○関節○方向」という指示を受けて撮影しています。
そして、それぞれの関節において病気が見やすい撮り方の基準があります。
その基準に合うように撮影をしていくのですが、当然骨が透けて見えているわけではないので、骨の角度が基準通りに描出できないこともあります。
また、痛みによって必要な体位がとれないこともあります。
不適切な角度の画像は誤診を生む可能性があるため、可能な限り基準に合う画像が撮影できるように、角度を調整して撮り直しをする場合があります。
場合によっては複数回の撮り直しが必要となることもあります。
特に手術前後の撮影に関しては、手術計画などにも関わってくるため、より慎重に撮影をする必要があります。
また、骨に変形が生じている場合は、通常の撮り方では基準に合う画像が撮れない為、撮り直しが多くなる場合があります。
誤診を防ぐため、また見落としを防ぐために適切な角度調整をして撮り直しています。
3.画像がブレている
撮影を行なっているときに、撮影部位が動いてしまうと画像がブレてしまうため、撮り直しとなります。
通常のカメラ撮影でも、手ブレや被写体の動きでブレが生じることがあると思いますが、X線撮影でも同様のことが起こります。
自分では動いていないつもりでも、不安定な体位で動いてしまっていたり、息がしっかり止まっていない状態で撮影が行われ、ブレてしまうこともあります。
お腹の写真や背骨や腰の写真を撮る場合に、息ブレが起こることが多いです。
また、立った状態での撮影では、支えがないと無意識に動いてしまって撮り直しになることが多いです。
ブレている画像は、著しく診断能が低下するため、ほとんどの場合、撮り直しをしています。
まとめ
同じ部位の再撮影が繰り返されると、不安や不満を感じるのは当然だと思います。
診療放射線技師も、できるだけ撮り直しをする必要がないように注意しながら撮影に取り組んでいます。
撮り直しの目的は、不十分な画像による誤診や見落としを防ぎ、より良い医療を提供するためです。
X線撮影をする際にX線を照射する範囲は、目的となる部位に限局しているため、目的部位以外の被ばくはほとんどありません。
撮り直しをしたとしても、放射線による影響が体に出るほどの被ばく量になる事はありません。
診療放射線技師も、少しでも被ばく量が減るように努めていますので、撮り直しの際はご協力いただけると幸いです。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。