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俺は、絶対!渋谷第三ビルへ行きたい!2
AIが発達して、社会生活における身体の優劣は昔ほどではない。
加えて、今まで社会に出れなかった優秀な身体障害を抱えた人材が社会へ進出し、今や富裕層のおよそ7割は何らかの障害を抱える人々だ。
健常者かつ能力が並みな俺みたいな人材は、林業、建設、下水道点検など身体を使う過酷労働のような仕事しかない。
在宅ワークやリモートワークは、時短なら健常者にも働き口があるが、フルタイムとなると、身体に優劣なく、優秀な人材から埋まっていく。
今、俺を追い越していった人たちも、きっと職場では周りに指示を飛ばすような監督的な役割だろう。
街は障害者中心のインフラとなって、健常者は郊外へ追いやられた。
家や土地も、法改正後、健常者にあてがわれるのは、大抵、崖地や傾斜のキツイ土地だ。 だから、履歴書の住所の、〜が丘、〜台で、健常者の低所得者と見破られてしまう。
でも、俺は諦めたくない。
俺だって、俺にだって、俺しか出来ないような、何ていうか、俺にも価値はあるはずなんだ!
そうこうすると、また1台のバスが着た!
やった!空いてる!
バスは停車するがドアは開かない。
「このバスは障害者専用バスでございます」 そうアナウンスが流れ、バスはいってしまった。
もう11月だというのに日差しが暑い。これがもう1週間すればガクッと寒くなるんだろうな。
今日は気温27度だが、来週は雪の予報だ。
また、バスが着た。
止まって、運転席の降車ドアが開く。
何だろう。 俺はそっちへ掛けた。
運転手がパタパタと手を動かす。
あ、手話だ。
基礎教育の必修科目だけど、俺はどうしても覚えられなかった。 分かるのは、おはよう、おやすみ、ありがとう、ごめんね、だけ。
あんな流暢なパタパタ、分からない。 「あ、えっと手話分からなくて」
運転手は顔をしかめ、なぞるようにゆっくり手を動かす。
「あ、速さの問題じゃないんです。あの、分かりません」 運転手はため息を付いて、更にゆっくり手を動かす。
最後らへんの右手を激しく払う感じに、イライラが出ている。
あ、俺ってやっぱ駄目だな。
少し泣きたい気持ちになって、ボソボソと、 「あ、すいません、分からなくて」 そう言い終わるか否かのタイミングで、ビーっと音がしてドアが閉まった。
俺、バスにすら乗れないんじゃないか。。