他の二人は?(世にも奇妙な○○)
そこそこ、長く生きていると奇妙な出来事に合うことが結構あるのが人間だと思う、そして特に 自分は結構多い方だと思う。
今回は、今思い出して冷静に考えてみても、どうしても不思議な事で、未だによく思い出してし まう出来事を書く事にした。
社会人になって 3 年目の頃、最初に配属された勤務地が変更になった。
その時務めていた会社は 某電気メーカーで、事業所はいくつも所有していた。
自分がいた事業所は手狭になった為、広い場所に大きな五階建ての建物を新築して引っ越した。
そして新しい事業所にも慣れて数か月した頃のある昼休み、昼食は建物二階にある社員食堂で 普通に済ませていた。
食堂は一度に 300 人ぐらい食事ができる割と広かったが、全員一度には とても無理なので早い者順だった。
しかし自分の職場は一階で階段が近かった為、すぐに二階に上がる事が出来た。
なので早めに食事を済ませると、すぐに自分の席に戻り、残りの休憩時間は雑誌を読んで過ごす事が多かった。
その日もそうしていた。 しかし、ある先輩が部屋に戻って来たと同時に自分を見て「ん?」、「何でお前ここにいるんだ?」 と言ってきた。
自分は何の事か分からず「さっきからずっと居ましたよ」と答えると、その先輩は(何を言って いるんだ)、みたいな顔つきになった。
しかしその後は普通に一日が終わった。
その二日後に今度は別の先輩がまた、同じような事を言ってきた。
そして更につけ加えて、「お 前、今さっき食堂で食事していただろう!」、「何で俺より先にここに居るんだ!?」と言ってきた。
自分はまったく訳が分からないので「何言っているんですか、ここに居ましたよ」と言った。
近くに居た他の先輩も笑いながら「そうだよ、こいつはさっきからここに居たよ」と言ってくれ た。
何か変な空気になったが、その日も後は普通に一日が終わった。
そして次の日の昼休み、食事後いつもの様に自分の席で雑誌を読んでいると先輩が笑いながら 自分に向かって
「小林わかったぞ!」、「おまえそっくりの奴がいる!」他の先輩数人も自分の近 くまで来て笑っていた。
それを聞いた自分は「あぁ そうだったんですね」と軽く返事をした。
自分からしたら人違いさ れていただけだと思い、良かったと思った。
しかし皆は結構盛り上がっていた。
この日も後は普 通に一日が終わった。
次の週、昼休みの途中で自分を見に来る人が何人か部屋に入って来るようになった。
そして自分 の顔を見て皆笑っている様な気がした。
結構年上の先輩も、後輩男子も、女子もだ。
その頃の自分の仕事はあまり他の人とは接しなかったので仕事中に会話をする事は少なかった。
その為、誰かにその状況を確認する事は無く、そのままその週は終わった。
そして次の週の半ば頃の昼休み、食堂で食事をした後に、自分としては珍しく食堂と同じ 2 階に あるロッカー室へ私物を取りに寄った。
ドアを開けて中に入ると一番奥で一人の男がロッカー 開けていた。
その男のロッカーは向かい合わせに並んでいる多くの他のロッカーとは違って一番奥で出入口 に向かっている為、男は自分に背を向けていた。
自分のロッカーはその男がいる場所から 3 メートルぐらい手前の左側だったので普通に近づい た。
その時男がロッカーを閉めて、こちらに振り向いた。すると不思議な空気と時間が流れたよ うな状態になった。
その男の顔を見て自分が思ったのは
(どこかで見た顔……)(誰?)、(?)、(何!)
(俺がいる!)
鏡を見ている自分の様にとでも言うか、もう一人の自分が目の前にいた。
相手の男も同じように思っているかの様に、こっちを見たままだった。
二人共しばらく向かい合って、動かないで話もしない時間が数秒か数十秒つづいた。
同じ社服を着ているので、本当にそっくりな人間が二人ロッカールームに存在したのだった。
その時、他に人はいなかった。 自分は(こいつが皆が言っていた自分に似ているやつか)と気づいたが、似ていると言うより そっくり、双子みたいじゃないかと思った。
しかし不思議とそれ以上は動揺せず、自分のロッカーを開けて鞄を取り出した。
その自分が横を 向いた隙に相手の男は消えていた。
反対側のロッカーの並びの間を通った様で、しばらくしてロッカー室から出た音がした。
家に帰って親にその日の出来事を言おうと思ったがやめた。
そしてその週の金曜日に、ある女性の先輩と食事に行った。
その女性の年齢は自分より 10 歳程上だが自分が新人の時に同じ部署にいたので何かと気をかけ てくれていて、たまに食事をする事があり、特に面白い話や変わった話はしないで、割と普通の 会話をする事が多かった。
しかし今回は違う、最近自分に起きた不思議な出来事の話をすると「あぁ広瀬君ね 確かに小林 君に凄く似ているね」と言った。
話を聞くと、その広瀬と言う自分にそっくりな男は関西の事業所か ら出張で来ているそうだった。
そしてその女性の先輩はこう言った。
「見た目は確かに似ているけど、他は小林君とは全然違うわよ」、「彼は明るいし、元気があるか らね」と少し笑いながら言った。
それを聞いた自分は(そうか自分とは逆だ)と思ったのと同時に羨ましくも思った。
そうして少 し戸惑っていると、女の先輩は「広瀬君の年齢は小林君より一つ下よ」と言った。
それを聞いて安心した。
なぜなら映画やドラマであるような生き別れの双子では無いと分かっ たからだ。
親戚でもないだろう、つまり全くの他人だ、しかしそれであんなに似ているなんて、 一体どういう事だと思った。
そして世の中には自分に似ている人間が三人いると聞いた事を思い出した。
きっとその内の一 人に会ったのだと思い納得する事にした。
(しかし、実際に会ってしまうとは 何て奇妙な偶然)
と思いながら、今に至る。
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