近畿大学 司書 【情報サービス論】 試験問題と解答例 2024年4月入学
【問題】
「科学の文献特性」における「社会科学」の資料の特性12点を列挙した後、社会科学分野の資料構築と資料の廃棄(除籍を含む)はどうあるべきか、貴方自身の考え方を含め記して下さい。
【解答例】(優85点)
「諸科学の文献特性」における「社会科学」の資料の特性には12点ある。特性12点をはじめに挙げ、社会科学分野の資料構築と資料の廃棄・除籍についてまとめ、最後に考察を述べる。
1.「諸科学の文献特性」における「社会科学」の資料の特性について
諸科学とは、人文科学、社会科学、自然科学・技術科学に区分することができ、諸科学によってサービスや資料の特性が異なる。
社会科学の主題分野には、政治・法律・経済・経営・社会・民俗・教育・産業(商業・マーケティング等)があり、人間社会の諸現象を支配する法則を探求したり、現象を解明する学問を総称した学問分野である。社会科学系の図書は劣化が早くなるものが増えることが特色であり、新しい文献を収集する必要性から、雑誌記事や論文、新聞記事の利用が増える。しかし、基本図書の利用や学説展望、社会変化に合わせた法律の変遷、史的考察など、図書の利用も重要であるため、図書・雑誌・新聞のいずれも必要な文献になるため、 蔵書 ・資料構成のあり方に配慮する必要がある。
次に社会科学の資料の特性12点を挙げる。
①フィールドワーク(現地調査)を必要とすることが多い。具体的には聞き取り調査や世論調査などのアンケートや市場調査がある。
②社会現象を説明・解釈批判することを目的としている。
③社会の動き、生活と密接な関係にある学問である。
④人間と社会の理解に関する科目群である。
⑤実用的な情報が多い。
⑥過去の文献に対する先人研究や史的考察といった遡及調査が必要であること。
⑦社会観察対象の表現としての学問であること。社会の変化により、新しい学問も誕生する。
⑧社会が抱えている問題の探求と解決を目指している。環境問題に対する解決策や諸現象の研究が挙げられる。
⑨人文科学同様、図書が第一義的な成果発表になることが多い。最終的には研究成果を図書として纏めるという傾向があるが、社会変化が激しい場合には、図書にしにくいという面もある。
⑩ あらゆるものが情報源としての意味を持つ。社会現象を研究する学問のため、あらゆるものが研究材料となる。
⑪動きが早い情報が多くなる。社会変化に合わせた情報が学習・研究材料になる。社会科学の中でも差があるものの、法律・経済・経営・社会・産業関係の情報には早い動きになりやすい。
⑫10年経過すると劣化しやすい。社会科学の中でも、情報の動きが早い分野の図書や雑誌記事・論文は、10年を経過すると価値を失う傾向がある。
2.社会科学分野の資料構築と資料の廃棄・除籍について
こういった特色のある学問分野、および資料のため、レファレンス質問処理では、従来の紙形態の図書や雑誌を充実させるだけでなく、有料のオンラインデータベースや電子ジャーナルの整備も重要である。
また、時間が経過すると資料の劣化が進んでしまうため、価値の失った図書については積極的に除籍をするなど、社会変化に内容があった資料をそろえるための、資料の取捨選択が必要である。
3.考察とまとめ
社会科学の分野では、史的考察がされるため時間が経過しても必要な資料と、図書の内容が劣化し価値を失う資料が出てくる。従来の資料の収集と保存では、資料が膨大となり、新しい資料が収集しにくい状況が生まれてしまう。そのため、質の高い資料の収集とレファレンスサービスを充実させるためにも、図書館を主題別組織の課題解決型図書館にし、欧米諸国のような主題司書(サブジェクトライブラレアン)を配置することで、司書が専門主題を持ち、除籍力を育成することが理想である。
しかし、日本では図書館に関連する予算が少なかったり、主題司書を育成しにくい環境など、主題別組織の図書館と主題司書の育成は困難である。そのため、社会科学の資料およびサービスの充実には、積極的なオンラインデータベースや電子ジャーナル、電子書籍の積極的な導入や各自治体の公共図書館や社会科学に強い大学図書館との相互貸借などの相互協力によって、資料の陳腐化が起こらないようにすることを心掛けるべきである。また、過去資料のデジタルアーカイブ化することにより、 民俗など特定地域の資料も場所を問わずに共有できるほか、資料の廃棄も円滑に進むことが期待されるのではないかと考える。
【感想】
試験は2024年7月14日に受けました。この科目はテキストの通しに書き、最後の考察とまとめだけ自分の言葉だったので、オリジナリティがなくて不合格になるのではないかと不安でしたが、結果は優 85点だったので良かったです。
※注意
解答の丸写しはしないようにお願いいたします。
皆さんの参考になれば幸いです。
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