近畿大学 図書館司書 『児童サービス論』合格レポート 2024年4月入学
【設題】
①児童サービスにおける読書の意義と役割について述べ、また図書館における児童サービスがなぜ重要であるかを述べなさい。
②児童資料の種類と特性について述べ、児童サービスの実践においてそれらの資料をどのような場でどのように生かすべきかを述べなさい。
【レポート】(2,097字)
設題1
子どもの読書の意義は、言葉を学び、感性・表現力・創造力を豊かにし、人生をより深く生きていく力を身に着けることであり、公共図書館の児童サービスが子どもの読書機会を提供し、子どもの成長をサポートするなど子どもとその家族に対して重要な役割を担っている。
読書は子どもの成長過程に応じて役割が変わる。はじめは、絵や文字が実際のものを表していることを知る。次に物語の登場人物視点で、自己とは違う他者・異なる世界の存在を認識し、自我の形成を担う役割を持つ。また、物語の中での仮想体験から、普段体験できない様々な感情を抱き、人間性を豊かにさせる。さらに、場面や状況の先を読んだり他人の気持ちを理解する想像力を養い、文字から人物や情景を思い浮かべて書かれていない部分を想像で補ったり、次に書かれる展開を想像する訓練ができる。
加えて、読書は語彙力・言語能力の習得と情報収集・処理能力・発信力の向上に寄与する。語の用法や文法を文章の中で効率的に正しく覚えたり、読書によって文章全体の構成を理解して様々な文章の表現方法に触れて正しい綴り表記を覚え、作文能力が磨かれ、自身の考えや意見を相手に伝える力を育む。
公共図書館では、どんな本をどれだけ読んでも読まなくても良い自由読書の環境下で様々な本が並んでいる。そのため、興味関心のある分野だけでなく、興味をたどって別の分野の本に触れたり、子ども自身が知らない分野の本を見つけて視野・興味の幅を広げられる事が自由読書の意義であり、他にも好きな本を読んでリラックスしたり、文章の表現方法や成人してからの効率的な外国語の文法習得がある。
図書館における児童サービスは、読書の機会と習慣の醸成、情報収集能力の養成、娯楽・学びの場の提供、社会的交流の役割を担っている。その中で、図書館員による選書やレファレンスは、どんな本を読めばよいかにする答えや様々な本に触れる機会を提供でき、図書館利用によって様々な人と接する機会や利用ルールから社会規範を学べるなど、家庭や学校内の環境では得られない体験を子どもに提供できる。
設題2
児童資料は、絵本、伝承文学、児童文学、詩・ことばあそび、ノンフィクション等がある
絵本は絵と文で物語の世界を成立させ、絵で内容を理解できるもので、創作絵本や昔話、知識の絵本、詩・ことばあそび絵本等がある。言葉が読めないうちは読み聞かせによって言葉のリズムに触れて読書の基盤である感受性を築く。ストーリーを理解できるようになると、話の世界に入って想像性や創造力を育むことができる。読み聞かせの場で、子どもの年齢に合わせて絵本を選び、評価の高い絵本や絵と文が一致していて遠目からでも見やすい絵本を活用するのがよい。
伝承文学には昔話、民話、伝説、神話、英雄譚等がある。特に昔話は起承転結があり、内容の面白さや不思議さ等の娯楽性があり、幅広い年齢の子どもたちを惹きつける特徴がある。絵が無くても内容を理解できる子どもには、読み聞かせによる活用で聞き手の豊かな感性や想像力を育むことができる。子どもを読書対象とする文学作品には幼年文学と児童文学がある。幼年文学はわかりやすい筋道と起承転結による文章で内容理解と想像力を働かせて楽しめる。児童文学は、物語世界を持ち、因果関係や伏線等の記憶と判断力を必要とする関心を広げて物語を楽しめる。図書館では、本でしか味わえない面白さを体験できる作品を紹介することが求められる。
詩・ことばあそびは短い言葉や韻を踏んだ詩、わらべうた、早口言葉等があり、耳に残る響きと謎めいたイメージで子どもを惹きつける。先進国の中で日本は子どもたちが触れる機会が少ないという特徴もある。
ノンフィクションは伝記、日記、随筆等の文学や実用書、知識の本・参考図書がある。知識の本は様々な分を絵や写真で子どもにわかりやすく書かれ、参考図書は調べ学習に使われる。ノンフィクション文学は事実を基にした文学性のある読み物で、臨場感がある。辞書や辞典、図鑑等は高価であるため公共図書館の貸出での協力が求められている。
その他の資料には紙芝居、しかけ絵本、布絵本、点字絵本、逐次刊行物、視聴覚資料、LLブック、大活字本等がある。
児童サービスには、絵本や伝承文学の読み聞かせ以外にブックトーク、ストーリーテーリング、おはなし会等がある。ブックトークは特定のテーマに基づいて複数の本のあらすじや解説、著作者を順序良く紹介し、本を読むきっかけを作り、新たなジャンルに興味を持たせることが目的である。先述した各児童資料を幅広く活用することが望ましい。ストーリーテーリングは、語り手が物語を覚えて語り聞かせ、内容がわかりやすく起承転結がある昔話等の伝承文学が取り組みやすい。聞き手の反応に応じて語り口を変え、興味を引き立てる。読書へ興味を持たせるために語った本を紹介したり、貸出可能であることを伝えるとよい。おはなし会では、絵本や伝承学、詩を用いて読み聞かせやストーリーテーリング、紙芝居が実施され、子どもの年齢やテーマに合わせて児童資料を活用する。
【参考文献】
香左和子・塚原博編著、『児童サービス論 地域とつながる公共図書館の役割』、ミネルヴァ書房、2023.4.30
堀川照代、『児童サービス論 新訂版』、日本図書館協会、2020.3.16
望月道浩・平井歩実編著、『児童サービス論』、学文社、2015.3.20
植松貞夫・鈴木佳苗、『児童サービス論』、樹村房、2012.10.29
佐藤涼子、『児童サービス論』、教育史料出版会、2009.10.10
赤星隆子・新井智子、『児童図書館サービス論 新訂版』、理想社、2009.3.31
日本図書館協会児童青少年委員会・児童図書館サービス編集委員会、『児童図書館サービス1 初版第4刷』、日本図書館協会、2017.6.30
日本図書館協会児童青少年委員会・児童図書館サービス編集委員会、『児童図書館サービス2 初版第1刷』、日本図書館協会、2011.11.10
【講評】
<合格時(本レポート)の講評>
最初の設題はこれでよいです。前回指摘した内容が丁寧に述べられています。自由読書には様々な力を育成する要素があります。
二つ目の設題はこれでよいです。児童資料の種類と特性に合わせた実践について行うことが大切です。
これで合格です。今後も精進して頑張ってください。
<初回提出時の講評>
設題①の読書の意義はテキストのP.1を参考にすることと、図書館における児童サービスの重要性は、テキストの「児童サービスの理念」「児童サービスの意義」を参考にすることですが、ここでは読書の意義と児童サービスの重要性はこれでよいので、さらに自由読書の意義についても述べてください。
設題②の「児童資料の種類と特性」はテキストの4章を、「児童サービスの実践」はテキストの5章を参考にすることですが、ここでは児童サービスの実践(方法)についてもう少し具体的に詳しく述べてください。
【感想】
児童サービス論は、返却が早い&再提出になりやすいとよく言われる科目です。講評は具体的に書いていただけるので、加筆・修正しやすかったです。
講評に応援のメッセージがあるのも嬉しいポイントです。
【返却日数】
1回目:3日 4/1提出・4/4返却
2回目:1日 4/14提出・4/15返却
※注意
レポートの丸写しはしないようにお願いいたします。
皆さんの参考になれば幸いです。
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