プールカード
「お会計お願いします。プールカードで」
夏の男はテーブルにウエイトレスを呼ぶと、鞄からしわくちゃのプールカードを取り出してそう告げた。
ウエイトレスは恭しくプールカードを受け取ると、今日の日付の欄にハンコを押す。
「またのお越しを」
見送りのお辞儀をするウエイトレスの姿を遮るように、エレベーターのドアが閉まった。夏の男は、フッと息を漏らした。
「あと3回か」
一階のエレベーターホールには、セブンティーンアイスの自販機がある。アイスを買ったら、自習室に涼みに行こう。夏の男は、まだ乾ききらない髪をかき上げた。塩素の匂いが立ち込めていた。