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民放テレビドラマの年間最高視聴率史

歴代のテレビドラマの人気の変遷を見たいと思い、年間ごとの最高視聴率を調べました。
しかし、ただ「ドラマの最高視聴率」としてしまうと、NHKの朝ドラや大河が強くて、あまり時代性が見えなくなってしまいます。そこで今回は民放のドラマの最高視聴率に限らせていただきました(ビデオリサーチ資料による)

1960年代

1963年 図々しい奴(TBS)    45.1%
1964年 隠密剣士(TBS)     38.4%
1965年 愛染かつら(フジ)     38.5%
1966年 ウルトラマン(TBS)   39.8%
1967年 ウルトラマン(TBS)   42.8%
1968年 ザ・ガードマン(TBS)  39.7%
1969年 ザ・ガードマン(TBS)  37.4%

『隠密剣士』『ウルトラマン』に『ザ・ガードマン』とTBSのアクション要素の強い作品が並んでいます(ウルトラマンは特撮モノですけど)。
『ザ・ガードマン』は現在のセコムをモデルにした警備員のドラマですけど、当時の爆発的な人気の割には、差別用語の問題などあって再放送が少なく、あまり顧みられることもなく、『ウルトラマン』とは差がついていますね。製作は大映テレビ室で、映画の方では完全に斜陽だったのに、テレビで大ヒットというのが、面白いところです。

1970年代

1970年 ザ・ガードマン(TBS)  39.9%
1971年 ザ・ガードマン(TBS)  37.0%
1972年 ありがとう(TBS)    56.3%
1973年 ゆびきり(TBS)     49.8%
1974年 ありがとう(TBS)    40.7%
1975年 水戸黄門(TBS)     37.2%
1976年 太陽にほえろ(日テレ)   37.0%
1977年 赤い激流(TBS)     37.2%
1978年 水戸黄門(TBS)     41.8%
1979年 水戸黄門(TBS)     43.7%

ハードな『ザ・ガードマン』から一転、典型的なホームドラマの『ありがとう』、そして安心安定の時代劇『水戸黄門』と人気は移り変わりますが、いずれも放送局はTBSで、「ドラマのTBS」とはこういうところから来ているんでしょうかね。
『赤い激流』は山口百恵で有名な大映の『赤い』シリーズの一遍ですけど、主演は百恵ちゃんではなくて、水谷豊。それがシリーズ最高視聴率とは意外でした。しかし水谷豊は79年には『熱中時代』で視聴率40.0%を獲得しており、それを考えると必然だったのかも知れません。

1980年代

1980年 水戸黄門(TBS)      42.4%
1981年 水戸黄門(TBS)      39.0%
1982年 金八先生スペシャル(TBS) 33.0%
1983年 積木くずし(TBS)     45.3%
1984年 水戸黄門(TBS)      33.9%
1985年 水戸黄門(TBS)      31.8%
1986年 男女七人夏物語(TBS)   31.7%
1987年 男女七人秋物語(TBS)   36.6%
1988年 水戸黄門(TBS)      31.2%
1989年 水戸黄門(TBS)      34.1%

安心安定の『水戸黄門』が6回もトップに立っています。スポーツではプロ野球と大相撲が入れ替わりで首位に立っていましたし、80年代はテレビをファミリーで見る、その最後の時代だったのかもしれません。
しかし86年にトレンディードラマの元祖と云われる『男女七人夏物語』が
トップに立ち、このファミリーな流れが徐々に変わっていきます。89年も『水戸黄門』をのぞけば『教師びんびん物語2』が31.0%を獲得していて、時代の変化はすぐそこでした。

1990年代

1990年 水戸黄門(TBS)        32.1%
1991年 101回目のプロポーズ(フジ)  36.7%
1992年 ずっとあなたが好きだった(TBS)34.1%
1993年 ひとつ屋根の下で(フジ)     37.8%
1994年 家なき子(日テレ)        37.2%
1995年 家なき子2(日テレ)       31.5%
1996年 ロング・バケーション(フジ)   36.7%
1997年 渡る世間は鬼ばかり(TBS)   34.2%
1998年 眠れる森(フジ)         30.8%
1999年 古畑任三郎スペシャル(フジ)   32.3%

90年代に民放のドラマ環境は激変します。フジテレビが主導する、トレンディーというか若い世代向けのドラマが、時代の潮流となったのです。
ここまでの変遷を見て思うのですが、昭和の頃テレビドラマは、あまり若者向けのコンテンツとしては意識されず、ファミリー向けのホームドラマ、アクション、時代劇が主流だった。でも80年代の後半に、テレビドラマは「若者向け」コンテンツでもありうることが発見され、開発が進み、90年代に入って大爆発した、ということではないでしょうかね。ここを境に、ドラマの話数も1クール13本が主流となり、サイクルも速くなりましたしね。
改めてトレンディ・ドラマとは発明であり、発見であり、革新であったと思う次第です。

2000年代

2000年 ビューティフル・ライフ(TBS)  41.3%
2001年 HERO(フジ)          36.8%
2002年 北の国からスペシャル(フジ)    38.4%
2003年 GOOD LUCK!!       37.6%
2004年 白い巨塔(フジ)          32.1%
2005年 ごくせん(日テレ)         32.5%
2006年 古畑任三郎ファイナル(フジ)    29.6%
2007年 花より男子(TBS)        27.6%
2008年 ごくせん(日テレ)         26.4%
2009年 JINー仁(TBS)        25.3%

90年代からの流れを引き継ぎ、木村拓哉主演ドラマが爆発的な視聴率を獲得しています。主演者自体による視聴率効果では、キムタクはドラマ史上最高の俳優ということになるでしょう。
若者向けのドラマは相変わらずでしたが、2009年に日曜劇場の『JIN』がトップに立ち、ここからまたテレビドラマの流れが変わっていきます。

2010年代

2010年 月の恋人(フジ)            22.4%
2011年 家政婦のミタ(日テレ)         40.0%
2012年 ドクターX~外科医・大門未知子(テレ朝)24.4%
2013年 半沢直樹(TBS)           42.2%
2014年 ドクターX~外科医・大門未知子(テレ朝)27.4%
2015年 下町ロケット(TBS)         22.3%
2016年 ドクターX~外科医・大門未知子(テレ朝)24.3%
2017年 阿久悠物語(日テレ)          25.6%
2018年 99.9ー刑事専門弁護士        21.0%
2019年 ドクターX~外科医・大門未知子(テレ朝)20.3%

2010年代は『ドクターX』とTBS「日曜劇場」枠のドラマが、ほぼ独占しています。見て明らかなとおり、00年代までと違って、高年齢層を対象とした、大人のドラマが大勢を占めているのです(『99.9』は松本潤主演でしたが、日曜劇場でした)。テレビ視聴者の高齢化ということもあり、若者は録画でドラマを見る傾向が強くなったこともあり、潮流は再び変わったのです。

2020年代

2020年 半沢直樹(TBS)    32.7%
2021年 ドラゴン桜(TBS)   20.4%
2022年 DCU(TBS)     16.8%
2023年 VIVANT(TBS)  19.6%

2020年代のトップは、TBS「日曜劇場」枠で放送されたドラマが独占しています。なんと、まわりまわって、結局「ドラマはTBS」なのか、という感じですね。
しかしこれらのドラマを見ていると、確かに他局にはないTBSの伝統的なドラマ・メソッドのようなものを感じることも事実で、そのスタンダード性が、視聴者が減少する状況の中で、テレビドラマらしさを発揮する砦になっていることも事実でしょう。

もちろん昭和には山田太一や市川森一脚本による名作ドラマが数々あり、『ふぞろいの林檎たち』などは21.5%という、今なら年間トップに立ちそうな視聴率を獲得していて、そういったところも含めてのTBSの力というのは、感じるところです。
配信ドラマの勢いもあって、数字的には今後ますます苦闘が進むと思われる民放ドラマですが、再びの巻き返しを期待したいところです。





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