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ゴジラ映画の観客動員数について

はじめまして。怪獣映画と特撮モノ、スポ根モノ、歌謡曲にプロレスがマニアの昭和世代の人間です。色々と批評的なこともしていきたいのですが、とりあえずそれぞれのジャンルについてデータマニアなもので、持っているマニアックなデータからの考察をしていきたいと思います。

ゴジラ映画全観客動員数ランキング

まずはゴジラ映画(実写に限定)全35作を、国内の観客動員数という視点から考察したいと思います。最新の『ゴジラ-1.0』や『ゴジラ×コング 新たなる帝国』まで含めたランキングがなかったので、ゴジラ映画が今、
興行的にはどんな位置にあるのかを俯瞰するために、作ってみたいと思いました。それではまず、1位から10位までの大ヒットした作品を見てみましょう。

1位~10位

1位  キングコング対ゴジラ(1962)
2位  ゴジラ(1954)
3位  ゴジラの逆襲(1955)
4位  シン・ゴジラ(2016)
5位  ゴジラ-1.0(2023)
6位  三大怪獣地球最大の決戦(1964)
7位  ゴジラVSモスラ(1992)
8位  ゴジラVSデストロイア(1995)
9位  ゴジラVSメカゴジラ(1993)
10位 怪獣大戦争(1965)

これがゴジラ映画の観客動員数ベストテンです。
昭和の第1作『ゴジラ』から『怪獣大戦争』までの時期に第1次ブームが
あり、平成の『ゴジラVSモスラ』から『ゴジラVSデストロイア』の時期に
第2のピークがあり、然しながら近年の『シン・ゴジラ』『ゴジラ-1.0』は、その実績を越えていることがわかります。ざっと云うとゴジラ映画には3つのピークがあり、今はその3つ目ということになりますね。
昭和のピークは、初代ゴジラのインパクトを怪獣対決路線にうまく引き継いで、キングギドラというライバル怪獣を得て、怪獣アベンジャーズ路線を展開し、ファミリー層にアピールすることで確立しました。
平成のピークは、ゴジラのスペックをパワーアップして、これにこちらもパワーアップした対戦怪獣をぶつけることで、旧世代とドラゴンボール世代の
観客を、うまく惹きつけました。
そして近年の『シン・ゴジラ』『ゴジラ-1.0』は、政治シミュレーションモノとして、戦中戦後にわたる「ゴジラが出てくる人間ドラマ」として、ゴジラファン以外の一般層を取り込むことに成功しましたね。
さてそれでは次に11位から20位の「それなりにヒットした作品」を見てみましょう。

11位~20位

11位 GODZILLA(1998)
12位 モスラ対ゴジラ(1964)
13位 南海の大決闘(1966)
14位 ゴジラVsスペースゴジラ(1994)
15位 ゴジラ(1984)
16位 ゴジラVSキングギドラ(1991)
17位 怪獣総進撃(1968)
18位 怪獣島の決戦 ゴジラの息子(1967)
19位 ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃(2001)
20位 GODZILLA ゴジラ(2014)

1984年の復活ゴジラ、1998年のエメリッヒ版ゴジラがこの位置に
あるのが注目されます。ゴジラ単独出演作で広告宣伝も十分、本来なら
ベストテンに入っても当然の作品でありながら、内容的な不評から今一つ伸びなかった作品です。一方で2014年のレジェンダリー版ゴジラは、この位置とはいえ、10年間ゴジラ映画の制作が途絶えた中では善戦で、この後の『シン・ゴジラ』につなげた意味では、「先頭打者が足で稼いだヒット」くらいの価値はあるでしょう。また金子修介監督の『大怪獣総攻撃』には、
後の『シン・ゴジラ』『ゴジラ-1.0』に通底するシミュレーション性、人間ドラマ性があり、これもこの時期では善戦と言えるでしょう。
それでは次に21位から30位の、少しパッとしない作品を見てみましょう。

21位~30位

21位 ゴジラVSビオランテ(1989)
22位 ゴジラ2000 ミレニアム(1999)
23位 ゴジラ キングオブモンスターズ(2019)
24位 地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン(1972)
25位 ゴジラ対へドラ(1971)
26位 ゴジラ×メカゴジラ(2002)
27位 オール怪獣大進撃(1969)
28位 ゴジラ×メガギラス(2000)
29位 ゴジラ対メカゴジラ(1974)
30位 ゴジラVSコング(2021)

ビオランテがこの位置にくるのが残念ですが、内容的には1984年版ゴジラの不評を一掃し、平成の怪獣映画の雛形となる自衛隊シミュレーション要素を盛り込んだ、溌溂とした作品でした。
そして意外にも近年のハリウッド版ゴジラはこの位置にきてしまっている。欧米では大ヒットしているのに、日本では今一つという逆転現象。これは近年の日本における洋画興行の不振、怪獣対決路線が日本では飽きられていることの表れかも知れません。ただこの「ハリウッドでもゴジラは作られている」というブランド感は、『シン』や『-1.0』のヒットの背景としては欠かせないでしょう。
またこれとは逆に、いわゆるミレニアムシリーズの不振は、エメリッヒ版ゴジラの不評が影響していることは間違いないでしょう。
さて、最後に31位から35位のワースト5をご紹介しましょう。

31位~35位

31位 ゴジラ×コング 新たなる帝国(2024)
32位 ゴジラ×モスラ×メカゴジラ東京SOS(2003)
33位 ゴジラ FINAL WARS(2004)
34位 ゴジラ対メガロ(1973)
35位 メカゴジラの逆襲(1975)

言うまでもなく、シリーズ打ち切りの崖っぷちラインですね。『新たなる帝国』は現在のところこの位置です。
最下位を争ってはいますが『メガロ』は完全に幼児向けの作品ですが、『メカゴジラの逆襲』は本多猪四郎の最終監督作であり、極めて悲劇的なドラマ性の高い作品です。しかしどちらに振っても厳しい時は厳しい。ミレニアムシリーズ然りです。

総括

こうしてみると、一応シリーズ作品とはいえ、ゴジラ映画はドラえもんや名探偵コナンの興行とは異質なことがわかります。それらのアニメ作品は、基本的に観客動員数が高値で安定しているのに対し、ゴジラは作品ごと、時代ごとにジグザグというか、デコボコがあるのです。これはゴジラ映画が作品ごとに作りが大きく違うこと、ゴジラの立ち位置も毎回違い、それゆえに当たり外れの要素が大きいことが関係しているでしょう。
基本的には他の怪獣をからませないゴジラ単独主演作が興行的には強いのですが、それって毎年作るわけにはいかない(何故なら「ゴジラという怪獣が初めてこの世に現れた」という設定、あるいは「久しぶりにゴジラが現れた」という設定を必要とするからです)。となると量産するにはゴジラに対戦怪獣をからませる怪獣バトルモノにするしかないのですが、これはやっているうちに、怪獣映画ファン以外の客層が減ってジリ貧になるんですね。
昭和、平成とこの繰り返しでした。
となると山崎貴監督は次回作で、ゴジラ単独モノの連続製作という、今までにない手法に出るか、あえて対戦怪獣モノで新機軸を打ち出すかが、大変興味深くなってきます。
というところで。


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