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年間興収トップ映画の歴史~洋画編


私は映画興行成績のマニアでもあるのですが、実は2000年代以降の成績については、「あの年の年間興行収入ランキングの1位って何だっけ?」と即答できないことが多いんですよ。
これは私の頭がボケたせいなのか、と心配になってきてw
それで、日本における歴代の、洋画の年間興収トップの作品をあげてみることにしました。
はい、調べていくと、事の真相が見えてきました・・・

1950年代~映画全盛期

1950年 白雪姫
1951年 白昼の決闘
1952年 風と共に去りぬ
1953年 地上最大のショウ
1954年 ローマの休日
1955年 砂漠は生きている
1956年 ジャイアンツ
1957年 戦場にかける橋
1958年 十戒
1959年 リオ・ブラボー

まずは50年代に遡ると、最初に出てくるのがディズニーの『白雪姫』というのが、興味深いところです。『砂漠は生きている』もディズニーのドキュメンタリー映画ですから、この時代のディズニーは第一次黄金期ということですね。
映画が最大の娯楽だった時代ですが、男性観客は西部劇に、女性はヴィヴィアン・リー、オードリー・ヘプバーンに集った時代、と云えるでしょうか。後半は、テレビに対抗する大作映画が増えていますね。

1960年代~大作主義からニュー・シネマへ

1960年 ベン・ハー
1961年 荒野の七人
1962年 史上最大の作戦
1963年 史上最大の作戦(続映)
      ※新規公開トップは『アラビアのロレンス』
1964年 クレオパトラ
1965年 007/ゴールドフィンガー
1966年 007/サンダーボール作戦
1967年 007は二度死ぬ
1968年 卒業
1969年 ブリット

テレビに対抗する大型サイズの大作映画は『ベン・ハー』から『アラビアのロレンス』で頂点を極めつつ、映画産業の衰退や、アメリカ文化の様々な行き詰まりから、ニュー・シネマの時代を迎えることになります。その象徴としての『卒業』がトップに立って、劇的な転換を迎えましたね。
その転換の狭間の60年代中後半、興行では007が圧倒的に強く、これが「最初に大成功したシリーズ映画」ということになると思います。

1970年代~新世代の台頭

1970年 続・猿の惑星
1971年 ある愛の詩
1972年 ゴッドファーザー
1973年 ポセイドン・アドベンチャー
1974年 エクソシスト
1975年 タワーリング・インフェルノ
1976年 JAWS/ジョーズ
1977年 キングコング
1978年 スター・ウォーズ
1979年 スーパーマン

コッポラの『ゴッドファーザー』、フリードキンの『エクソシスト』を経て、ついに『ジョーズ』でスティーブン・スピルバーグが、『スター・ウォーズ』でジョージ・ルーカスが躍り出て、ハリウッドが新世代に変わり、新たなブームを巻き起こします。
スピルバーグやルーカスの作品は、洋画に若い観客層を呼び込んだはずで、(かくいう私も、その一人でした)、おかげで洋画と邦画の興行収入が逆転しましたね。

1980年代~スピルバーグとルーカスの独走

1980年 スター・ウォーズ/帝国の逆襲
1981年 エレファント・マン
1982年 E.T
1983年 E.T(続映)
 ※新規公開トップは『スター・ウォーズ/ジェダイの復讐』
1984年 インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説
1985年 ゴーストバスターズ
1986年 バック・トゥ・ザ・フューチャー
1987年 トップガン
1988年 ラストエンペラー
1989年 インディ・ジョーンズ/最後の聖戦

ルーカスの『スター・ウォーズ』。スピルバーグの『E.T.』.
そしてルーカスとスピルバーグが組んだ『インディ・ジョーンズ』。
さらにスピルバーグがプロデュースした『バック・トゥ・ザ・フューチャー』と、二人の関わった作品が10年中6年でトップに立っています。
彼らの成功で、ハリウッドではSFX娯楽映画の製作が主流となり、様相は大きく様変わりしていきます。

1990年代~CG革命

1990年 バック・トゥ・ザ・フューチャー2
1991年 ターミネーター2
1992年 フック
1993年 ジュラシック・パーク
1994年 クリフハンガー
1995年 ダイ・ハード3
1996年 ミッション:インポッシブル
1997年 インデペンデンス・デイ
1998年 タイタニック
1999年 アルマゲドン
      ※この年まで配給収入ランキング1位です

スピルバーグの『ジュラシック・パーク』によって、ハリウッドは
CG表現による、新時代を迎えます。
それと相前後して、ジェームズ・キャメロンも『ターミネーター2』
『タイタニック』で大ヒットを飛ばし、『インデペンデンス・デイ』
『アルマゲドン』と、SFXがVFX映画へと進化して、スピルバーグとルーカス以外にもメガヒットが生まれる状況になりましたね。

2000年代~ハリー・ポッターとシリーズ映画

2000年 M:I-2
2001年 A.I.
2002年 ハリー・ポッターと賢者の石
2003年 ハリー・ポッターと秘密の部屋
2004年 ラストサムライ
2005年 スター・ウォーズ/シスの復讐
2006年 ハリー・ポッターと炎のゴブレット
2007年 パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド
2008年 インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国
2009年 ハリー・ポッターと謎のプリンス

ハリー・ポッターシリーズが大ヒットの状況ですが、それも含めて、シリーズ作品のトップが目立つようになります(10年のうち8年がシリーズ作品がトップです)。
ハリー・ポッターが首位に立った年の2位作品を見てみると『モンスターズ・インク』『マトリックス・リローデッド』『パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト』『レッドクリフPART2』と、こちらもシリーズ作品が多数となります。
よく言えばここで、「シリーズ化によってメガヒット作を生む」という方程式が確立したとも言えますが、それによって年度ごと、時代ごとの特徴が見えにくくなってきたことも確かです。

2010年代~ディズニー帝国

2010年 アバター
2011年 ハリー・ポッターと死の秘宝2
2012年 ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル
2013年 モンスターズ・ユニバーシティ
2014年 アナと雪の女王
2015年 ジュラシック・ワールド
2016年 スター・ウォーズ/フォースの覚醒
2017年 美女と野獣
2018年 ボヘミアン・ラプソディ
2019年 アナと雪の女王2

ジェームズ・キャメロンが『アバター』で3D映画ブームで気を吐いた後は、再びシリーズ映画がトップを占める状況に。
ディズニー映画が、傘下とした『スター・ウォーズ』などを含めて、5年間でトップに立ち、映画業界の帝国としての地位を不動にした感じですね。

2020年代~そして現在

2020年 スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け
2021年 ワイルド・スピード/ジェットブレイク
2022年 トップガン/マーヴェリック
2023年 ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー

そうして2020年代を迎えますが、状況はあまり変わっていない感じですね。2023年の興行ランキングでも、『マリオ』に続くのは『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング』『アバター.:ウェイ・オブ・ウォーター』『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』と、シリーズ映画、続編映画が並んでいます。

感想・総括

ということで、私が最近の興行ランキングを覚えられなくなったのは、頭がボケたせいではなくて、あまりにもシリーズ映画が増えすぎて、その年ごとの見分けがつかなくなったせいだと、わかりましたw
(2000年以降の24年で、シリーズ化されていない作品がトップに立ったのは、5回だけです。しかもそのうち1回は、過去のアニメ版を実写化した『美女と野獣』)

アメリカ映画の流れって、1950年代の全盛期から大作化、ニュー・シネマ、そしてルーカス、スピルバーグの新世代の台頭、CGの普及までは追えるんだけど、そこから先は「ヒットした映画をどんどんシリーズ化していく」と云うだけで、あんまり新しい要素は見出せないんですよね。

興行としてはそれで大正解なんだけど、文化という意味ではどうなのでしょうかね。1972年に『ゴッドファーザー』が公開された、1978年(アメリカでは1977年)に『スター・ウォーズ』が公開された、というのは、興行であると同時に、文化史的出来事じゃないですか。
トップに並ぶ顔ぶれから、時代性を感じなくなったのです。

邦楽の世界でも、この10数年はずうっと、AKBか旧ジャニーズが売上トップだったりして、あんまり変化がないんですよ。固定客を掴む時代ということなのか。社会は多様化しているのに、各分野の競争は、昔の方が激しかったという現実があります。
もしかして資本主義ってのは、こうやって、勝者が勝ちを独占していくもの
なんですかね。しかしそれが文化的停滞を招くと、いつかは・・・
なんてことも考えてしまいます。



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