昭和女性ソロアイドルのシングル売上ランキング~聖子、明菜、百恵
女性アイドルの売上記録を色々取り上げてきましたが、このへんで「昭和デビューの女性ソロアイドルの、シングル売上ランキング」を作ってみたいと
思います。
「昭和デビューで」「ソロで」と限定したのは、そうしないとピンク・レディーや小室哲哉組(安室奈美恵を始めとする)、AKBらが上位を独占してしまうので、あまり面白くないというのがありw
山口百恵や松田聖子、中森明菜らのセールスの度合いを、じっくり見極めたいというのがありましてね。
それでは、上位からのランキングになります。
<1位~10位>
96年松田聖子「あなたに逢いたくて」110.1万枚
91年小泉今日子「あなたに会えてよかった」105.4万枚
94年中山美穂「ただ泣きたくなるの」104.8万枚
95年酒井法子「碧いうさぎ」99.4万枚
93年小泉今日子「優しい雨」95.9万枚
93年工藤静香「慟哭」93.9万枚
75年岩崎宏美「ロマンス」88.7万枚
75年太田裕美「木綿のハンカチーフ」86.7万枚
81年薬師丸ひろ子「セーラー服と機関銃」85.7万枚
83年松田聖子「ガラスの林檎」85.7万枚
昭和デビュー・・・といっても、平成期の、CDバブル時代の曲が上位に並んでしまいましたね。
とはいえ、松田聖子がワンチャンを生かして、セールストップに立ち、なおかつ昭和期の『ガラスの林檎』も10位に入れているのは、さすがですね。
小泉今日子、中山美穂、酒井法子、工藤静香は、それぞれのドラマ出演作の主題歌という、90年代ならではのスタイル。薬師丸の『セーラー服と機関銃』も、当然ながら映画の主題歌です。
そういう意味では松田聖子の『ガラスの林檎』も、カップリングのCM曲『Sweet MEmories』の人気が大きかったわけですが・・・
となると、ノンタイアップで曲の良さだけでベストテンに食い込んだ『ロマンス』と『木綿のハンカチーフ』(両作品とも筒美京平作曲)の偉大さを、改めて痛感させられますね。
わけても『木綿のハンカチーフ』は、曲のスタンダード性から言っても、このジャンルを代表する作品なのではないか・・・と、個人的には思っていますね。
<11位~20位>
83年薬師丸ひろ子「探偵物語」84.1万枚
82年岩崎宏美「聖母たちのララバイ」80.4万枚
80年松田聖子「風は秋色」79.6万枚
82年中森明菜「セカンド・ラブ」76.6万枚
81年松田聖子「チェリーブラッサム」67.6万枚
84年松田聖子「RocK‘n Rouge」67.4万枚
91年中山美穂「遠い街のどこかで・・・」67.3万枚
76年山口百恵「横須賀ストーリー」66.1万枚
85年中森明菜「ミ・アモーレ」63.1万枚
84年中森明菜「飾りじゃないのよ涙は」62.5万枚
実はこのへんのランクが一番興味深い気がしております。
やっぱり山口百恵の『横須賀ストーリー』という、アイドル史においては
最重要の作品があって、その売上を超える超えないというのは、後続のアイドルにとっては大きなハードルだったと思うんですね。
結果でいうと、松田聖子はデビュー3曲目の『風は秋色』で、早々に『横須賀ストーリー』の壁をぶち破りました。
そして中森明菜もまた、デビュー3曲目の『セカンド・ラブ』で百恵越え。
この2つは「80年代は聖子・明菜の時代である」ことを印象づける、大きな出来事だったと思いますね。
そして、『横須賀ストーリー』と同じレベルの売上で『ミ・アモーレ』と『飾りじゃないのよ涙』が並んでいるのが、とても納得というか、腑に落ちる感じがいたしますね。
<21位~30位>
84年中森明菜「北ウイング」61.4万枚
84年中森明菜「十戒(1984)」61.1万枚
72年天地真理「ひとりじゃないの」60.7万枚
88年工藤静香「恋一夜」60.7万枚
80年松田聖子「青い珊瑚礁」60.2万枚
83年原田知世「時をかける少女」58.7万枚
89年工藤静香「黄砂に抱かれて」58.6万枚
73年アグネス・チャン「小さな恋の物語」58.0万枚
75年岩崎宏美「センチメンタル」57.3万枚
83年中森明菜「1/2の神話」57.3万枚
ここも中森明菜と松田聖子が並ぶ中、最初期アイドルの天地真理と、昭和最後のアイドルの工藤静香が、同売上でランクインしているのが、とても興味深いところです。
天地真理の『ひとりじゃないの』は、ひたすら天地のアイドル性を引き出すための楽曲で、それが大ヒットしたことが、音楽業界に「アイドル」というジャンルを定着させたとも言えるでしょう。
一方工藤静香は、アイドルといっても女性の支持者が多く、カラオケで歌える曲をたくさん提供していた点、時代の違いがありますね。
<31位~40位>
81年松田聖子「夏の扉」56.8万枚
83年松田聖子「瞳はダイアモンド」56.8万枚
90年中森明菜「Dear Friend」54.8万枚
72年天地真理「ちいさな恋」54.7万枚
84年中森明菜「サザン・ウインド」54.4万枚
71年南沙織「17才」54.2万枚
88年工藤静香「MUGO・ん・色っぽい・・・」54.1万枚
78年山口百恵「いい日旅立ち」53.6万枚
74年山口百恵「冬の色」52.9万枚
74年桜田淳子「はじめての出来事」52.7万枚
ここも各年代のアイドルが入り乱れて、面白いランクになっていますね。
何よりアイドル・ヒットの原点である『17才』がここに来ています。
それまでの女性歌手の作品にはなかった同世代感、そして「私は今、生きている」という生命の躍動感は、アイドルというものの定義そのものとも、言えるのではないでしょうかね。
この並びでいえば『夏の扉』などは「フレッシュ、フレッシュ~」と、まさに『17才』を継承した歌詞を、展開していますね。
そして山口百恵のもう一方の代表曲『いい日旅立ち』も、ランクインしています。
<41位~51位>
89年工藤静香「嵐の素顔」52.4万枚
81年松田聖子「風立ちぬ」51.9万枚
72年天地真理「虹をわたって」51.7万枚
86年中森明菜「DESIRE」51.6万枚
82年松田聖子「渚のバルコニー」51.4万枚
84年薬師丸ひろ子「メイン・テーマ」51.2万枚
83年中森明菜「禁句」51.1万枚
78年山口百恵「プレイバックPart2」50.8万枚
76年山口百恵「赤い衝撃」50.4万枚
73年天地真理「恋する夏の日」50.2万枚
82年松田聖子「赤いスイートピー」50.0万枚
このあたりも、そのアイドルを代表するような名曲が並んでいますね。
何せ山口百恵の『プレイバックPart2』に中森明菜の『DESIRE』、
工藤静香の『嵐の素顔』があって、さらに松田聖子の『赤いスイートピー』と天地真理の『恋する夏の日』ですからね。
それそれの作品の中で、最もスタンダードとして愛されている曲、といっても過言ではないでしょう。
売上でいうと、50万枚を少し越えたあたり。このへんが何か、アイドル・ヒットの特異点という感じです。
<52位~60位>
73年麻丘めぐみ「わたしの彼は左きき」49.5万枚
80年高田みづえ「私はピアノ」49.3万枚
90年工藤静香「くちびるから媚薬」48.9万枚
81年松田聖子「白いパラソル」48.8万枚
76年太田裕美「赤いハイヒール」48.7万枚
77年山口百恵「イミテイション・ゴールド」48.4万枚
91年中森明菜「二人静」48.4万枚
73年天地真理「若葉のささやき」48.1万枚
73年浅田美代子「赤い風船」48.0万枚
50万枚に少しだけ及ばなかった『わたしの彼は左きき』ですが、麻丘めぐみは「可愛い振付け」のアイドルの元祖とも言えるんじゃないですかね。
浅田美代子も同じ筒美京平作品ですが、こちらは歌唱力の下手さ加減に合わせて、童謡のような曲調。しかしそれが切なくはまっていて、この2人が
アイドルの世界をさらに豊かにした感じです。
<61位~70位>
84年松田聖子「時間の国のアリス」47.7万枚
94年中山美穂「HERO」47.4万枚
83年松田聖子「天国のキッス」47.1万枚
76年山口百恵「パールカラーにゆれて」47.0万枚
77年山口百恵「夢先案内人」46.8万枚
82年松田聖子「小麦色のマーメイド」46.7万枚
76年山口百恵「愛に走って」46.5万枚
85年中森明菜「SAND BEIGE」46.1万枚
77年山口百恵「秋桜」46.0万枚
82年松田聖子「野ばらのエチュード」45.0万枚
松田聖子の『天国のキッス』は、松本隆が細野晴臣を招いて作った作品で、アイドルの持つ天真爛漫性が、突き抜けて天上まで上り詰めてしまったような・・・気持ち良くなりすぎて危ういほどの名曲でした。
山口百恵は『秋桜』が名曲ですけど、個人的には『パールカラーにゆれて』の、何とも言えない不安定感が、大好きです。
<71位~80位>
72年天地真理「ふたりの日曜日」44.7万枚
94年小泉今日子「My Sweet Home」44.7万枚
74年山口百恵「ひと夏の経験」44.6万枚
73年アグネス・チャン「草原の輝き」44.5万枚
95年森高千里「二人は恋人」44.0万枚
91年工藤静香「メタモルフォーゼ」44.0万枚
94年森高千里「気分爽快」43.8万枚
94年工藤静香「Ice Rain]43.7万枚
71年天地真理「水色の恋」43.2万枚
74年山口百恵「ちっぽけな感傷」43.2万枚
天地真理のデビュー曲『水色の恋』は、ヤマハのポプコンの曲で、フォークソング的な切ない曲でした。天地にアイドル性がありすぎて路線が変わってしまったのですが、そのままのイメージでやっていたら、太田裕美の先駆になっていたのかも知れません。
このへんで森高千里が入ってきますが(昭和デビューですので)、90年代のアイドル不毛の時代、男性ファンの飢餓感を満たしていたのは、森高千里だった気がします。
<81位~91位>
83年中森明菜「トワイライト」43.0万枚
84年松田聖子「ピンクのモーツァルト」42.4万枚
96年工藤静香「激情」42.4万枚
72年麻丘めぐみ「芽ばえ」42.0万枚
85年松田聖子「天使のウインク」41.4万枚
93年中山美穂「幸せになるために」41.4万枚
87年中森明菜「難破船」41.3万枚
94年森高千里「夏の日」40.9万枚
75年桜田淳子「十七の夏」40.4万枚
77年岩崎宏美「思秋期」40.4万枚
74年アグネス・チャン「愛の迷い子」40.2万枚
ということで、売上40万枚以上のラインで、91位となりました。
松田聖子の『ピンクのモーツァルト』は細野作品ですが、歌詞が全く意味不明ながらひたすら気持ちよく、ある意味突き抜けてしまった怪名曲ですね。
それに対して『天使のウインク』は、これで独身時代の松田聖子が終わるという、アイドルとしての総決算のわかりやすい名曲でした。
中森明菜の『難破船』も難しい名曲ですが、90位のアグネス・チャンの『愛の迷い子』も、イントロからしてまさに迷子のような雰囲気。その切なさは絶品で、忘れがたい作品でした。
・・・ということで、90位までを紹介してきました。
どこのランクにも名曲が多くて、語りだしたら止まらない感じです。
トータルで見ればやはり松田聖子という存在が大きくて、18曲がランクイン。以下、中森明菜が14曲、山口百恵が11曲、工藤静香が9曲、天地真理が7曲ランクインです。
つまり、売上40万枚以上の曲がそれだけあったということで、やはり昭和のビッグ・アイドルというと、このあたりということになりそうです。