ゴジラ+怪獣映画の作品評価ランキング
「怪獣映画を作品評価順にランキングしてみたら?」という興味が以前からありました。一般的には怪獣映画はイコール、ゴジラ映画だと思われがちだけど、実際にはゴジラシリーズ以外にも多様な作品がありますし。逆にそんな多様な作品群の中で、ゴジラシリーズはどの位置の評価にあるのかも気になりました。
ただ僕個人がランクづけをしても、客観評価にはなりませんから、ネットの映画批評サイトから、投稿者の平均評価点でランキングを作ってみようと思いました。
映画批評サイトは色々あり、「映画.COM」やヤフーなどが有名ですが、「みんなのシネマレビュー」さんの評価が一番納得感があったので、今回はそれを使用してみたいと思います(他のサイトが5点満点評価なのに対して、「みんなの~」が10点満点評価ということもあり、より評価が細かい点がよかったです)
それではまず、1位と2位を。
第1位 ゴジラ(1954) 8.1点
第2位 キング・コング(1933) 7.7点
ゴジラが1位でキングコングが2位。このランキングが好きでしたねw
他のサイトは新作の『ゴジラー1.0』がどうしても最上位にきてしまうんですよ。もちろん『-1.0』も傑作ですけど、まだ歴史的な評価は定まっていない部分もあるので、怪獣映画の定義そのものと云えるこの2作が1位2位にくると、とても納得感があります。
いってみればこの2本は別格で、これに対して後続の怪獣映画が何をやれたか・・・がランキングの見どころだと思うんですね。
というわけで、第3位からが注目なわけです。
第3位 モスラ(1961) 7.5点
ガメラ2・レギオン襲来 7.5点
『モスラ』は、『ゴジラ』に『キングコング』の要素を足して、さらに娯楽性を発展させた、日本映画黄金期の傑作です。宮崎駿が幼虫モスラにヒントを得て『風の谷のナウシカ』の王蟲を着想したという話があるけど、地球環境保護的な意味でも先駆的ですね。と言って説教くさくもない、テンポのいい勧善懲悪劇で、何といっても当時人気絶頂のピーナッツに小美人をやらせるというキャスティングが素晴らしいし、渋谷の破壊、東京タワーの破壊場面が本当に凄いです。
その『モスラ』と同点で並んだのが『レギオン』なのは、正直驚きましたね。しかも『レギオン』の高評価はこのサイトだけではなく、「映画.COM」でも4位、ヤフーでも2位に入っているのです。
平成以降のいわゆるリアル・シミュレーション系の怪獣映画は『シン・ゴジラ』で頂点を極めましたが、ルーツをたどれば平成ガメラ・シリーズになることは確かです。その第1作で、比較的硬軟のバランスのいい『ガメラ・大怪獣空中決戦』よりも、よりハードに戦争シミュレーション性、科学性を追求した『レギオン』の方が、評価が高いのですね。
第5位 大魔神(1966) 7.4点
これは・・・いや、これこそが『ゴジラ』と並ぶ怪獣映画の傑作と思っています。初代のゴジラだってあれは、現代文明に怒る魔神的な要素はあったと思うけど、それをよりストレートに発展させた作品ですから。
身長5メートルに設定された大魔神なので、特撮と本編がパッキリ分かれるのではなくて、実写と本編の合成や、実物大の大魔神パーツと俳優の共演など、中間領域が充実してるんですね。
全盛期の大映スタッフが手掛けた、大魔神の猛威に吹き飛ぶ瓦屋根の細かい描写とか、本当に息を呑みます。『-1.0』のCGによる瓦礫の描写も凄いけど、それをミニチュア実写でやる職人芸も凄いです。
第6位 シン・ゴジラ 7.2点
ここで『シン・ゴジラ』の登場です。言うまでもなく社会的インパクトは絶大な作品でしたが、ここでの評価は『レギオン』には劣っています。
それでもやはり、同じリアル・シミュレーション路線でありつつも、それをゴジラというキャラクターを使って、首都防衛戦、政府や官僚の対応を詳細に描いた今作には、平成ガメラ以上のスケール感というか、「一大事性」があったとは思うのです。
第7位 空の大怪獣ラドン(1956) 7.1点
三大怪獣・地球最大の決戦(1964) 7.1点
ゴジラ-1.0(2023) 7.1点
この3作が同点で並ぶのも、個人的には胸熱です。
『ラドン』は、『ゴジラ』になかった空中戦、スピード要素を足した作品ですけど、何といってもサスペンス的な作劇構成が素晴らしいですね。
怪獣映画ってどうしても戦争映画や自然災害映画的な語り口になるんだけど、これは炭坑内で起こった殺人事件から話を起こし、その犯人が怪虫メガヌロンであり、さらにその捕食者としてラドンがいるという三段構成で作られていて、先が読めないところが素晴らしかった(黒澤明がアイディアをサゼスチョンしたという説がありますね)。
『地球最大の決戦』は、単独主演作のあるゴジラ、モスラ、ラドンが結集して、キングギドラと戦うという、アベンジャーズの先駆的作品です。
とにかく三大(四大)怪獣と王女暗殺をからませる脚本の縦糸、横糸の張りめぐらせ方が絶妙で、星由里子、若林映子、ピーナッツの共演も華やかで、
これぞ高度成長期の高揚感そのものと云った作品ですね。
怪獣語を話すゴジラたちと、通訳する小美人の描写をどう受け止めるかなんですけど、ことこの作品に限れば、「ゴジラがついに起つ」というカタルシスは、あの怪獣語の会話によって成立していることも確かなんです。
『ゴジラー1.0』は、敷島浩一という人物を描いたドラマ作品ですね。日本のゴジラ映画では、人間側の主人公はゴジラに対するリアクションとして描かれることが多くて、ここまで完全に、人間側を軸に据えた例は珍しい。それは政治シミュレーション物だった『シン・ゴジラ』へのカウンターということもあるだろうし、ハリウッド的な志向の強い山崎貴監督らしいアプローチでもあったでしょう。
それをどう受け止めるか、気持ち的には賛否分かれるところもあるのですが、ただクライマックスでゴジラに相対する敷島=神木隆之介の表情が、本当に凛としていて、男前だったことは、強い印象に残りましたね。
第10位 キングコング対ゴジラ(1962) 6.9点
ゴジラVSビオランテ(1989) 6.9点
ガメラ・大怪獣空中決戦(1995)6.9点
キング・コング(2005) 6.9点
パシフィック・リム(2013) 6.9点
これもなかなか面白いランキングだと思ってもらいたいですw
キンゴジは、コングの着ぐるみの粗さは気になるのですが、「怪獣対決モノ」というジャンルを確立した点と、娯楽的な脚本の巧みさでは評価が高いでしょう。
『ゴジラVSビオランテ』は、脚本が詰め込みすぎではあるんだけど、84年版で失敗したゴジラ映画を復活させた快作だと思います。バイオテクノロジーという時代の要素、平成ガメラシリーズにもつながる自衛隊のリアルシミュレーション的要素を取り入れた、当時絶好調の大森一樹監督による、映画的な活気のある作品でした。
『ガメラ』は、まさにこの『ビオランテ』にあったリアルシミュレーション的要素を、全編にわたって展開して、きちんと清書したような作品ですね。私は『レギオン』よりこちらの方が好きなのですが、それは鳥類学者を演じる中山忍に、凛とした魅力を感じたからでしょうか。金子修介監督の女優陣へのこだわりが、程よい甘さとなって、ハードな作風を中和しているのが好きでした。(ちなみに、さらに個人の趣味でいえば、私は昭和ガメラの『ガメラ対バルゴン』『ガメラ対ギャオス』の方が好きで、自分のベストテンには必ず入れると思います)
ピーター・ジャクソンによる『キング・コング』のリメイクは傑作だったけど、尺がちょっと長かったですね。
というところが怪獣映画作品評価ベストテンということになります。
ゴジラ、キングコング、モスラ、ラドン、大魔神、ガメラと並んで、いい感じのランキングになっているのではないでしょうか。
11位以下のランキングも大変面白いのですが、それについては後日また改めて書くことにします。
ゴジラが怪獣映画を定義したことについて
最後に、ランキングをひととおり見た上で、1954年版『ゴジラ』について少し書きます。
この作品が作品として傑作であることは当然として。この作品によって
①怪獣には、人類の通常兵器は全く効力を持たない
②怪獣には、(光線など)通常の生物が持たない特殊能力がある
という、以降引き継がれる怪獣の定義ができたことも、大変重要だと思うのですね。
『ゴジラ』のヒントになったのはアメリカ映画の『原子怪獣現る』だと言われていますが、こちらは古代の恐竜が核実験に蘇っただけで、彼に特殊能力があるわけではないし、通常兵器にもダメージを受けるのです。キングコングしかりです。ゴジラ以前には、ゴジラのような怪獣はなかったのです。
(エメリッヒ版のゴジラが、米軍の通常ミサイル攻撃でやられてしまうのは、このアメリカ映画の系譜で考えれば、当然かもしれません)
では何故、ゴジラはゴジラだったのか。実は本多猪四郎監督が生前のインタビューで「何があっても倒せない動物なんてのは、原爆があったからこそ生まれたんでね」「ゴジラが巨大な昔の怪獣であるってだけなら、大砲一発で死ぬはずなんだよね。だけど原爆となったら、これはどうしようもないよ。
原爆の性質と強さを、ゴジラは持っているんだ」と語っているのです。
つまりゴジラは原爆のメタファーであり、原爆同様の力を持っているから、通常兵器では倒せるわけがない、という理屈なんですね。
ここの部分がまさに、ゴジラ、ひいては日本の怪獣の本質だと思うのですよ。祟り神的というか、祟られたものと同じ力を持つということ。そしてその祟りとは、ゴジラにおいては原水爆だったということです。
そうして今では、アメリカ映画版のゴジラも、米軍の通常兵器では倒せない存在になっている、この事実は、大変に興味深いことですね。