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ビジネスパーソンなら知っておくべき「ビジネスの法則」15選


多くの物事には傾向やパターンがあります。

それはビジネスでも同じです。

ビジネスの世界にはさまざまな傾向やパターンをまとめて一般化した「法則」がたくさんあります。

数学の難問も公式を使うと簡単に解けることがあるように、ビジネスに関する有用な法則を知識として蓄えておくことで、目の前の課題や問題に対して迅速で適切な判断ができる可能性が高まります。

そこで今回は、知っていると役に立つビジネスの法則をご紹介します。


チャプター1、数字の対比で表された法則


●パレート(2:8)の法則
「物事を構成する要素が全体に占める割合には偏りがあり、複数要素のうち一部で全量の大部分の割合が占められている」――
これはイタリアの経済学者パレートが語った「寡占」に関する言葉です。
例えば「この社会の富の8割は、2割の富裕層によって占められている」などというときに使われます。

パレートの法則は主に、マーケティング・営業・人材育成に応用できます。例えば「売り上げの8割は全顧客の中の2割が占めている」「売り上げの8割は全体の中の2割の商品が占めている」「全営業社員の中の2割が売り上げの8割を上げている」というもので、上位2割に力を入れるほうが効果的だとする考え方です。

●2-6-2の法則
パレートの法則から派生したと考えられている法則です。パレートの法則で選ばれた2割の商品や人材を突き詰めていくと、その上位2割の中でもさらに「上位・中位・下位」が2-6-2の割合で現れるという法則です。

例としてよく挙げられるのが働きアリの話です。
パレートの法則に従って上位2割の働きアリだけの集団をつくると、働きアリのはずなのにその中の2割は怠け始めるそうです。これを続けていくと、上位には誰もいなくなります。

会社でも平均すると、優秀な社員が2割、普通の社員が6割、成績の良くない社員が2割の割合で存在するケースが多いのではないでしょうか。
成績下位層を切り捨てるのではなく、中位層と下位層への対策を行うことで全体のボトムアップを図ったほうが良いとする考え方を示すときに、この法則がよく使われます。

●1:5の法則
この数字は既存顧客と新規顧客それぞれに要する統計的なコスト比を示しています。つまり、新規開拓のためには、既存顧客に対する5倍のコストが必要だということです。
既存顧客は今後、継続して商品購入やサービスを利用してくれるリピーターやロイヤルカスタマーになってくれる可能性があるので、既存顧客との信頼関係を構築することが費用対効果の点で大切だとする考え方です。

ただし、新規顧客の開拓なしには会社の事業が発展しないので、1:5の法則を考慮しつつ新規顧客と既存顧客のバランスをうまく取る必要があります。

●ハインリッヒ(1:29:300)の法則
仕事にミスは付きものです。
しかしミスも積み重なれば取り返しの付かない大事故にエスカレートすることがあります。
そうした労働災害を経験的に示すのが、ハインリッヒの法則です。
これは、重大な事故:軽微な事故:ヒヤリとする出来事が1:29:300の割合で発生しているというものです。

また、これらは重層的であり、1つの大事故の裏には29件の軽微な事故が起きており、29件の軽微な事故の裏に300件のヒヤリとする出来事が隠れていることを示しています。

ヒヤリとした出来事が起きてから数日は気をつけるものですが、しばらくすると忘れてしまいがちです。
それが積み重なると、軽微な事故や大事故につながります。ヒヤリとした出来事の段階で危険の芽を摘んでおくことが大切です。

●ジラード(250)の法則
「250」という数字は、アメリカのトップセールスマンだったジラードが常日頃より意識していた数字です。
どんな人でも250人くらいの人とつながっているものであり、1人の顧客を怒らせると250人が敵に回るというものです。

「腹が立った」「もう用はない」などと短絡的に考えて顧客との関係を悪い形で断つと、巡り巡って多くの人間を敵に回すこととなる、だから顧客を怒らせてはいけないという教えです。人との付き合い方において肝に銘じたい言葉です。


チャプター2、提唱者の名前がつけられた法則


●パーキンソンの法則
イギリスの歴史学者パーキンソンが唱えた法則で、内容は次の2つです。

第1法則「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」

第2法則「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」

夏休みの最終日になってようやく宿題を終えていたという人には第1法則を実感できるのではないでしょうか?つまり、人は与えられた時間やお金を目いっぱい使ってしまうということです。第2法則についても、給料日前にお金のやりくりに苦心することがあるのはその典型例です。

この法則は、タイムマネジメントに活用することができます。
そのコツは締め切りを細かく設定することです。
例えば、資料作成に1週間という期間を与えられた場合、直前になってようやく手をつけ、期限ギリギリに提出する人がいます。
そうではなく、資料作成にかかる工程を細かく分け、それぞれに締め切りを設定します。細かいタスクごとに締め切りを設定すれば、「時間をすべて満たすまで膨張」しても、全体にかかる工程は短縮され、生産性向上につながるでしょう。

●マズローの法則
この法則は、アメリカの心理学者マズローが唱えた自己実現論に基づいています。これは別名「5段階欲求説」とも呼ばれ、人間が感じる不安や葛藤の種類に応じて、下位から

生理的欲求
安全欲求
社会的欲求
承認欲求
自己実現欲求
の順に段階化して進むというものです。一度満たされた欲求は次回以降、モチベーションにはなりません。

一般的に社会的欲求の段階までは、「食欲・睡眠欲」「安全に寝られる場所が欲しい」「友人、恋人が欲しい」など己の外側に欲求を求めますが、自己実現欲求に至る頃には「自分の存在を認めてほしい」「自分の可能性を最大限発揮したい」と自分の内側に欲求を求めるようになります。

ビジネスにおいては、初めは給料や休日に関する欲求だったとしても、それが満たされていくと今度は自らのキャリアを充実させ、会社の内外で認められるようになりたいという考えに変わっていくものでしょう。
会社としてはこうした点を考慮し、「やりがい」や「動機付け」に配慮した人材育成を行うのが良いでしょう。

●ピーターの法則
「名選手、名監督にあらず」という言葉がありますが、まさにこれがピーターの法則です。
アメリカの教育学者ピーターの指摘は簡単に言うと、こういうことです。

「優秀な人は順調に出世していくが、自分の能力の限界のところでストップする。それまで『優秀』と言われていた人はその段階で『無能』に変わる。だから上司は『無能』ばかりなのだ」

確かにエンジニアとしては優秀でも、管理職には向いておらず、部下から疎んじられている人がいます。
それがピーターの法則です。
この法則を打破するためにピーターは「創造的無能」という働き方を提案しています。あえて昇進しないようにして、自分が有能さを発揮できるところにとどまり、成果を上げるというものです。
周囲が出世していくと取り残されるような不安を感じるかもしれませんが、1つの生き方として参考になります。

●ランチェスターの法則
もともとは1914年にイギリスのエンジニア、ランチェスターが発表した戦場における数理モデルのことです。100年以上経った現在では、そこから派生した「戦略」として主にマーケティングの分野で使われています。

具体的には「弱者の戦略」と「強者の戦略」の2つがあり、「弱者」は市場でのシェアが第2位以下の企業、「強者」はシェア第1位の企業です。
弱者は強者と同じ戦略を取っていても勝てません。そこで、差別化戦略によって強者の目が向かないニッチな分野で独自のブランドを確立し、シェア第1位の獲得を目指します。
一方、強者のほうは弱者がブランドを確立しようとしているところにすかさず圧倒的な戦力を投入し、差別化戦略を封じ込め、市場を支配します。これが強者の戦略です。

●メラビアンの法則
アメリカの心理学者メラビアンが提唱した法則ですが、日本では誤って伝わっています。

メラビアンはコミュニケーションに関して、ある実験を行いました。彼によるとコミュニケーションは「言語情報(Verbal)」「聴覚情報(Vocal)」「視覚情報(Visual)」で構成されています。これをそれぞれの頭文字を取って「3Vの法則」ともいいます。
これら3要素について彼は、相互に矛盾したコミュニケーション(例:怒った口調で「好き」と言う)では、どの要素が重視されるのかを実験しました。その結果、被験者はルックスやジェスチャーなどの視覚情報が55%、声のトーンなどの聴覚情報が38%、話の内容である言語情報が7%という順に重視していることがわかりました。

ここから日本では「人は見た目が9割」などとする解釈が独り歩きしましたが、この結果はあくまで矛盾したコミュニケーションの場合に限定されており、メラビアン自身も「人は見た目が93%」とする見方を否定しています。

この実験が示唆していることは、コニュニケーションの要素を統一させる重要性です。
3要素が矛盾していると、伝達すべき言語情報が正確に伝わらないおそれがあるということです。つまり、営業やプレゼンの場面で自分の意図を正確に伝えるためには、伝える内容はもちろん、見た目や話し方など非言語情報にも気を配る必要があるということです。

●マーフィーの法則
アメリカ空軍でエンジニアをしていたマーフィーが唱えた「経験則」で、「失敗する余地があるなら、失敗する」「落としたトーストがバターを塗った面を下にして着地する確率は、カーペットの値段に比例する」といったユーモラスなものです。

日本でも「普段は空車のタクシーをよく見かけるのに、いざタクシーを拾おうとすると空車が1台も来ない」「満員電車で自分の立っている前の席だけが空かない」などとオリジナルのネタが追加され、1990年代初めに流行しました。

マーフィー自身は答えを用意しています。
「トーストとカーペット」を例に挙げると、答えは「カーペットを安いものにしておく」というものです。つまり危機管理の方法論の一種で、常に最悪を想定して動き続けることで、最悪の事態が起きたときの被害確率を最小限にとどめようという考え方です。

チャプター3、心理学から導き出された法則

●ピーク・エンドの法則
近年、人の心の動きに注目した行動経済学が人気になっています。
なかでもアメリカの心理学者カーネマンは「あらゆる経験の快苦は、ほぼ完全にピーク時と終了時の快苦の度合いで決まる」という理論を提唱しました。
言い換えると、全体的に苦しくても最後に「楽」の部分を味わうことで、苦しみが小さく感じられるということです。
これがピーク・エンドの法則です。
例えば、レストランに入ったときに店員の接客態度の悪さに気分を害していても、最後に店を出る際に丁重にされると、「まあ悪くはなかったな」と感じてしまいがちなのが、その例です。

このことは営業やマーケティングの構成や戦略を考える上で役立ちます。
つまり、最後に向けて尻上がりに満足度が上がるように構成を組み立てることで、クライアントや顧客の納得感を向上させることが期待できます。

●一貫性の法則
「人は自分の言動に一貫性を持ちたがる」
――これが一貫性の法則です。
例えば、テレビでプロの格闘技の試合を見ていて、全く知らない選手同士が闘っているときに、どちらかの選手を応援したくなるときがあります。
そして、応援した選手が試合に勝つとうれしいし、負けると悔しい気持ちになります。
それは「一度決めたことを最後までやり通そうとする」という一貫性の法則が働くからです。

この法則はセールスの現場でよく使われます。
例えば、英会話の教材を販売している人が「英語に興味がありますか?」と尋ね、客が「はい」と答えると、「英語が話せたらいいですよね」「就職や転職のときも英語が話せると有利ですよね」などと相手が「はい」と答える確率の高い質問を重ねていきます。この「Yes」の積み重ねがポイントで、その後で英会話の教材の話をしても、客は一貫性の法則から「No」とは言いづらく、少なくとも話を聞いてもらえる確率が高くなります。

●ピグマリオンの法則
これは「教師期待効果」とも呼ばれる教育心理学の一法則で、「人は他者に期待されるほど意欲が引き出されて、成績が向上する」というものです。
実際の実験では、「この子たちは必ず成績が伸びる」と無作為に抽出された生徒らに関して説明を受けた教師が、その期待に応えるべく指導に取り組んだところ、本当にその生徒らの成績が伸びたという結果があります。

これはビジネスの世界では「ピグマリオン・マネジメント」と呼ばれています。
つまり、上司の強い期待感を部下に伝えると、部下はその期待に応えようと頑張るというものです。
その場合、日頃から期待に応えたがっている部下を選ぶのがポイント。
期待がプレッシャーになってつぶれてしまいそうな人は避けましょう。

●カラーバスの法則
「カラーバス」とは「色を浴びる」という意味です。
カラーバスの法則とは、「強く意識していることほど、それに関係する情報が自分のところに舞い込んでくる」というものです。例えば、「そろそろ新しいスマホに替えようかな」と考えていると、それまで気づかなかった新製品のスマホに関する情報が次々目に飛び込んでくるものです。

ビジネスにおいては、契約を取りたい新規の顧客のことを毎日強く意識していると、それまで見えていなかった顧客に関係するさまざまな情報が見えてくるようになります。

チャプター4、まとめ
今回ご紹介した法則は、いずれも先人たちの知恵や経験則をまとめたり、それを新たにビジネスシーンに応用したものです。
仕事上の決断を下す際に役立つもの、人材育成に生かせるもの、ユーモラスな「あるある」系のものなどがありますが、すべてビジネスパーソンなら知っておくべき鉄板の法則ばかり。
日々の業務に取り入れるのはもちろん、朝礼やクライアントとの交渉時の話のネタとして活用してみてはいかがでしょうか?

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