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りぼーん 第10話
60歳を半年後に迎える田中が、その先を考えて選んだ仕事を縦糸に、
田中の父との日々や、コロナ禍で生きる市井の人々を横糸にした話。
前回まで
有志特別編 水色のビートル
目次
・コロナ禍の人々①
コロナ禍の人々①
・それは、初乗務からそろそろ半年となる2019年のクリスマスイブに近い日曜日。
田中は無線で呼ばれて、千住の一軒家に向かった「今年も暖冬かな…」
一向に寒くならない雨空を見上げて、南千住から
向かった。
配車情報を見ながら、内心ホッとした。
お送り先が市ヶ谷だったからである、
「これで都心に入れるかな…」
土日祝は、客層が平日とは異なり、営業区域も若干違うエリアになる。
その日は出庫した後、無線で普段あまり行かない
エリアで数組に対応していた。
響子「ちょっと聞いてよ、エリカったら私の写真を友達に見せて、これがママよ、とか言ってるのよ」、
「信じられる…❓
兄さんも恵美子さんもそれ知っていて、
何にも言わないの。どうかしてる、あの家族」
修一「・・・、あのさぁー、お前の兄さんホントに
存在感ないな、そんなに仕事が忙しいかな」、
「俺の取引先が、お前の兄さんの会社と付き合いあるから、それとなく聞いたんだけど、言うほど売上げも前と変わらんみたいだぞ」、
「出張ばかりだとさっき言ってたけど、ホントに
出張か❓どっかに女でもいるんじゃないのか?」
響子「わからない・・・、パパとママに聞いたけど、確かにしょっちゅう出かけているみたいね。
それより恵美子さんの方が、怪しくない❓」、
「エリカのピアノの塾だって、彼女が送り迎えするから始めたのに、今じゃママが殆どしてる」、
「夕飯だってママに作らせているし、結構飲んで帰ってくるみたいよ」
修一「ふーん、男がいるかもな(笑)」
響子「ママもガツンと言えばいいのに何か遠慮してるし、兄貴はあてにならないし」、
「まぁー、人の家のことだから、これ以上はしょうがないけど…」
空いている道を順調に、車は雨の中を市ヶ谷の坂を上がっていった。
田中は少女のことを考えた…、深呼吸しながら
重い気分を替えて、繁華街に車を向けた。
・クリスマスも過ぎて、大晦日まで間もない夜、
田中は六本木のホテルから2人連れを乗せた。
一人は50代前半と思われる女装の男性、もう一人は33歳の女性。
共通の友人の招きで、中華の夕食を済ませて、武蔵小山のスナックに向かっている。
武夫(女装の男性)「まぁまぁだったわね~、総理の御用達らしいよ。ここんとこ中華続いてるんだけど、アケミの希望だからしょうがないわね」
カオル「私、お腹いっぱい。もう、何にも入らないよ」、
「ところでアケミさ、今の旦那と1年後には離婚するんだって、聞いてた❓」、
「何でも次の男が見つかったらしいの、
それに旦那が段々渋くなってきて、あんまり使えなくなってきたらしいよ」
武夫「でも月に100万以上は、確実に使っているけどね、それだけじゃないんじゃない、
離婚の原因は」、
「やっぱりさ、歳の差20幾つも離れてんでしょ。
50女の〇〇じゃ、若い男を繋ぎ留められないんじゃないの?」
カオル「私も33だけど、30の女と50の女の〇〇は違うのかな…」、
「結局は男の△△のデカさに、関係してるんじゃないの…❓」
武夫「今日はボトル空けたら帰るよ、明日もあるから」
カオル「エェ~たったの1本!~。
私おごるから2本にしようよ、ネッ❗️
2本飲んだから帰るから」
武夫「しょうがないわね、このバカ女。
運転手さん、この辺で結構です」
駅に近いスナックの前に車を停めると、2人は中に消えていった。
田中は疲れてしまった、離れたコインパーキングに車を停めて目を閉じた・・・。
コロナの足音が段々近くなってきた・・・。
次回予告:コロナ禍の人々②