野村 蔵人
2022年8月公開のりぼーんをまとめました、よろしくお願いします(笑)。
2022年8月公開のりぼーんをまとめてみました、よろしくお願いします(笑)。
60歳を半年後に迎える田中が、その先を考えて選んだ仕事を縦糸に、 田中の父との日々や、コロナ禍で生きる市井の人々を横糸にした話。 前回まで ・文雄 逝く② 「本日はご多用のところ、父、文雄の葬儀にご参列いただきまして、誠にありがとうございます。 親族を代表しまして、と、申し上げても本日は殆ど親族の皆さまばかりですので(笑)…、 ご挨拶は不要かと思いましたが、一応決まり事ですので(笑)」 「父は昭和4年に男5人、女2人の7人兄妹の末っ子で生まれました。 14歳の時に
60歳を半年後に迎える田中が、その先を考えて選んだ仕事を縦糸に、 田中の父との日々や、コロナ禍で生きる市井の人々を横糸にした話。 前回まで ・文雄 逝く① 目次 ・文雄 逝く② 2021年9月26日(日)午前7時30分 田中の携帯が鳴った・・・、目覚ましタイマーの5分ほど前に、2時間の仮眠からは覚めていた。 電話を受ける前に、「もたなかったんだな」 と思った。 気管を切開しての挿管は止めた、ただ息をしているだけになるから・・・。 仮眠の時に見ていた夢を、はっき
60歳を半年後に迎える田中が、その先を考えて選んだ仕事を縦糸に、 田中の父との日々や、コロナ禍で生きる市井の人々を横糸にした話。 前回まで ・特別養護老人ホーム ・東京オリンピック2020 目次 ・文雄 逝く① その朝、田中はスマホの着信で起こされた、いつもの起床より1時間ほど早い時間だった。 声の主は文雄のケアマネの庄司からで、少し緊張した雰囲気を感じた田中は、ベッドの上で座り直して、庄司の声を待った・・・。 同時に、田中は今回は乗り越えられないかもしれないと、
60歳を半年後に迎える田中が、その先を考えて選んだ仕事を縦糸に、 田中の父との日々や、コロナ禍で生きる市井の人々を横糸にした話。 前回まで ・松ちゃん ・有志とのランチ⑤ 目次 ・特別養護老人ホーム ・東京オリンピック2020 ・特別養護老人ホーム 2020年の9月に文雄は、特別養護老人ホームに入所した(第19話)。 コロナの感染状況は小康状態であったが、各老人ホームはコロナ弱者である老人の対応に、必死の試行錯誤を重ねていた。 極端な例では、面会・差し入れ等の一切
60歳を半年後に迎える田中が、その先を考えて選んだ仕事を縦糸に、 田中の父との日々や、コロナ禍で生きる市井の人々を横糸にした話。 前回まで ・コロナ禍の人々⑧ 目次 ・松っちゃん ・有志とのランチ⑤ ・松っちゃん 5月下旬の朝、田中は事務所で松本と久しぶりに会った。互いに納金の計算をしながら、松本は前日の出来事を話してくれた。 松本「夕方、渋谷のホテルに無線で呼ばれたんですよ。お送り先は分からなかったのですが、行ってみたらなんと、藤沢までだったんですよ(笑)」 田
60歳を半年後に迎える田中が、その先を考えて選んだ仕事を縦糸に、 田中の父との日々や、コロナ禍で生きる市井の人々を横糸にした話。 前回まで ・有志とのランチ④ 目次 ・コロナ禍の人々⑧ ・コロナ禍の人々⑧ ・4月中旬の午後9時頃、田中は銀座で男性2名をお乗せした。その雰囲気は、会食後に自宅にお送りするといった、感じであった。 中沢「今日はお疲れさまでした、参加された皆様が良かったと言っておりました」 池山「いえ、こちらこそありがとうございました」 中沢「ところで
60歳を半年後に迎える田中が、その先を考えて選んだ仕事を縦糸に、 田中の父との日々や、コロナ禍で生きる市井の人々を横糸にした話。 前回まで ・皓太郎の結婚 目次 ・有志とのランチ④ ・コロナ禍の人々⑧(⇒申し訳ありません、次回に繰越しです) ・有志とのランチ④ 3月21日、最後まで2度目の緊急事態宣言が実施されていた首都圏の1都3県が、ようやく全面解除となった。 同下旬、田中は久しぶりに日曜日の乗務であったので、少し早めに出社した。 着替えを済ませ事務所に行くと、
60歳を半年後に迎える田中が、その先を考えて選んだ仕事を縦糸に、 田中の父との日々や、コロナ禍で生きる市井の人々を横糸にした話。 前回まで ・父の入所 目次 ・皓太郎の結婚 ・皓太郎の結婚 田中は、文雄の入所から1ヵ月後に実家を明け渡す ため、言うところの断捨離を始めた。 残ったものは有無を言わさず、荻窪の家に引き取らねばならない。 処分しずらい母の遺品や家財を目の前に、ため息をつきながら、毎晩処分の手を動かした。 初めて見る両親の子供の頃の写真、父の親戚への
60歳を半年後に迎える田中が、その先を考えて選んだ仕事を縦糸に、 田中の父との日々や、コロナ禍で生きる市井の人々を横糸にした話。 前回まで ・2020年の夏 目次 ・父の入所 ・父の入所 田中は申し込みから、予想外の早い入所許可に驚きと戸惑いを感じた。 所謂、世間で言うところの数年待ちを、 何となく想定していたから・・・。 しかし、このタイミングを逃すべきではないと考えて、9月下旬に入所する手続きを、田中は進めた。 2020年5月1日からのコロナ休業期間中に、田
60歳を半年後に迎える田中が、その先を考えて選んだ仕事を縦糸に、 田中の父との日々や、コロナ禍で生きる市井の人々を横糸にした話。 前回まで ・コロナ禍の人々⑦ ・有志とのランチ③ 目次 ・2020年の夏 2020年の夏 6月中旬、都道府県を跨ぐ移動が解除された。 飲食店・ライブハウスなどへの休業要請も、 解除された。 が、下旬には新規感染者が1日当り100人を超え、 7月上旬には夜の街から人が消えた・・・ 7月下旬、田中は18時過ぎのJL149便で青森に 向かった
60歳を半年後に迎える田中が、その先を考えて選んだ仕事を縦糸に、 田中の父との日々や、コロナ禍で生きる市井の人々を横糸にした話。 前回まで Sさん 目次 ・コロナ禍の人々⑦ ・有志とのランチ③ コロナ禍の人々⑦ 6月中旬、とうとう我慢できずに雨が本降りになってきた夕方、六本木の交差点近くから外国人の男性をお乗せした。 日本語は何とか通じ、買い物帰りの様子であった。田中は少し英会話のトレーニングのつもりで、出身や仕事、オリンピックやコロナについて話をした。 田中「だ
60歳を半年後に迎える田中が、その先を考えて選んだ仕事を縦糸に、 田中の父との日々や、コロナ禍で生きる市井の人々を横糸にした話。 前回まで コロナ禍の人々⑥ 目次 Sさん Sさん 2020年5月22日(金)18時、田中は無線で呼ばれ赤坂に向かっていた。 到着すると予約名のオオシロキョウコ様が、「進行方向が逆ですので向きを変えて下さい」と言われ、乗り込んだのは男性であった。 お送り先を伺うと品川のMホテルで、ご指定のルートがあるかと伺うと、少しぶっきら棒に答えが返って
60歳を半年後に迎える田中が、その先を考えて選んだ仕事を縦糸に、 田中の父との日々や、コロナ禍で生きる市井の人々を横糸にした話。 前回まで コロナ禍の人々⑤ 目次 ・コロナ禍の人々⑥ コロナ禍の人々⑥ ・2020年4月下旬の朝、田中はそろそろ帰庫時間だなと思いながら、羽田から都心に向かっていた。 新橋の外れで女性の手が上がったのを見た。 その女性は、西新宿に向かうよう言い、シートベルトを締めるや否や、自分の置かれた状況を語り始めた。その朝は、1週間に2日だけ出社する
60歳を半年後に迎える田中が、その先を考えて選んだ仕事を縦糸に、 田中の父との日々や、コロナ禍で生きる市井の人々を横糸にした話。 前回まで コロナ禍の人々④ 目次 ・コロナ禍の人々⑤ コロナ禍の人々⑤ ・4月のある晩、田中は善福寺川に面した閑静な住宅街に、無線で呼ばれた。一人の男性から見送られて、安田は車に乗り込んだ。 安田「河田町まで、明治女子医大知ってますか?」 田中「はい、存じ上げております。逆向きですので、車の方向を替えます」 安田「いや、気にしないでい
60歳を半年後に迎える田中が、その先を考えて選んだ仕事を縦糸に、 田中の父との日々や、コロナ禍で生きる市井の人々を横糸にした話。 前回まで コロナ禍の人々③ 目次 ・コロナ禍の人々④ コロナ禍の人々④ ・2020年3月下旬の土曜の早朝、田中は世田谷から八王子のゴルフ場へ、男性2名をお送りした。 坂本(部下)「佐藤なんですけどね、やはり離婚するそうです。流石にカミさんの浮気は、我慢できなかったらしいです」 平山(上司)「そうか…、彼は確か未だ住宅ローンが残っていると
60歳を半年後に迎える田中が、その先を考えて選んだ仕事を縦糸に、 田中の父との日々や、コロナ禍で生きる市井の人々を横糸にした話。 前回まで コロナ禍の人々② 目次 ・コロナ禍の人々③ コロナ禍の人々③ 政府は2020年2月下旬から大規模イベントの中止、延期または規模の縮小(2週間)、全国の小中高校の臨時休校を要請。 WHOが「新型コロナウィルスはパンデミックと言える」、と述べるに至る。 ・3月中旬の日曜の夜、田中は元麻布から目黒まで40歳代のサラリーマン風の男性を