真田ナオキが作詞作曲を始める時、日本の音楽界はひっくり返るかもしれない。
日本の音楽シーンでは定期的に「演歌界のニュースターがポップスチャートに殴り込んでくる」という現象が起こる。それは、20世紀末に登場した氷川きよしであったり、その後のジェロだったり、あと「ニュー」ではなかったから忘れそうだったけど大泉逸郎だったり。
近年の演歌界において特に私が注目しているのが真田ナオキである。
真田ナオキは1989年生まれの34歳。演歌界で言えば超若手である。
演歌史において過去に類を見ないほどの清潔感、端正な顔立ち、そしてその容姿からは想像も及ばないパワフルかつハスキーな歌声で、私の母親(!)も含めた世のおば様方(以下ポリコレ的な配慮で「大人のお姉様方」)を熱狂の渦に巻き込んでいる。
大人のお姉様方のみならず、おそらく若い女性達も、彼の存在を知ればその渦に巻き込まれてしまうほどのルックスと個性の持ち主である。
「若い頃から焼酎でうがいをし続けてわざと喉を潰して今の歌声を獲得した」というロックミュージシャンみたいな壮絶エピソードは、彼の演歌に対する情熱とスターとしての素養が窺える。
惚れた女の弱音酒
酔えねぇよ!
真田ナオキのポテンシャルを裏打ちしているのは、「吉幾三の弟子」という有無を言わさぬ経歴である。
吉幾三の凄さは、日本の演歌史でも数少ない「作詞作曲をする演歌歌手」であることである。
要するに吉は一流のパフォーマーであると同時に一流のクリエイターでもある。
その吉の寵愛を受ける真田ナオキはまさに「演歌界の未来」である。
吉が孫のように真田を力強く、そして優しく諭していく様子を見ていると、吉は本当に真田に演歌界の未来を見ているであろうことが窺える。相変わらずかっこええオッサンだぜ吉幾三。
現在の真田はあくまで純粋なパフォーマーとしての魅力だけで突っ走っているが、真田のツアーにバックバンドとして帯同しているのはASA-CHANG率いるビッグバンドであり、とあるインタビューで真田はダイアナ・ロスを聴いているとも語っていた。
それらの外的な影響から音楽的素地を、さらに師匠である吉幾三からクリエイターとしてのテクニックを吸収し、真田自身が作詞作曲を始める時、真田は次のフェーズに行くと私は考えている。
そうなったら、真田は演歌界を超越するポップスターとなり、その辺の女子高生が真田ナオキの曲を口ずさむような、日本の音楽界がひっくり返る可能性すらあると思っているし、それを期待している。
北島三郎の「まつり」が聴けなくなった大晦日に猛烈な寂しさを感じている身としては、紅白歌合戦の大トリで、カメラに向かって見栄を切る真田ナオキを待望せずにはいられないのである。