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世界でも類を見ない「ポストロックとラップのミクスチャー」バンド、54-71(ごじゅうよんのななじゅういち)について。

ドジャースタジアムではアイス・キューブが、ヤンキースタジアムではファット・ジョーが試合前にラップをしながら登場。
ロバーツ監督がノリノリで寄り添っていたアイス・キューブとは対照的に、重たいティンバーランドでまっさらなマウンドを歩き回ってヤンキースファン側からも批判されまくったファット・ジョー。今回のベースボール東西抗争はこの時点で勝負ありだったかも。

ムーキー・ベッツって誰かに似てるなーって思ってたら、千鳥の大悟でした。ドジャース優勝万歳。

助さんです。どうも。


さて本題。

音数を削ぎ落としたソリッドでタイトな演奏。
近所のコンビニに行くようなジャージ上下の男からカタカナ英語で繰り出されるラップ。
一度見たら忘れられないライブパフォーマンス。

バンド名も含めて、只者ではない雰囲気を醸し出す謎の集団、54-71。


54-71は、慶應義塾大学に在籍していたボーカルのBingoとベースのLeaderを軸に結成。
バンドメンバーや担当楽器の目まぐるしい入れ替わりを経て、ギターのSniper、ドラムのBoboが加入したのち、2000年から『54-71』『Untitled』と立て続けにアルバムを発表。2002年にアルバム『enClorox』でメジャーデビューを果たす。

※54-71の初期の楽曲はSpotifyでは配信されていないので今回はApple Musicからシェアします。

54-71 (2000)


shellacのスローコアのような生音トラックにカオティックなラップを乗せた音楽スタイルは、レッチリやRATMらとは全く違うベクトルのミクスチャーロックであり、さらに要所に純邦楽のような旋律が散りばめられいて、独自性が強過ぎてジャンル分類が困難で、ロックの棚?ハードコアの棚?ヒップホップの棚?いやいやアヴァンギャルドの棚?とレコード屋の店員さんを迷わせるバンドだった。

97年デビュー組、ハイラインレコーズ勢、メロコアスカコア勢らの爽やかで疾走感のあるバンドが、ワーキャー人気も相まって大活躍していた2000年代初頭の日本のオルタナシーンにおいて、54-71はライブパフォーマンス時の動きやすさだけを重視したような着飾り感ゼロの格好でステージに上がるタイプの男汁全開のバンドだった上に、それに輪をかけた異質過ぎる音楽性で若干キワモノ扱いされていた印象だが、向井秀徳を含めた感度の高いミュージシャンたち側からの支持は厚かった。
メジャー1、2作目でエンジニアを担当したshellacのボブ・ウェストンをはじめ、DEERHOOFやBATTLESとも旧知の仲であり、ヒップホップ勢では来日公演をきっかけに親交のあったTHE ROOTSやアンチコンのWHY?、コラボアルバムを発表したKOOL KEITHなど、54-71を取り巻いた豪華アーティストの面々を見ても、そのオリジナリティが世界レベルだったことがよくわかる。

54-71は2004年にギターのSniperが脱退しベストアルバムを発売後、活動が凪に入る。新たなギタリストが加入して2008年に『I'm not fine,thank you.And you?』を発表した後、2009年に惜しまれつつ活動を休止した。

I'm not fine,thank you.And you?(2008)


活動休止後もドラマーのBoboはくるりやMIYAVI、フジファブリックらのサポートドラマーとして引っ張りだこで、BingoとLeaderはその後VICE Media(2023年に経営破綻)の日本支社となるVICE JAPANの創設に関わるなどバンド時代同様にオルタナティブな分野で活躍している。

日本語ロック史を振り返った時、オルタナティブロックが最も芳醇だったのが2000年代だったとすれば、その極点、大トリこそが54-71だった。

54-71の初期〜中期のアルバムは配信サービスが少なくて、しっかりと聴くにはCD盤を購入するしか現状手はないですか、その辺のアングラなレアリティ感も今のご時世ではなんだか魅力だったり。

少しでも興味が湧いた方は是非ご一聴を。買った値段以上の衝撃は保証します。


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